魯迅 故郷その6
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問題文
(わたしはひじょうにこうふんしてなんといっていいやら)
わたしは非常に興奮して何と言っていいやら
(「あ、じゅうどさん、よくきてくれた」とまずくちをきって、)
「あ、閏土さん、よく来てくれた」 とまず口を切って、
(つづいてれんじゅのごとくわきだすはなし、つのどり、とびうお、かいがら、もぐら、)
続いて連珠の如く湧き出す話、角鶏、飛魚、貝殻、土竜、
(けれどけっきょくなにかにひかれたようなぐあいになって、)
けれど結局何かに弾かれたような具合になって、
(ただあたまのなかをぐるぐるまわっているだけでことばにすることができない。)
ただ頭の中をぐるぐる廻っているだけで言葉にすることが出来ない。
(かれはのそりとたっていた。かおのうえにはよろこびとさびしさをあらわし、)
彼はノソリと立っていた。顔の上には喜びと淋しさを表し、
(くちびるはうごかしているがこえがでない。かれのたいどはけっきょくうやまいたてまつるのであった。)
唇は動かしているが声が出ない。彼の態度は結局敬い奉るのであった。
(「だんなさま」とひとつはっきりいった。)
「旦那様」と一つハッキリ言った。
(わたしはぞっとしてみぶるいがでそうになった。)
わたしはぞっとして身ぶるいが出そうになった。
(なるほどわたしどものあいだにはもはやかなしむべきへだてができたのかとおもうと、)
なるほどわたしどもの間にはもはや悲しむべき隔てが出来たのかと思うと、
(わたしはもうはなしもできない。かれはあたまをうしろにむけ)
わたしはもう話も出来ない。彼は頭を後ろに向け
(「すいせいや、だんなさまにおじぎをしなさい」)
「水生や、旦那様にお辞儀をしなさい」
(とせなかにかくれているこどもをひきだした。)
と背中に隠れている子供を引き出した。
(これはちょうどさんじゅうねんまえのじゅうどとおなじようなものであるが、)
これはちょうど三十年前の閏土と同じような者であるが、
(それよりずっとやせきばんでくびのまわりにぎんのわがない。)
それよりずっと痩せ黄ばんで頸のまわりに銀の輪がない。
(「これはごばんめのせがれですが、)
「これは五番目の倅ですが、
(ひとさまのまえにでたことがありませんから、はにかんでこまります」)
人様の前に出たことがありませんから、はにかんで困ります」
(はははこうじをつれてにかいからおりてきた。)
母は宏兒を連れて二階から下りて来た。
(おおかたわれわれのはなしごえをききつけてきたのだろう。)
大方われわれの話し声を聞きつけて来たのだろう。
(じゅうどはていねいにあたまをさげて)
閏土は丁寧に頭を下げて
(「おおおくさま、おてがみをありがたくちょうだいいたしました。)
「大奥様、お手紙を有難く頂戴致しました。
(わたしはだんなさまがおかえりになるときいて、)
わたしは旦那様がお帰りになると聞いて、
(なにしろはあこんなうれしいことはございません」)
何しろハアこんな嬉しいことは御座いません」
(「まあおまえはなぜそんなえんりょぶかくしているの、)
「まあお前はなぜそんな遠慮深くしているの、
(まえはまるできょうだいのようにしていたじゃないか。)
前はまるで兄弟のようにしていたじゃないか。
(やっぱりむかしのようにじんちゃんとおいいよ」)
やっぱり昔のように迅ちゃんとお言いよ」
(ははおやはいいきげんであった。)
母親はいい機嫌であった。
(「おくさん、いまはそんなわけにはゆきません。)
「奥さん、今はそんなわけにはゆきません。
(あのじぶんはこどものことでなにもかもわかりませんでしたが」)
あの時分は子供のことで何もかも解りませんでしたが」
(じゅうどはそういいながらこどもをまえにひきだしておじぎをさせようとしたが、)
閏土はそう言いながら子供を前に引き出してお辞儀をさせようとしたが、
(こどもははずかしがってせなかにこびりついてはなれない。)
子供は恥ずかしがって背中にこびりついて離れない。
(「そのこはすいせいだね。ごばんめかえ。)
「その子は水生だね。五番目かえ。
(みんなうぶだからこわがるのはあたりまえだよ。こうじがちょうどいいあいてだ。)
みんなうぶだから怖がるのは当り前だよ。宏兒がちょうどいい相手だ。
(さあおまえさんたちはむこうへいっておあそび」)
さあお前さん達は向うへ行ってお遊び」
(こうじはこのはなしをきくとすぐにすいせいをさしまねいた。)
宏兒はこの話を聞くとすぐに水生をさし招いた。
(すいせいはにわかにげんきづいていっしょになってかけだしていった。)
水生は俄に元気づいて一緒になって駆け出して行った。
(はははじゅうどにせきをすすめた。かれはしばらくためらってついにせきについた。)
母は閏土に席をすすめた。彼はしばらくためらって遂に席に着いた。
(ながぎせるをてーぶるのがわによせかけ、ひとつのかみづつみをもちだした。)
長煙管を卓の側に寄せ掛け、一つの紙包を持出した。
(「ふゆのことでなにもございませんが、)
「冬のことで何も御座いませんが、
(このあおまめはうちのにわでかわかしたものです。だんなさまにさしあげてください」)
この青豆はうちの庭で乾かしたものです。旦那様に差し上げて下さい」
(わたしはかれにくらしむきのことをたずねると、かれはくびをふった。)
わたしは彼に暮らし向きのことを訊ねると、彼は首を振った。