武者小路実篤『友情』 下篇②
武者小路実篤『友情』で交わされる手紙です。
武者小路実篤『友情』(新潮社、昭和22年)より、主人公・野島の思いを知りつつ野島の親友・大宮と結婚することにした杉子と、その大宮との間に交わされる手紙です。
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問題文
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(せんじつたけこさまにみつこしでおめにかかりました。)
先日武子さまに三越でお目にかかりました。
(おっとのかたもごいっしょでした。)
夫の方も御一緒でした。
(たけこさまはじっさいおうつくしくおなりでした。)
武子さまは実際お美しくおなりでした。
(おっとのかたもりっぱなかたでおにあいのごふうふとおもいました。)
夫の方も立派な方でお似合いの御夫婦と思いました。
(そのとき、わたしのほうではえんりょしておりましたが、ごていねいにあいさつしていただき、)
その時、私の方では遠慮しておりましたが、ご丁寧にあいさつして戴き、
(そのうえおっとのかたにひきあわせしていただき、)
その上夫の方に引きあわせして戴き、
(そしてごしゅじんのやくしょにゆかれるるすにたいくつだからきてくれとのおはなしで、)
そして御主人の役所にゆかれる留守に退屈だから来てくれとのお話で、
(わたしもおおよろこびでさんじょういたしました。)
私も大喜びで参上いたしました。
(そしてあなたのおはなしもうかがい、さいきんのおしゃしんもはいけんいたしました。)
そしてあなたのお話も伺い、最近のお写真も拝見いたしました。
(はいからにおなりになったとふたりでわらいました。)
ハイカラにおなりになったと二人で笑いました。
(しかしちっともけいはくのかんじのしないのがふしぎだともうしました。)
しかしちっとも軽薄の感じのしないのが不思議だと申しました。
(わたしはそのとき、たけこさまにおおみやさんにおねだりしたいものがあるのですが、)
私はその時、武子さまに大宮さんにおねだりしたいものがあるのですが、
(いいでしょうかともうしました。)
いいでしょうかと申しました。
(それはいいでしょ、いくらでもおねだりになるといいわと)
それはいいでしょ、いくらでもおねだりになるといいわと
(おっしゃってくださいました。)
おっしゃって下さいました。
(そしておところもうかがったのでした。)
そしてお処も伺ったのでした。
(たけこさまも、このじゅういちがつにはおふたりでぱりにいらっしゃるようなおはなしでした。)
武子さまも、この十一月にはお二人で巴里にいらっしゃるようなお話でした。
(どんなにうらやましかったかしれません。)
どんなに羨ましかったか知れません。
(ぱりはわたくしもぜひいちどはゆきたいとおもっておりますの。)
巴里は私も是非一度はゆきたいと思っておりますの。
(ゆけそうもありませんが、いちばんすきなみやこです。にほんはべつとして。)
ゆけそうもありませんが、一番好きな都です。日本は別として。
