風の又三郎 16
九月七日 さいかち淵
宮沢賢治 作 全文
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(「あ、あいづ、せんばいきょくだぞ。せんばいきょくだぞ。」さたろうがいいました。)
「あ、あいづ、専売局だぞ。専売局だぞ。」佐太郎がいいました。
(「またさぶろう、うなのとったたばこのはめっけだんだぞ。うな、つれでぐさきたぞ。」)
「又三郎、うなのとった煙草の葉めっけだんだぞ。うな、連れでぐさ来たぞ。」
(かすけがいいました。)
嘉助がいいました。
(「なんだい。こわくないや。」またさぶろうはきっとくちをかんでいいました。)
「何だい。こわくないや。」又三郎はきっと口をかんでいいました。
(「みんなまたさぶろうのごとかこんでろ、かこんでろ。」といちろうがいいました。)
「みんな又三郎のごと囲んでろ、囲んでろ。」と一郎がいいました。
(そこでみんなはまたさぶろうをさいかちのきのいちばんなかのえだにおいて、)
そこでみんなは又三郎をさいかちの樹のいちばん中の枝に置いて、
(まわりのえだにすっかりこしかけました。)
まわりの枝にすっかり腰かけました。
(そのおとこはこっちへ、びちゃびちゃきしをあるいてきました。)
その男はこっちへ、びちゃびちゃ岸をあるいて来ました。
(「きたきたきたきたきたっ。」とみんなはいきをころしました。)
「来た来た来た来た来たっ。」とみんなは息をころしました。
(ところがそのおとこは、べつにまたさぶろうをつかまえるふうでもなく、)
ところがその男は、別に又三郎をつかまえる風でもなく、
(みんなのまえをとおりこして、)
みんなの前を通りこして、
(それからふちのすぐじょうりゅうのあさせをわたろうとしました。)
それから淵のすぐ上流の浅瀬をわたろうとしました。
(それもすぐにかわをわたるでもなく、)
それもすぐに河をわたるでもなく、
(いかにもわらじやきゃはんのきたなくなったのを、そのままあらうというふうに、)
いかにもわらじや脚絆の汚なくなったのを、そのまま洗うというふうに、
(もうなんべんもいったりきたりするもんですから、)
もう何べんも行ったり来たりするもんですから、
(みんなはだんだんこわくなくなりましたが、)
みんなはだんだん怖くなくなりましたが、
(そのかわりきもちがわるくなってきました。)
その代り気持ちが悪くなってきました。
(そこでとうとういちろうがいいました。)
そこでとうとう一郎がいいました。
(「お、おれさきにさけぶから、みんなあとからいちにさんでさけぶこだ。いいか。)
「お、おれ先に叫ぶから、みんなあとから一二三で叫ぶこだ。いいか。
(あんまりかわをにごすなよ、)
あんまり川を濁すなよ、
など
(いつでもせんせいうでなぃか。いち、にぃ、さん。」)
いつでも先生(センセ)いうでなぃか。一、二ぃ、三。」
(「あんまりかわをにごすなよ、)
「あんまり川を濁すなよ、
(いつでもせんせいうでなぃか。」)
いつでも先生(センセ)いうでなぃか。」
(そのひとはびっくりしてこっちをみましたけれども、)
その人はびっくりしてこっちを見ましたけれども、
(なにをいったのかよくわからないというようすでした。)
何をいったのかよくわからないというようすでした。
(そこでみんなはまたいいました。)
そこでみんなはまたいいました。
(「あんまりかわをにごすなよ、)
「あんまり川を濁すなよ、
(いつでもせんせ、いうでなぃか。」)
いつでも先生(センセ)、いうでなぃか。」
(はなのとがったひとはすぱすぱと、たばこをすうときのようなくちつきでいいました。)
鼻の尖った人はすぱすぱと、煙草を吸うときのような口つきでいいました。
(「このみずのむのか、ここらでは。」)
「この水呑むのか、ここらでは。」
(「あんまりかわをにごすなよ、)
「あんまり川をにごすなよ、
(いつでもせんせいうでなぃか。」)
いつでも先生(センセ)いうでなぃか。」
(はなのとがったひとはすこしこまったようにして、またいいました。)
鼻の尖った人は少し困ったようにして、またいいました。
(「かわをあるいてわるいのか。」)
「川をあるいてわるいのか。」
(「あんまりかわをにごすなよ、)
「あんまり川をにごすなよ、
(いつでもせんせいうでなぃか。」)
いつでも先生(センセ)いうでなぃか。」
(そのひとはあわてたのをごまかすように、わざとゆっくりかわをわたって、)
その人はあわてたのをごまかすように、わざとゆっくり川をわたって、
(それからあるぷすのたんけんみたいなしせいをとりながら、)
それからアルプスの探検みたいな姿勢をとりながら、
(あおいねんどとあかじゃりのがけをななめにのぼって、)
青い粘土と赤砂利の崖をななめにのぼって、
(がけのうえのたばこばたけへはいってしまいました。)
崖の上のたばこ畠へはいってしまいました。
(するとまたさぶろうは、)
すると又三郎は、
(「なんだい、ぼくをつれにきたんじゃないや。」といいながら、)
「何だい、ぼくを連れにきたんじゃないや。」といいながら、
(まっさきにどぶんとふちへとびこみました。)
まっ先にどぶんと淵へとび込みました。
(みんなもなんだか、そのおとこもまたさぶろうもきのどくなような、)
みんなも何だか、その男も又三郎も気の毒なような、
(おかしながらんとしたきもちになりながら、)
おかしながらんとした気持ちになりながら、
(ひとりづつきからはねおりて、かわらにおよぎついて、)
一人づつ木からはね下りて、河原に泳ぎついて、
(さかなをてぬぐいにつつんだりてにもったりしていえにかえりました。)
魚を手拭につつんだり手にもったりして家に帰りました。