「こころ」1-22 夏目漱石
順位 | 名前 | スコア | 称号 | 打鍵/秒 | 正誤率 | 時間(秒) | 打鍵数 | ミス | 問題 | 日付 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | ヌル | 5677 | A | 6.1 | 92.7% | 311.4 | 1919 | 151 | 35 | 2024/09/26 |
2 | どんぐり | 5626 | A | 6.1 | 92.5% | 316.9 | 1939 | 156 | 35 | 2024/10/03 |
3 | mame | 5301 | B++ | 5.5 | 95.8% | 348.6 | 1931 | 83 | 35 | 2024/11/03 |
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問題文
(せんせいとわたくしとははくぶつかんのうらからうぐいすだにのほうがくにしずかなほちょうであるいていった。)
先生と私とは博物館の裏から鶯渓の方角に静かな歩調で歩いて行った。
(かきのすきまからひろいにわのいちぶにしげるくまざさがゆうすいにみえた。)
垣の隙間から広い庭の一部に茂る熊笹が幽邃に見えた。
(「きみはわたしがなぜまいげつぞうしがやのぼちにうまっているゆうじんのはかへまいるのか)
「君は私がなぜ毎月雑司ヶ谷の墓地に埋っている友人の墓へ参るのか
(しっていますか」)
知っていますか」
(せんせいのこのといはまったくとつぜんであった。)
先生のこの問いは全く突然であった。
(しかもせんせいはわたくしがこのといにたいしてこたえられないということもよくしょうちしていた。)
しかも先生は私がこの問いに対して答えられないという事もよく承知していた。
(わたくしはしばらくへんじをしなかった。)
私はしばらく返事をしなかった。
(するとせんせいははじめてきがついたようにこういった。)
すると先生は始めて気が付いたようにこういった。
(「またわるいことをいった。じらせるのがわるいとおもって、せつめいしようとすると、)
「また悪い事をいった。焦慮せるのが悪いと思って、説明しようとすると、
(そのせつめいがまたあなたをじらせるようなけっかになる。)
その説明がまたあなたを焦慮せるような結果になる。
(どうもしかたがない。このもんだいはこれでやめましょう。)
どうも仕方がない。この問題はこれで止めましょう。
(とにかくこいはざいあくですよ、よござんすか。そうしてしんせいなものですよ」)
とにかく恋は罪悪ですよ、よござんすか。そうして神聖なものですよ」
(わたくしにはせんせいのはなしがますますわからなくなった。)
私には先生の話がますます解らなくなった。
(しかしせんせいはそれぎりこいをくちにしなかった。)
しかし先生はそれぎり恋を口にしなかった。
(としのわかいわたくしはややともするといちずになりやすかった。)
年の若い私はややともすると一図になりやすかった。
(すくなくともせんせいのめにはそううつっていたらしい。)
少なくとも先生の眼にはそう映っていたらしい。
(わたくしにはがっこうのこうぎよりもせんせいのだんわのほうがゆうえきなのであった。)
私には学校の講義よりも先生の談話の方が有益なのであった。
(きょうじゅのいけんよりもせんせいのしそうのほうがありがたいのであった。)
教授の意見よりも先生の思想の方が有難いのであった。
(とどのつまりをいえば、きょうだんにたってわたくしをしどうしてくれるえらいひとびとよりも)
とどの詰まりをいえば、教壇に立って私を指導してくれる偉い人々よりも
(ただひとりをまもっておおくをかたらないせんせいのほうがえらくみえたのであった。)
ただ独りを守って多くを語らない先生の方が偉く見えたのであった。
(「あんまりのぼせちゃいけません」とせんせいがいった。)
「あんまり逆上ちゃいけません」と先生がいった。
(「さめたけっかとしてそうおもうんです」とこたえたときのわたくしには)
「覚めた結果としてそう思うんです」と答えた時の私には
(じゅうぶんのじしんがあった。そのじしんをせんせいはうけがってくれなかった。)
充分の自信があった。その自信を先生は肯がってくれなかった。
(「あなたはねつにうかされているのです。ねつがさめるといやになります。)
「あなたは熱に浮かされているのです。熱がさめると厭になります。
(わたしはいまのあなたからそれほどにおもわれるのを、くるしくかんじています。)
私は今のあなたからそれほどに思われるのを、苦しく感じています。
(しかしこれからさきのあなたにおこるべきへんかをよそうしてみると、)
しかしこれから先のあなたに起るべき変化を予想して見ると、
(なおくるしくなります」)
なお苦しくなります」
(「わたくしはそれほどけいはくにおもわれているんですか。それほどふしんようなんですか」)
「私はそれほど軽薄に思われているんですか。それほど不信用なんですか」
(「わたしはおきのどくにおもうのです」)
「私はお気の毒に思うのです」
(「きのどくだがしんようされないとおっしゃるんですか」)
「気の毒だが信用されないとおっしゃるんですか」
(せんせいはめいわくそうににわのほうをむいた。そのにわに、このあいだまでおもそうな)
先生は迷惑そうに庭の方を向いた。その庭に、この間まで重そうな
(あかいつよいいろをぽたぽたてんじていたつばきのはなはもうひとつもみえなかった。)
赤い強い色をぽたぽた点じていた椿の花はもう一つも見えなかった。
(せんせいはざしきからこのつばきのはなをよくながめるくせがあった。)
先生は座敷からこの椿の花をよく眺める癖があった。
(「しんようしないって、とくにあなたをしんようしないんじゃない。)
「信用しないって、特にあなたを信用しないんじゃない。
(にんげんぜんたいをしんようしないんです」)
人間全体を信用しないんです」