『妖怪博士』江戸川乱歩15
○少年探偵団シリーズ第3作品『妖怪博士』
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順位 | 名前 | スコア | 称号 | 打鍵/秒 | 正誤率 | 時間(秒) | 打鍵数 | ミス | 問題 | 日付 |
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1 | berry | 7655 | 神 | 7.8 | 98.1% | 544.2 | 4248 | 82 | 94 | 2024/10/06 |
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問題文
(「とのむらさん、もしそれがほんとうでしたら、わたしたちは)
「殿村さん、もしそれが本当でしたら、私たちは
(よろこんであなたのおちからをおかりしたいのですが、しかし)
喜んであなたのお力をお借りしたいのですが、しかし
(かいしゃとしては、あけちたんていにすべてをまかせるやくそくに)
会社としては、明智探偵にすべてを任せる約束に
(なっていますので、あけちさんにむだんであなたにじけんを)
なっていますので、明智さんに無断であなたに事件を
(いらいすることはできません。いちおうそうだんしましたうえ、)
依頼することは出来ません。一応相談しました上、
(のちほどごへんじしたいのですが」あいかわしがものやわらかに)
のちほどご返事したいのですが」相川氏が物柔らかに
(こたえるのを、あやしいたんていはかぶせるようにして、ふとく)
答えるのを、怪しい探偵はかぶせるようにして、太く
(にごったこえをはりあげました。「いや、ごもっとも。)
濁った声を張りあげました。「いや、ごもっとも。
(それじゃあ、ここへあけちこごろうをよんで)
それじゃあ、ここへ明智小五郎を呼んで
(くださらんか。はんざいそうさというやつはいっぷんいちびょうの)
くださらんか。犯罪捜査というやつは一分一秒の
(ておくれから、とりかえしのつかないことがおこるもの)
手遅れから、取り返しのつかないことが起こるもの
(です。いずれのちほどなんて、そんなのんきなことを)
です。いずれのちほどなんて、そんなのんきなことを
(いっているばあいはありません。さあ、あけちくんをここへ)
言っている場合はありません。さあ、明智君をここへ
(よんでください。でんわをかけて、すぐやってこいと)
呼んでください。電話をかけて、すぐやって来いと
(いってやってください。わしは、ここでまたせて)
言ってやってください。わしは、ここで待たせて
(もらいます。あけちがここへくれば、わしがどんな)
もらいます。 明智がここへ来れば、わしがどんな
(おとこかということも、おわかりになるじゃろう。やつも)
男かということも、お分かりになるじゃろう。やつも
(めいたんていといわれているほどのじんぶつです。ひとめわしを)
名探偵といわれているほどの人物です。一目わしを
(みれば、このわしのじつりょくがどれほどのものか、)
見れば、このわしの実力がどれほどのものか、
(たちまちさとるにちがいありません」ああ、なんという)
たちまち悟るに違いありません」 ああ、なんという
(じしん。なんといううぬぼれでしょう。それをきくと、)
自信。なんという自惚れでしょう。それを聞くと、
(あいかわしはくちもだせず、このことをじゅうやくにそうだんしてみる)
相川氏は口も出せず、このことを重役に相談してみる
(きになりました。じゅうやくは「それほどいうのであれば、)
気になりました。重役は「それほど言うのであれば、
(なにかかくしんがあるにちがいないから、ともかくとのむらの)
なにか確信があるに違いないから、ともかく殿村の
(きぼうをききいれて、あけちたんていをよんでみてはどうか」)
希望を聞き入れて、明智探偵を呼んでみてはどうか」
(というので、すぐさまあけちたんていじむしょへでんわを)
と言うので、すぐさま明智探偵事務所へ電話を
(かけて、このことをつたえました。さいわい、)
かけて、このことを伝えました。 さいわい、
