銀河鉄道の夜 3
宮沢賢治 作
このレンズの中を見まわすとしてごらんなさい。
こっちの方はレンズが薄いのでわずかの光る粒、
すなわち星しか見えないのでしょう。
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問題文
(せんせいはなかにたくさんひかるすなのつぶのはいった)
先生は中にたくさん光る砂のつぶの入った
(おおきなりょうめんのとつれんずをさしました。)
大きな両面の凸レンズを指しました。
(「あまのがわのかたちはちょうどこんななのです。)
「天の川の形はちょうどこんななのです。
(このいちいちのひかるつぶが、みんなわたくしどものたいようとおなじように)
このいちいちの光るつぶが、みんな私どもの太陽と同じように
(じぶんでひかっているほしだとかんがえます。)
じぶんで光っている星だと考えます。
(わたくしどものたいようがこのほぼなかごろにあって)
私どもの太陽がこのほぼ中ごろにあって
(ちきゅうがそのすぐちかくにあるとします。)
地球がそのすぐ近くにあるとします。
(みなさんはよるにこのまんなかにたって、)
みなさんは夜にこのまん中に立って、
(このれんずのなかをみまわすとしてごらんなさい。)
このレンズの中を見まわすとしてごらんなさい。
(こっちのほうはれんずがうすいのでわずかのひかるつぶ、)
こっちの方はレンズが薄いのでわずかの光る粒、
(すなわちほししかみえないのでしょう。)
すなわち星しか見えないのでしょう。
(こっちやこっちのほうはがらすがあついので、)
こっちやこっちの方はガラスが厚いので、
(ひかるつぶ、すなわちほしがたくさんみえ、)
光る粒、すなわち星がたくさん見え、
(そのとおいのはぼうっとしろくみえるという、)
その遠いのはぼうっと白く見えるという、
(これがつまりこんにちのぎんがのせつなのです。)
これがつまり今日の銀河の説なのです。
(そんならこのれんずのおおきさがどれくらいあるか、)
そんならこのレンズの大きさがどれくらいあるか、
(またそのなかのさまざまのほしについては、もうじかんですから、)
またその中のさまざまの星については、もう時間ですから、
(このつぎのりかのじかんにおはなしします。)
このつぎの理科の時間にお話しします。
(ではきょうはそのぎんがのおまつりなのですから、)
では今日はその銀河のお祭りなのですから、
(みなさんはそとへでてよくそらをごらんなさい。)
みなさんは外へでてよく空をごらんなさい。
(ではここまでです。ほんやのーとをおしまいなさい。」)
ではここまでです。本やノートをおしまいなさい。」
(そしてきょうしつじゅうはしばらくつくえのふたをあけたりしめたり)
そして教室中はしばらく机のふたをあけたりしめたり
(ほんをかさねたりするおとがいっぱいでしたが、)
本を重ねたりする音がいっぱいでしたが、
(まもなくみんなはきちんとたってれいをすると、きょうしつをでました。)
まもなくみんなはきちんと立って礼をすると、教室を出ました。