半七捕物帳 勘平の死15

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岡本綺堂 半七捕物帳シリーズ 第三話
順位 名前 スコア 称号 打鍵/秒 正誤率 時間(秒) 打鍵数 ミス 問題 日付
1 kkk4015 4955 B 5.0 97.4% 434.9 2212 57 34 2024/10/12

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問題文

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(「くびをくくるか、かわへはいるか、いずれもそんなことだろうとおもっていました」)

「首を縊るか、川へはいるか、いずれもそんなことだろうと思っていました」

(と、はんしちはためいきをついた。「さっきやまとやのだんなからいろいろのおはなしを)

と、半七は溜息をついた。「さっき大和屋の旦那からいろいろのお話しを

(うかがっているうちに、わかだんなとおふゆどんのことがみみにとまりました。それから)

伺っているうちに、若旦那とお冬どんのことが耳に止まりました。それから

(しばいのときにわかだんなとおなじへやにいたというわきちのことがきになりました。)

芝居のときに若旦那と同じ部屋にいたという和吉のことが気になりました。

(わかだんなとおふゆどんとわきちと、このさんにんをむすびつけると、どうしてもなにかいろこいの)

若旦那とお冬どんと和吉と、この三人を結びつけると、どうしても何か色恋の

(もつれがあるらしくおもわれましたから、まずおふゆどんにあってそれとなく)

もつれがあるらしく思われましたから、まずお冬どんに逢ってそれとなく

(きいてみますと、わきちがしんせつにたびたびみまいにきてくれるという。)

訊いて見ますと、和吉が親切にたびたび見舞に来てくれるという。

(いよいよおかしいとおもいましたから、みせへいってわざときけがしに)

いよいよおかしいと思いましたから、店へ行ってわざと聞けがしに

(どなりました。やまとやのだんなはさぞらんぼうなやつだとおぼしめしたでしょうが、)

呶鳴りました。大和屋の旦那はさぞ乱暴なやつだと思し召したでしょうが、

(しょうじきのところ、わたくしはみせのためをおもいましたので・・・・・・。わたしがあいつを)

正直のところ、わたくしは店のためを思いましたので……。私が彼奴を

(しばっていくのはぞうさもありませんが、あいつがじゅろうしてぎんみをうける。)

縛って行くのは雑作もありませんが、あいつが入牢して吟味をうける。

(きょうじょうがきまってえどじゅうをひきまわしになる。ぎんみちゅうもいろいろのひきあいで)

兇状が決まって江戸じゅうを引き廻しになる。吟味中もいろいろの引き合いで

(こちらがごめいわくをなさるでしょうし、だいいちここのおたなからひきまわしのとがにんが)

こちらが御迷惑をなさるでしょうし、第一ここのお店から引き廻しの科人が

(でたといわれちゃあ、おたなののれんにきずがつきましょうし、しぜんこれからの)

出たと云われちゃあ、お店の暖簾に疵が付きましょうし、自然これからの

(ごしょうばいにもさわるだろうからとぞんじましたから、どうかしてあいつをなわつきに)

御商売にも障るだろうからと存じましたから、どうかして彼奴を縄付きに

(したくない。あいつとてもひきまわしやはりつけになるよりも、いっそひとおもいに)

したくない。あいつとても引き廻しや磔刑になるよりも、いっそ一と思いに

(じめつしたほうがましだろうとおもいましたので、わざとああいっておどかして)

自滅した方がましだろうと思いましたので、わざとああ云って嚇かして

(やったんです。もうひとつには、わたくしもたしかにあいつとみきわめるほどの)

やったんです。もう一つには、わたくしも確かに彼奴と見極めるほどの

(りっぱなしょうこをにぎってはいないんですから、まあてさぐりながらむやみにあんなことを)

立派な証拠を握ってはいないんですから、まあ手探りながら無暗にあんなことを

(いってみたんで・・・・・・。もし、まったくほんにんになんのおぼえもないことならば、)

云って見たんで……。もし、まったく本人に何の覚えもないことならば、

など

(ほかのひとたちとおなじようにただききながしてしまうでしょうし、もしおぼえのある)

ほかの人達と同じように唯聞き流してしまうでしょうし、もし覚えのある

(ことならば、とてもじっとしてはいられまいと、こうおもったのがうまく)

ことならば、とてもじっとしてはいられまいと、こう思ったのが巧く

(ずにあたって、あいつもとうとうかくごをきめたんです。くわしいことは)

図にあたって、あいつもとうとう覚悟を決めたんです。詳しいことは

(おふゆどんからおききください」 さんにんはつばをのんできいていた。)

お冬どんからお聴きください」 三人は唾を嚥んで聴いていた。

(「はんしちさん。いや、おそれいりました」と、じゅうえもんはまずくちをきった。)

「半七さん。いや、恐れ入りました」と、十右衛門は先ず口を切った。

(「とがにんをしばるのがおまえさんのおやくでありながら、じぶんのてがらをすてて)

「科人を縛るのがお前さんのお役でありながら、自分の手柄を捨てて

(このいえののれんにきずをつけまいとしてくだすった。そのおれいはなんともうしていいか、)

この家の暖簾に疵を付けまいとして下すった。そのお礼はなんと申していいか、

(それにあまえてもうひとつのおねがいは、どうかこれをおもてむきにしないで、)

それに甘えてもう一つのお願いは、どうかこれを表向きにしないで、

(わきちはあくまでもらんしんということにして・・・・・・」)

和吉は飽くまでも乱心ということにして……」

(「よろしゅうございます。おやごさんやごしんるいのみになったら、さかはりつけにしても)

「よろしゅうございます。親御さんや御親類の身になったら、逆磔刑にしても

(あきたらねえとおぼしめすでもございましょうが、どんなにむごいしおきを)

飽き足らねえと思し召すでもございましょうが、どんなにむごい仕置きを

(したからといって、しんだわかだんながかえるというわけでもございませんから、)

したからと云って、死んだ若旦那が返るという訳でもございませんから、

(これもなにかのいんねんとおぼしめして、わきちのあとしまつはまあいいようにやって)

これも何かの因縁と思召して、和吉の後始末はまあ好いようにやって

(くださいまし」 「かさねがさねありがとうございます」)

下さいまし」 「重ね重ねありがとうございます」

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