『妖怪博士』江戸川乱歩13

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少年探偵団シリーズ第3作品『妖怪博士』
※分かりやすくする為、表記等を一部改変しております

○少年探偵団シリーズ第3作品『妖怪博士』
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順位 名前 スコア 称号 打鍵/秒 正誤率 時間(秒) 打鍵数 ミス 問題 日付
1 ヌオー 5690 A 6.0 93.7% 740.5 4513 299 100 2024/12/16
2 baru 4106 C 4.4 92.2% 1018.4 4567 385 100 2024/11/30

関連タイピング

問題文

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(あなのそこにすべりおちたさんにんは、しばらくきをうしなった)

穴の底にすべり落ちた三人は、しばらく気を失った

(ようにたおれていましたが、やがていたさをこらえて)

ように倒れていましたが、やがて痛さをこらえて

(おきあがってみると、そこはうえのへやのばいほども)

起きあがってみると、そこは上の部屋の倍ほども

(ある、いんきなちかしつでした。そのこんくりーとのゆかの)

ある、陰気な地下室でした。そのコンクリートの床の

(まんなかに、せめんとだるのようなおおきいたるが、)

真ん中に、セメントダルのような大きいタルが、

(たったひとつおいてあるのみで、ほかにはなにも)

たった一つ置いてあるのみで、他には何も

(ありません。たるのうえには、せいようふうのしょくだいがのせて)

ありません。タルの上には、西洋風の燭台がのせて

(あって、にほんのろうそくがちろちろと、まもののしたの)

あって、二本のロウソクがチロチロと、魔物の舌の

(ようにもえています。そのひかりで、いまおちてきた)

ように燃えています。 その光で、いま落ちてきた

(たかいてんじょうをながめると、いつのまにしまったのか、)

高い天井をながめると、いつの間に閉まったのか、

(とびらのようにひらいたゆかいたがもとどおりぴったりと)

扉のようにひらいた床板が元通りピッタリと

(くっついて、すこしのすきまもなくなっているのです。)

くっついて、少しの隙間もなくなっているのです。

(そのうえ、でぐちをふさがれてしまったのですから、もう)

その上、出口をふさがれてしまったのですから、もう

(のがれるほうほうもありません。しょうねんたちはおもいも)

のがれる方法もありません。少年たちは思いも

(かけないおそろしいうんめいに、まだなにもかんがえるちからがなく、)

かけない恐ろしい運命に、まだ何も考える力がなく、

(ただおびえきっためでかおをみあわせるのでした。)

ただおびえきった目で顔を見合わせるのでした。

(するとそのとき、どこからともなく、いんきでうすきみわるい)

するとその時、どこからともなく、陰気で薄気味悪い

(わらいごえがひびいてきました。「ふふふ、びっくりして)

笑い声が響いてきました。「フフフ、ビックリして

(いるね。だが、それでおしまいじゃないんだぜ。)

いるね。だが、それでおしまいじゃないんだぜ。

(まだつづきがあるんだぜ。きみたち、そのたるのなかに)

まだ続きがあるんだぜ。きみたち、そのタルの中に

など

(いったい、なにがはいっているとおもうね。ゆうきがあったら、)

一体、何が入っていると思うね。勇気があったら、

(ふたをあけてごらん。ふふふ、あけられるかね」)

フタをあけてごらん。フフフ、あけられるかね」

(さんにんはそのこえにぞーっとして、へやのまんなかのきみょうな)

三人はその声にゾーッとして、部屋の真ん中の奇妙な

(たるをみつめました。ああ、そのなかにはいったい、)

タルを見つめました。 ああ、その中には一体、

(なにがはいっているのでしょう。しょうねんたちはいいあわせた)

何が入っているのでしょう。少年たちは言い合わせた

(ように、あるおそろしいもののすがたをおもいうかべない)

ように、ある恐ろしい者の姿を思い浮かべない

(ではいられませんでした。それは、むざんにきり)

ではいられませんでした。 それは、無惨に切り

(ころされた、あいかわたいじくんのしたいでした。そのたるは)

殺された、相川泰二君の死体でした。そのタルは

(じゅうに、さんさいのこどもならば、じゅうぶんはいれるほどの)

十二、三歳の子どもならば、充分入れるほどの

(おおきさがあるのです。じっとみつめていると、)

大きさがあるのです。ジッと見つめていると、

(たるのいたをとおして、そのなかにまるくなって)