(あけちたんていがじむしょにいあわせており、じぶんからでんわに)
明智探偵が事務所に居合わせており、自分から電話に
(でて、とのむらのようすをくわしくききとったうえ、)
出て、殿村の様子を詳しく聞き取った上、
(「それでは、すぐそちらへむかいます」というへんじ)
「それでは、すぐそちらへ向かいます」という返事
(でした。それからさんじゅっぷんかん、おうせつしつであいかわぎしちょうと)
でした。 それから三十分間、応接室で相川技師長と
(とのむらたんていがだまってまっていると、あけちたんていがかおに)
殿村探偵が黙って待っていると、明智探偵が顔に
(にこやかなびしょうをうかべてはいってきました。あいかわしは)
にこやかな微笑を浮かべて入って来ました。相川氏は
(さっそく、りょうたんていをしょうかいし、かんたんなあいさつがすむととのむらは、)
早速、両探偵を紹介し、簡単な挨拶が済むと殿村は、
(すぐさまほんだいにはいりました。「あけちくん、きみは)
すぐさま本題に入りました。「明智君、きみは
(このじけんに、ないしんすくなからずよわっているのじゃない)
この事件に、内心少なからず弱っているのじゃない
(かね。おみうけするところ、まだなにもこれという)
かね。おみうけするところ、まだ何もこれという
(いとぐちをつかんでおられないようじゃが」このぶれいな)
糸口をつかんでおられないようじゃが」この無礼な
(しつもんに、あけちはおこるようすもなく、おかしそうに)
質問に、明智は怒る様子もなく、おかしそうに
(わらいだしながら、「ははは、おさっしのとおり。ぼくは、)
笑いだしながら、「ハハハ、お察しの通り。ぼくは、
(まだなんのてがかりもつかんでいない。しかし、)
まだ何の手がかりもつかんでいない。しかし、
(けっしてよわってなんかいませんよ。このくらいのなんじけん)
決して弱ってなんかいませんよ。このくらいの難事件
(には、いままでなんじゅっかいとなくであっている。そして、)
には、今まで何十回となく出会っている。そして、
(ぼくはまだいちども、そのかいけつにしっぱいしたことはない)
ぼくはまだ一度も、その解決に失敗したことはない
(のです」「うふふ、きみもなかなかうぬぼれがつよい)
のです」「ウフフ、きみもなかなか自惚れが強い
(ねえ。だが、てがかりをひとつもつかんでいないとは、)
ねえ。だが、手がかりを一つもつかんでいないとは、
(おきのどくじゃ。このわしは、もうちゃんとはんにんのめぼし)
お気の毒じゃ。このわしは、もうちゃんと犯人の目星
(までつけている。ただ、そいつのありかさえさがせば)
までつけている。ただ、そいつの在りかさえ探せば
(よいのじゃ。てがかりなんて、ふたつもみっつもゆうりょくな)
良いのじゃ。手がかりなんて、二つも三つも有力な
(やつをにぎっている。どうだね、あけちくん。これでも)
やつを握っている。 どうだね、明智君。これでも
(こうさんはせんかね。わしはいまもあいかわさんにいった)
降参はせんかね。わしは今も相川さんに言った
(のじゃが、きょうからとおかかんで、しょるいとよにんのこどもを)
のじゃが、今日から十日間で、書類と四人の子どもを
(とりもどしてみせるつもりじゃ。え、あけちくん、とおかかんに)
取り戻してみせるつもりじゃ。え、明智君、十日間に
(じゃよ」とのむらはとくいげで、さるのようにきいろい)
じゃよ」殿村は得意気で、サルのように黄色い
(でっぱをむきだして、つばをとばしながら)
出っ歯をむきだして、ツバを飛ばしながら
(まくしたてます。あけちはだまって、そのようすを)
まくしたてます。 明智は黙って、その様子を
(ながめていましたが、やっぱりにこにこわらったまま、)
ながめていましたが、やっぱりニコニコ笑ったまま、
(へいぜんとしてこたえました。「とおかかんとはすこしながすぎる)
平然として答えました。「十日間とは少し長すぎる
(ようだねえ。ぼくは、そのはんぶんのいつかかんで、はんにんを)
ようだねえ。ぼくは、その半分の五日間で、犯人を
(みつけだすつもりでいるんだが」それをきくと、)
見つけだすつもりでいるんだが」 それを聞くと、
