武者小路実篤『友情』 下篇④
武者小路実篤『友情』(新潮社、昭和22年)より、主人公・野島の思いを知りつつ野島の親友・大宮と結婚することにした杉子と、その大宮との間に交わされる手紙です。
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問題文
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(のじまさまはわたくしがいなくっても、なおりっぱになれるかたとおもいます。)
野島さまは私がいなくっても、なお立派になれる方と思います。
(このごろおかきになるものにはすごいほど、つよいかんじがでてきたようにおもいます。)
この頃おかきになるものには凄い程、強い感じが出て来たように思います。
(ですがわたくしはあなたのもののほうがどのくらいすきでございましょう。)
ですが私はあなたのものの方がどの位好きで御座いましょう。
(あなたのおかきになるものはいちごんいっくはいけんいたします。)
あなたのおかきになるものは一言一句拝見いたします。
(あなたについてかかれたものもすべてはいけんいたしております。)
あなたについてかかれたものもすべて拝見いたしております。
(わたくしはあなたのいちばんいいどくしゃになりたいとおもっております。)
私はあなたの一番いい読者になりたいと思っております。
(あなたをそんけいしているかたはたくさんございましょう。)
あなたを尊敬している方は沢山御座いましょう。
(ですがほかのかたにはわからないところも)
ですが他の方にはわからない所も
(ちゃんとわたくしにはわかっておりますつもりです。)
ちゃんと私にはわかっておりますつもりです。
(さもないとくやしいので、そうおもっております。)
さもないと口惜しいので、そう思っております。
(まいにちまいにち、あなたのごけんこうと、ごこうふくをいのっております。)
毎日毎日、あなたの御健康と、御幸福を祈っております。
(どうかおゆるしください。)
どうかお許し下さい。
(どんなみじかいごへんじでもくださればとびあがります。)
どんな短かい御返事でも下さればとび上ります。