タルの板を通して、その中に丸くなって

(とじこめられている、あいかわくんのあおざめたすがたが、)

閉じこめられている、相川君の青ざめた姿が、

(ありありとみえてくるようにおもわれました。さんにんは、)

ありありと見えてくるように思われました。 三人は、

(おたがいのこころのなかをさぐるように、まためをみあわせ)

お互いの心の中を探るように、また目を見合わせ

(ました。「きっとあいかわくんが、とじこめられているん)

ました。「きっと相川君が、閉じこめられているん

(だぜ」うえむらくんが、おもいきったようにいいました。)

だぜ」上村君が、思いきったように言いました。

(でも、「したい」ということばはおそろしくて、くちにする)

でも、「死体」という言葉は恐ろしくて、口にする

(ことができなかったのです。「ぼくもそうだとおもう。)

ことが出来なかったのです。「ぼくもそうだと思う。

(あけてみようか」これはさいとうくんです。「え、くっそ、)

あけてみようか」これは斎藤君です。「え、クッソ、

(やっちまえ」おおのくんがやけくそのようにどなり)

やっちまえ」大野君がやけくそのようにどなり

(ながら、おそろしいいきおいでまっさきにたるのそばへ、)

ながら、恐ろしい勢いで真っ先にタルのそばへ、

(とんでいきました。そして、あとのふたりのても)

とんで行きました。そして、あとの二人の手も

(かりず、りょうてでたるにだきつくと、いきなりそれを)

借りず、両手でタルに抱きつくと、いきなりそれを

(よこだおしにころがしてしまいました。そのひょうしにぱっと)

横倒しに転がしてしまいました。 その拍子にパッと

(たるのふたがとれ、ゆかにおちたしょくだいのろうそくが)

タルのフタが取れ、床に落ちた燭台のロウソクが

(めらめらといようにかがやいたかとおもうと、そのあかちゃけた)

メラメラと異様に輝いたかと思うと、その赤茶けた

(ひかりにてらされて、たるのなかからむすうのあおぐろいひもの)

光に照らされて、タルの中から無数の青黒いヒモの

(ようなものがもつれながら、ゆかにこぼれおちてくるのが)

ような物がもつれながら、床にこぼれ落ちてくるのが

(みえました。たいじくんだとばかりおもいこんでいた)

見えました。 泰二君だとばかり思いこんでいた

(さんにんは、いがいなたるのなかみに、しばらくあっけに)

三人は、意外なタルの中身に、しばらくあっけに

(とられてめをぱちぱちさせていましたが、)

とられて目をパチパチさせていましたが、

(やがて、そのあおぐろいひものようなもののしょうたいが)

やがて、その青黒いヒモのような物の正体が

(わかると、こんどはべつのおどろきとおそろしさにまっさおに)

分かると、今度は別の驚きと恐ろしさに真っ青に

(なって、ふるえあがらないではいられませんでした。)

なって、震えあがらないではいられませんでした。

(それは、たがいにもつれあった、なんびゃっぴきともしれない)

それは、互いにもつれあった、何百匹ともしれない

(へびだったのです。だいしょうむすうのへびは、たるから)

ヘビだったのです。大小無数のヘビは、タルから

(こぼれおちると、ろうそくのひかりにうろこを)

こぼれ落ちると、ロウソクの光にウロコを

(ぎらぎらとひからせながら、うえためをうすきみわるく)

ギラギラと光らせながら、飢えた目を薄気味悪く

(かがやかせ、あかぐろいほのおのようなしたをちろちろとだして、)

輝かせ、赤黒い炎のような舌をチロチロと出して、

(えものをさがすように、ゆかのうえをはいまわりはじめました。)

獲物を探すように、床の上を這い回り始めました。

(それがつぎからつぎへと、たるのなかからあふれでてくる)

それが次から次へと、タルの中からあふれ出て来る

(のですから、みるみるちかしついっぱいにひろがり、)

のですから、みるみる地下室一杯に広がり、

(こんくりーとのゆかもみえないほど、ぬめぬめと)

コンクリートの床も見えないほど、ヌメヌメと

(うねるなみにおおわれてしまいました。さんにんのしょうねんは、)

うねる波におおわれてしまいました。 三人の少年は、

(いっぴきやにひきのへびをこわがるほどのよわむしではありません)

一匹や二匹のヘビを怖がるほどの弱虫ではありません

(が、これほどのおびただしいへびをみては、)