(とのむらはぎょっとしたようにあけちのかおをみつめました)
殿村はギョッとしたように明智の顔を見つめました
(が、みにくいかおをよりみにくくして、ほえるようにこういい)
が、醜い顔をより醜くして、ほえるようにこう言い
(ました。「なんだって。きみはてがかりを、まだ)
ました。「なんだって。きみは手がかりを、まだ
(すこしもつかんでいないといったばかりじゃないか。)
少しもつかんでいないと言ったばかりじゃないか。
(それにいつかかんなんて、でたらめもいいかげんにしろ」)
それに五日間なんて、デタラメもいい加減にしろ」
(「でたらめじゃない。てがかりをさがしてはんにんを)
「デタラメじゃない。手がかりを探して犯人を
(つきとめ、しょるいとこどもたちをとりもどす。これだけの)
突き止め、書類と子どもたちを取り戻す。これだけの
(しごとには、いつかでもおおすぎるさ。ぼくはこれまで)
仕事には、五日でも多すぎるさ。ぼくはこれまで
(そうさくのきげんをやくそくして、いちどだってまもらなかった)
捜索の期限を約束して、一度だって守らなかった
(ことはない」「ふん、なんのてがかりもつかんで)
ことはない」「フン、何の手がかりもつかんで
(いないのにいつかとは、むちゃなたんていさんだ。よし、)
いないのに五日とは、無茶な探偵さんだ。よし、
(それじゃ、わしはよっかかんでやってみせる。よっかかんだ」)
それじゃ、わしは四日間でやってみせる。四日間だ」
(とのむらはみにくいかおをまっかにして、くやしまぎれにどなり)
殿村は醜い顔を真っ赤にして、悔しまぎれにどなり
(ました。「よろしい。では、ぼくもよっかかんにしよう」)
ました。「よろしい。では、ぼくも四日間にしよう」
(あけちはすこしもさわぎません。まるで、はんにんはてのなかに)
明智は少しも騒ぎません。まるで、犯人は手の中に
(あるといわんばかりです。「ちくしょう。)
あるといわんばかりです。「ちくしょう。
(いいかげんなやくそくなら、だれでもする。わしのは、)
いい加減な約束なら、だれでもする。わしのは、
(そんなでたらめじゃないぞ」とのむらはあけちのまえにたって)
そんなデタラメじゃないぞ」殿村は明智の前に立って
(はをむきだし、いまにもくいつきそうなかおになって、)
歯をむきだし、今にも食いつきそうな顔になって、
(さんぼんのゆびをつきだしました。「みっかかんだ。)
三本の指を突き出しました。「三日間だ。
(わしはみっかかんでかたづけてみせる。きょうはここのか)
わしは三日間で片付けてみせる。今日は九日
(じゃから、じゅういちにちのよるまでには、かならずやってみせる」)
じゃから、十一日の夜までには、必ずやってみせる」
(「よろしい。では、ぼくもじゅういちにちのよるまでにしよう」)
「よろしい。では、ぼくも十一日の夜までにしよう」
(あけちはなりゆきじょう、ひくにひかれず、きっぱりといい)
明智は成り行き上、引くに引かれず、きっぱりと言い
(はなちました。どくしゃしょくん、なんだかしんぱいでは)
放ちました。読者諸君、なんだか心配では
(ありませんか。なにかゆうりょくなてがかりをつかんでいる)
ありませんか。なにか有力な手がかりをつかんでいる
(とのむらでさえ、さいしょはとおかかんといっていたほどなのです。)
殿村でさえ、最初は十日間と言っていた程なのです。
(それを、なにひとつてがかりももたないあけちが、)
それを、何一つ手がかりも持たない明智が、
(いかにめいたんていとはいえ、こんなやくそくをするなんて、)
いかに名探偵とはいえ、こんな約束をするなんて、
(あまりにもむぼうではありませんか。あいかわぎしちょうは、)
あまりにも無謀ではありませんか。 相川技師長は、
(ふたりのたんていのこうろんをだまってきいていましたが、)
二人の探偵の口論を黙って聞いていましたが、
(このままにしておいては、どこまであらそいがつづくか)
このままにしておいては、どこまで争いが続くか
(しれませんのできをきかして、ふたりのあいだに)
知れませんので気をきかして、二人の間に
(わってはいりました。)
割って入りました。