銀河鉄道の夜 44

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九、ジョバンニの切符 16/36
(わたりどり 2/3)
「いまこそ渡れわたり鳥、いまこそ渡れわたり鳥。」
それといっしょにまたいく万という鳥の群が空をまっすぐにかけたのです。

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問題文

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(「とりがとんでいくな。」)

「鳥が飛んで行くな。」

(じょばんにがまどのそとでいいました。)

ジョバンニが窓の外でいいました。

(「どら。」)

「どら。」

(かむぱねるらもそらをみました。)

カムパネルラも空を見ました。

(そのときあのやぐらのうえのゆるいふくのおとこは、)

そのときあのやぐらの上のゆるい服の男は、

(にわかにあかいはたをあげてきょうきのようにふりうごかしました。)

にわかに赤い旗をあげて狂気のように振りうごかしました。

(するとぴたっととりのむれはとおらなくなり、)

するとぴたっと鳥の群れは通らなくなり、

(それとどうじにぴしゃぁんというつぶれたようなおとがかわしものほうでおこって、)

それと同時にぴしゃぁんというつぶれたような音が川下の方で起こって、

(それからしばらくしいんとしました。)

それからしばらくしいんとしました。

(とおもったらあのあかぼうのしんごうしゅがまたあおいはたをふってさけんでいたのです。)

と思ったらあの赤帽の信号手がまた青い旗をふって叫んでいたのです。

(「いまこそわたれわたりどり、いまこそわたれわたりどり。」)

「いまこそ渡れわたり鳥、いまこそ渡れわたり鳥。」

(そのこえもはっきりきこえました。)

その声もはっきり聞こえました。

(それといっしょにまたいくまんというとりのむれが)

それといっしょにまたいく万という鳥の群が

(そらをまっすぐにかけたのです。)

空をまっすぐにかけたのです。

(ふたりのかおをだしているまんなかのまどからあのおんなのこがかおをだして)

ふたりの顔を出しているまん中の窓からあの女の子が顔を出して

(うつくしいほおをかがやかせながらそらをあおぎました。)

美しいほおをかがやかせながら空を仰ぎました。

(「まあ、このとり、たくさんですわねえ、)

「まあ、この鳥、たくさんですわねえ、

(あらまあそらのきれいなこと。」)

あらまあ空のきれいなこと。」

(おんなのこはじょばんににはなしかけましたけれども、)

女の子はジョバンニに話しかけましたけれども、

(じょばんにはなまいきな、いやだいとおもいながらだまって、)

ジョバンニは生意気な、いやだいと思いながらだまって、

など

(くちをむすんでそらをみあげていました。)

口をむすんで空を見あげていました。

(おんなのこはちいさくほっといきをしてだまってせきへもどりました。)

女の子は小さくほっと息をしてだまって席へもどりました。

(かむぱねるらがきのどくそうにまどからかおをひっこめてちずをみていました。)

カムパネルラが気の毒そうに窓から顔を引っこめて地図を見ていました。

(「あのひととりへおしえてるんでしょうか。」)

「あの人鳥へ教えてるんでしょうか。」

(おんなのこがそっとかむぱねるらにたずねました。)

女の子がそっとカムパネルラにたずねました。

(「わたりどりへしんごうしてるんです。)

「わたり鳥へ信号してるんです。

(きっとどこからか、のろしがあがるためでしょう。」)

きっとどこからか、のろしがあがるためでしょう。」

(かむぱねるらがすこしおぼつかなそうにこたえました。)

カムパネルラが少しおぼつかなそうに答えました。

(そしてくるまのなかはしぃんとなりました。)

そして車の中はしぃんとなりました。

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