が、これほどのおびただしいヘビを見ては、

(おそろしさにふるえあがらないではいられませんでした。)

恐ろしさに震えあがらないではいられませんでした。

(へびのこないほうへと、さんにんひとかたまりにみを)

ヘビの来ないほうへと、三人ひとかたまりに身を

(よけて、ついにちかしつのいっぽうのすみにおしつめられて)

よけて、ついに地下室の一方の隅に押し詰められて

(しまいましたが、へびどもはしょうねんたちをえじきとでも)

しまいましたが、ヘビ共は少年たちを餌食とでも

(おもっているのか、おそろしいくびをそろえて、あかぐろいしたを)

思っているのか、恐ろしい首をそろえて、赤黒い舌を

(だし、しんぐんでもするようにおそいかかってくるのです。)

出し、進軍でもするように襲いかかって来るのです。

(さんにんのしょうねんはそのいきおいのものすごさに、もうにげるばしょも)

三人の少年はその勢いの物凄さに、もう逃げる場所も

(ないちかしつのすみで、たがいにだきあうようにして、)

ない地下室の隅で、互いに抱き合うようにして、

(とうとうひめいをあげないではいられませんでした。)

とうとう悲鳴をあげないではいられませんでした。

(ああ、ひるたはかせは、なんというざんこくなあくにん)

ああ、ヒルタ博士は、なんという残酷な悪人

(でしょう。あいかわたいじくんをあんなめにあわせただけで)

でしょう。相川泰二君をあんな目にあわせただけで

(まんぞくせず、またしてもさんにんのしょうねんを、へびやしきへ)

満足せず、またしても三人の少年を、ヘビ屋敷へ

(とじこめてしまったのです。あいかわくんのばあいは、)

閉じこめてしまったのです。 相川君の場合は、

(そのもくてきがちゃんとわかっていましたが、)

その目的がちゃんと分かっていましたが、

(このさんにんのしょうねんにはかせはいったい、なんのうらみがあるという)

この三人の少年に博士は一体、何の恨みがあるという

(のでしょう。そして、こんなめにあわせたうえ、)

のでしょう。そして、こんな目にあわせた上、

(こんどはどんなあくじをたくらもうというのでしょう。)

今度はどんな悪事をたくらもうというのでしょう。

(ひるたはかせのやりくちは、まったくふかかいというほかは)

ヒルタ博士のやり口は、まったく不可解という他は

(ありません。しかしどくしゃしょくん、そのふかかいなしぐさの)

ありません。しかし読者諸君、その不可解な仕草の

(うらにこそ、このはんざいのふかいひみつがかくされているのかも)

裏にこそ、この犯罪の深い秘密が隠されているのかも

(しれません。ああ、ひるたはかせとは、そもそもなにもの)

しれません。ああ、ヒルタ博士とは、そもそも何者

(なのでしょうか。)

なのでしょうか。

(「ふたりたんてい」)

「二人探偵」

(あいかわたいじしょうねんがゆうかいされ、たいじくんのおとうさんのたいせつな)

相川泰二少年が誘拐され、泰二君のお父さんの大切な

(きみつしょるいがぬすみさられたうえに、こんどはたいじくんの)

機密書類が盗み去られた上に、今度は泰二君の

(がくゆうであるおおのくん、さいとうくん、うえむらくんのさんにんのしょうねん)

学友である大野君、斎藤君、上村君の三人の少年

(までがゆくえふめいになってしまったのですから、)

までが行方不明になってしまったのですから、

(おとうさんとおかあさんたちのしんぱいはもうすまでもなく、)

お父さんとお母さんたちの心配は申すまでもなく、

(がっこうでもおおさわぎになり、けいさつははんにんそうさのために)

学校でも大騒ぎになり、警察は犯人捜査のために

(だいかつどうをはじめました。しんぶんはそのきじを、よにんの)

大活動を始めました。新聞はその記事を、四人の

(しょうねんのしゃしんいりで、おおきくかきたてました。)

少年の写真入りで、大きく書きたてました。

(せけんはいま、このだいじけんのうわさでもちきっている)

世間は今、この大事件のウワサで持ちきっている

(ありさまです。そのなかでもいちばんこころをいためていたのは、)

有り様です。その中でも一番心を痛めていたのは、

(あいかわたいじくんのおとうさんでした。)

相川泰二君のお父さんでした。

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