まなづるとダァリヤ 2/4 宮沢賢治

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問題文
(やまやまにぱらふぃんのくもがしろくよどみ、よがあけました。)
山やまにパラフィンの雲が白くよどみ、夜があけました。
(きいろなだぁりやはびっくりして、さけびました。)
黄色なダァリヤはびっくりして、さけびました。
(「まあ、あなたのうつくしくなったこと。)
「まあ、あなたのうつくしくなったこと。
(あなたのまわりは、ももいろのごこうよ。」)
あなたのまわりは、もも色の後光よ。」
(「ほんとうよ。あなたのまわりは、にじからあかいひかりだけあつめてきたようよ。」)
「ほんとうよ。あなたのまわりは、虹から赤い光りだけあつめてきたようよ。」
(「あら、そう。だってやっぱりつまらないわ。)
「あら、そう。だってやっぱりつまらないわ。
(あたし、あたしのひかりでそらをあかくしようとおもっているのよ。)
あたし、あたしの光りで空を赤くしようとおもっているのよ。
(おひさまが、いつもよりきんぷんをいくらかよけいに、まいていらっしゃるのよ。」)
お日さまが、いつもより金粉をいくらかよけいに、まいていらっしゃるのよ。」
(きいろなはなは、どちらもだまって、くちをつぐみました。)
黄色な花は、どちらもだまって、口をつぐみました。
(そのきんいろのまひるについで、)
その黄金色(きんいろ)のまひるについで、
(らんしょうせきのさわやかなよるがまいりました。)
藍晶石のさわやかな夜がまいりました。
(いちめんのきらぼしのしたを、もじゃもじゃのまなづるが、)
いちめんのきら星の下を、もじゃもじゃのまなづるが、
(あわただしくとんですぎました。)
あわただしく飛んですぎました。
(「まなづるさん。あたし、かなりひかっていない?」)
「まなづるさん。あたし、かなりひかっていない?」
(「ずいぶん、ひかっていますね。」)
「ずいぶん、ひかっていますね。」
(まなづるは、むこうのほのじろいきりのなかにおちていきながら、)
まなづるは、むこうのほの白いきりのなかにおちていきながら、
(またこえひくくしろいだぁりやへこえをかけていきました。)
また声ひくく白いダァリヤへ声をかけていきました。
(「こんばんは、ごきげんはいかがですか。」)
「こんばんは、ごきげんはいかがですか。」
(ほしはめぐり、きんせいのおわりのうたで、)
星はめぐり、金星のおわりの歌で、
(そらはすっかりぎんいろになり、よがあけました。)
空はすっかり銀色になり、夜があけました。
(にっこうは、けさはかがやくこはくのなみです。)
日光は、けさはかがやくこはくの波です。
(「まあ、あなたのうつくしいこと。)
「まあ、あなたのうつくしいこと。
(ごこうはきのうのごばいもおおきくなってるわ。」)
後光はきのうの五ばいも大きくなってるわ。」
(「ほんとうに、めもさめるようなのよ。)
「ほんとうに、めもさめるようなのよ。
(あのなしのきまで、あなたのひかりがいってますわ。」)
あのなしの木まで、あなたの光りがいってますわ。」
(「ええ、それはそうよ。だってつまらないわ。)
「ええ、それはそうよ。だってつまらないわ。
(たれもまだあたしを、じょおうさまだとはいわないんだから。」)
たれもまだあたしを、女王さまだとはいわないんだから。」
(そこできいろなだぁりやは、さびしくかおをみあわせて、)
そこで黄色なダァリヤは、さびしく顔を見あわせて、
(それからにしのぐんじょうのさんみゃくに、そのおおきなひとみをなげました。)
それから西の群青の山脈に、その大きなひとみを投げました。
(かんばしくきらびやかな、あきのいちにちはくれ、)
かんばしくきらびやかな、秋の一日は暮れ、
(つゆはおちほしはめぐり、そしてあのまなづるが、)
つゆはおち星はめぐり、そしてあのまなづるが、
(みっつのはなのうえのそらを、だまってとんですぎました。)
三つの花の上の空を、だまって飛んですぎました。
(「まなづるさん。あたしこんやどうみえて?」)
「まなづるさん。あたしこんやどう見えて?」
(「さあ、たいしたもんですね。けれども、もうだいぶくらいからな。」)
「さあ、たいしたもんですね。けれども、もうだいぶ暗いからな。」
(まなづるは、そしてむこうのぬまのきしをとおって、)
まなづるは、そしてむこうの沼の岸をとおって、
(あのしろいだぁりやにいいました。)
あの白いダァリヤにいいました。
(「こんばんは、いいおばんですね。」)
「こんばんは、いいおばんですね。」