魯迅 阿Q正伝その28

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(「かくめいだぞ。てめえしっているか」とあきゅうはくちごもった。)

「革命だぞ。てめえ知っているか」と阿Qは口籠った。

(「かくめい、かくめいとおいいだが、かくめいはいっぺんすんだよ。)

「革命、革命とお言いだが、革命は一遍済んだよ。

(おまえたちはなんだってそんなさわぎをするんだえ」)

お前達は何だってそんな騒ぎをするんだえ」

(あまはめのふちをあかくしながらいった。)

尼は眼のふちを赤くしながら言った。

(「なんだと?」あきゅうはいぶかった。)

「何だと?」阿Qは訝った。

(「おまえはまだしらないのだね。あのひとたちはもうかくめいをすましたよ」)

「お前はまだ知らないのだね。あの人達はもう革命を済ましたよ」

(「だれだ?」あきゅうはさらにいぶかった。)

「誰だ?」阿Qは更に訝った。

(「しゅうさいとにせけとうさ」)

「秀才と偽毛唐さ」

(あきゅうはいがいのことにぶっつかってわけもなくめんくらった。)

阿Qは意外のことにぶっつかってわけもなく面喰った。

(あまはかれのでばなをへしおってすかさずもんをしめた。)

尼は彼の出鼻をへし折って隙さず門を閉めた。

(あきゅうはすぐにおしかえしたがかたくしまっていた。)

阿Qはすぐに押し返したが固く締っていた。

(もういちどたたいてみたがへんじもしない。)

もう一度叩いてみたが返辞もしない。

(これもやっぱりそのひのごぜんちゅうのできごとだった。)

これもやっぱりその日の午前中の出来事だった。

(きをみるにびんなるちょうしゅうさいはかくめいとうがじょうないにはいったときいて、)

機を見るに敏なる趙秀才は革命党が城内に入ったと聞いて、

(すぐにべんつをあたまのうえにまきこみ、)

すぐに辮子を頭の上に巻き込み、

(いままでずっとなかわるでとおしたあのせんけとうのところへごきげんうかがいにいった。)

今までずっと仲悪で通したあの錢毛唐の処へ御機嫌伺いに行った。

(これは「みなともこれあらたなり」のときであるから、)

これは「みなともに維れ新たなり」の時であるから、

(かれらははなしがはずんでたちどころにじょういとうごうのどうしとなり、)

彼等は話が弾んで立ちどころに情意投合の同志となり、

(たがいにあいやくしてかくめいにとうじた。)

互に相約して革命に投じた。

(かれらはいろいろおもいまわして、やっとおもいだしたのは)

彼等はいろいろ想い廻して、やっと想い出したのは

など

(せいしゅうあんのなかの「こうていばんざい、ばんざい!」のひとつのりゅうはいだ。)

靜修庵の中の「皇帝万歳、万歳!」の一つの竜牌だ。

(これこそすぐにもかくてきすべきものだとおもったから、)

これこそすぐにも革擲すべきものだと思ったから、

(ふたりはときをうつさずせいしゅうあんにゆくと、おいたるあまがじゃまをしたので、)

二人は時を移さず靜修庵に行くと、老いたる尼が邪魔をしたので、

(かれらはあまをまんしゅうせいふとみなし、あたまのうえにすくなからざるこんぼうとてっけんをくわえた。)

彼等は尼を満州政府と見做し、頭の上に少からざる棍棒と鉄拳を加えた。

(あまはかれらがかえったあとできをしずめてよくみると、)

尼は彼等が帰ったあとで気を静めてよく見ると、

(りゅうはいはすでにくだけてちじょうによこたわっているのはもっともだが、)

竜牌は已に砕けて地上に横たわっているのはもっともだが、

(かんのんさまのまえにあったひとつのせんとくろがみあたらないのがふしぎだ。)

観音様の前にあった一つの宣徳炉が見当らないのが不思議だ。

(あきゅうはあとでこのことをきいてすこぶるじぶんのあさねぼうをくやんだ。)

阿Qはあとでこの事を聞いてすこぶる自分の朝寝坊を悔んだ。

(それにしてもかれらがあきゅうをさそわなかったのはきっかいせんばんである。)

それにしても彼等が阿Qを誘わなかったのは奇ッ怪千万である。

(あきゅうはいっぽしりぞいてかんがえた。)

阿Qは一歩退いて考えた。

(「かれらが、いままでしらずにいるはずはない。)

「彼等が、今まで知らずにいるはずはない。

(あきゅうはすでにかくめいとうにとうじているのじゃないか」)

阿Qは已に革命党に投じているのじゃないか」

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