友情(武者小路実篤) 下篇①
武者小路実篤『友情』(新潮社、昭和22年)より、主人公・野島の思いを知りつつ野島の親友・大宮と結婚することにした杉子と、その大宮との間に交わされる手紙です。
まず杉子が大宮に手紙を送ります。
まず杉子が大宮に手紙を送ります。
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問題文
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(おおみやさん、おこらないでください。)
大宮さん、怒らないで下さい。
(わたくしがてがみをかくのにはずいぶんゆうきがいりました。)
私が手紙をかくのには随分勇気がいりました。
(わたくしはなんどかきかけてあなたをふゆかいにおさしてはすまないとおもって)
私は何度かきかけてあなたを不愉快におさしてはすまないと思って
(やめたかわかりません。)
やめたかわかりません。
(あなたにおこられ、てがみをよこしてはこまると、)
あなたに怒られ、手紙をよこしては困ると、
(おっしゃられてはわたくしはたつせがありません。)
おっしゃられては私は立つ瀬がありません。
(わたくしはあなたにけいべつされ)
私はあなたに軽蔑され
(あいそをつかされることをおそれておりました。)
愛想をつかされることを恐れておりました。
(ですがもうわたくしはそんなことをしんぱいしていられなくなりました。)
ですがもう私はそんなことを心配していられなくなりました。
(いっしょうのことです。)
一生のことです。
(いっしょうのことよりもっといじょうのことかもしれません。)
一生のことよりもっと以上のことかも知れません。
(ともかくてがみをかきます。)
ともかく手紙をかきます。
(おこられても、あいそつかされても、)
怒られても、愛想つかされても、
(このきもちでいるよりはましとおもいます。)
この気持でいるよりはましと思います。
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