半七捕物帳 槍突き8
岡本綺堂 半七捕物帳シリーズ 第18話
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問題文
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(うわさをしているところへ、たみじろうというにじゅうしごのこぶんがそりたてのひたいを)
噂をしているところへ、民次郎という二十四五の子分が剃り立ての額を
(ひからせてかえってきた。)
ひからせて帰って来た。
(「おやぶん。おはようございます。さっそくだが、わっしのほうはどうもたいやくですぜ。)
「親分。お早うございます。早速だが、わっしのほうはどうも大役ですぜ。
(とらのやつとてわけをして、まいばんほうぼうをみまわってあるいているが、なにしろえどは)
寅の奴と手わけをして、毎晩方々を見まわって歩いているが、なにしろ江戸は
(ひろいんでね。とてもらちがあきそうもありませんよ」)
広いんでね。とても埒が明きそうもありませんよ」
(「きのなげえしごとだが、まあがまんしてやってくれ。そのうちにゃあ)
「気の長げえ仕事だが、まあ我慢してやってくれ。そのうちにゃあ
(うまくぶつかるかもしれねえから」と、しちべえはやはりわらっていた。)
巧くぶつかるかも知れねえから」と、七兵衛はやはり笑っていた。
(「どうでみんながてこずっているしごとなんだから、そうてっとりばやくは)
「どうでみんなが手古摺っている仕事なんだから、そう手っ取り早くは
(いかねえ。まあ、きながにやるよりほかはねえ」)
行かねえ。まあ、気長にやるよりほかはねえ」
(たみじろうはとらしちというこぶんとてわけをして、えどじゅうでたけやぶのあるところを)
民次郎は寅七という子分と手わけをして、江戸中で竹藪のあるところを
(まいばんみまわっているのであった。いまとはちがって、そのころのえどには)
毎晩見廻っているのであった。今とは違って、その頃の江戸には
(たけやぶのあるようなばしょはたくさんあった。それをこんよくみまわってあるくのは)
竹藪のあるような場所はたくさんあった。それを根よく見まわって歩くのは
(なみたいていのことではないので、としのわかいかれがぐちをこぼすのもむりはなかった。)
並大抵のことではないので、年のわかい彼が愚痴をこぼすのも無理はなかった。
(ひがくれると、かんじはあいぼうのとみまつをつれてやくそくどおりにたずねてきた。)
三
日が暮れると、勘次は相棒の富松をつれて約束通りにたずねて来た。
(かれらにからかごをかつがせて、しちべえはみえかくれにそのあとについて、)
かれらに空駕籠をかつがせて、七兵衛は見え隠れにそのあとに付いて、
(ひとどおりのすくなそうなところをまわってあるいたが、ばけねこらしいむすめには)
人通りの少なそうなところを廻ってあるいたが、化け猫らしい娘には
(であわなかった。よっつ(ごごじゅうじ)すぎになってもなんのかわりもないので、)
出逢わなかった。四ツ(午後十時)過ぎになっても何の変りもないので、
(しちべえはいくらかのさかてをふたりにやってわかれた。)
七兵衛は幾らかの酒手を二人にやって別れた。
(「こんやはいけねえ。あしたのばんもまたきてくれ」)
「今夜はいけねえ。あしたの晩もまた来てくれ」
(あくるひもふたりのかごやはしょうじきにゆうがたからたずねてきたので、しちべえは)
あくる日も二人の駕籠屋は正直に夕方からたずねて来たので、七兵衛は
など
(かれらをさきにたたせて、ゆうべのようにさびしいばしょをえらんであるいたが、)
かれらを先に立たせて、ゆうべのように寂しい場所を択んで歩いたが、
(こんやもそれらしいもののすがたをみつけなかった。)
今夜もそれらしい者のすがたを見付けなかった。
(「またあぶれか。しかたがねえ。あしたもたのむぜ」)
「又あぶれか。仕方がねえ。あしたも頼むぜ」
(こんやもさかてをやってかごやにわかれて、しちべえはさむいかぜにふかれながら)
今夜も酒手をやって駕籠屋に別れて、七兵衛は寒い風に吹かれながら
(はまちょうがしをぶらぶらかえってくると、かごやのひとりがいきをきってうしろから)
浜町河岸をぶらぶら帰ってくると、駕籠屋のひとりが息を切ってうしろから
(おってきた。うすいつきのひかりにみかえると、それはかんじであった。)
追って来た。うすい月の光りに見かえると、それは勘次であった。
(「おやぶん。たいへんです。おんながまたやられています」)
「親分。大変です。女がまた殺られています」
(「どこだ」
「すぐそこです」)
「どこだ」
「すぐそこです」
(いっちょうばかりもかしについてかけてゆくと、はたしてひとりのおんながたおれていた。)
一町ばかりも河岸に付いて駈けてゆくと、果たしてひとりの女が倒れていた。
(にじゅうさんしのこいきなふうぞくで、ひだりのむねのあたりをつかれているらしかった。)
廿三四の小粋なふうぞくで、左の胸のあたりを突かれているらしかった。
(しちべえがしがいをかかえおこして、むねをくつろげてまずそのきずぐちをあらためると、)
七兵衛が死骸をかかえ起して、胸をくつろげて先ずその疵口をあらためると、
(からだはまだぬくもりがあった。たったいまやられたにしては、なにかのさけびごえでも)
からだはまだ血温があった。たった今殺られたにしては、なにかの叫び声でも
(きこえそうなものだとおもいながら、ねんのためにおんなのくちをわってみると、)
聞えそうなものだと思いながら、念のために女の口を割ってみると、
(くちのなかからなまなましいこゆびがあらわれた。こえをたてさせまいとして)
口のなかから生々しい小指があらわれた。声を立てさせまいとして
(かたてでおんなのくちをおさえたので、おんなはくるしまぎれにそのこゆびを)
片手で女の口をおさえたので、女は苦しまぎれにその小指を
(かみきったのであろう。しちべえはそのゆびをはながみにつつんでたもとにいれた。)
咬み切ったのであろう。七兵衛はその指を鼻紙につつんで袂に入れた。
