「こころ」1-34 夏目漱石

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(上)先生と私
順位 名前 スコア 称号 打鍵/秒 正誤率 時間(秒) 打鍵数 ミス 問題 日付
1 どんぐり 5910 A+ 6.3 93.1% 255.8 1633 121 31 2024/10/14
2 ぽむぽむ 5454 B++ 5.7 94.8% 284.7 1642 89 31 2024/10/10
3 mame 5348 B++ 5.6 94.3% 286.6 1630 97 31 2024/11/10

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問題文

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(ふゆがきたとき、わたくしはぐうぜんくにへかえらなければならないことになった。)

冬が来た時、私は偶然国へ帰らなければならない事になった。

(わたくしのははからうけとったてがみのなかに、ちちのびょうきのけいかが)

私の母から受け取った手紙の中に、父の病気の経過が

(おもしろくないようすをかいて、いまがいまというしんぱいもあるまいが、)

面白くない様子を書いて、今が今という心配もあるまいが、

(としがとしだから、できるならつごうしてかえってきてくれと)

年が年だから、できるなら都合して帰って来てくれと

(たのむようにつけたしてあった。)

頼むように付け足してあった。

(ちちはかねてからじんぞうをやんでいた。)

父はかねてから腎臓を病んでいた。

(ちゅうねんいこうのひとにしばしばみるとおり、ちちのこのやまいはまんせいであった。)

中年以降の人にしばしば見る通り、父のこの病は慢性であった。

(そのかわりようじんさえしていればきゅうへんのないものと)

その代り要人さえしていれば急変のないものと

(とうにんもかぞくのものもしんじてうたがわなかった。)

当人も家族のものも信じて疑わなかった。

(げんにちちはようじょうのおかげひとつで、こんにちまでどうかこうか)

現に父は養生のお蔭一つで、今日までどうかこうか

(しのいできたようにきゃくがくるとふいちょうしていた。)

凌いで来たように客が来ると吹聴していた。

(そのちちが、ははのしょしんによると、にわへでてなにかしているはずみに)

その父が、母の書信によると、庭へ出て何かしている機に

(とつぜんめまいがしてひっくりかえった。)

突然眩暈がして引ッ繰り返った。

(かないのものはけいしょうののういっけつとおもいちがえて、すぐそのてあてをした。)

家内のものは軽症の脳溢血と思い違えて、すぐその手当をした。

(あとでいしゃからどうもそうではないらしい、やはりじびょうのけっかだろうという)

後で医者からどうもそうではないらしい、やはり持病の結果だろうという

(はんだんをえて、はじめてそっとうとじんぞうびょうとをむすびつけてかんがえるように)

判断を得て、始めて卒倒と腎臓病とを結び付けて考えるように

(なったのである。)

なったのである。

(ふゆやすみがくるにはまだすこしまがあった。)

冬休みが来るにはまだ少し間があった。

(わたくしはがっきのおわりまでまっていてもさしつかえあるまいとおもって)

私は学期の終りまで待っていても差支えあるまいと思って

(いちにちふつかそのままにしておいた。)

一日二日そのままにしておいた。

など

(するとそのいちにちふつかのまに、ちちのねているようすだの、)

するとその一日二日の間に、父の寝ている様子だの、

(ははのしんぱいしているかおだのがときどきめにうかんだ。)

母の心配している顔だのが時々眼に浮かんだ。

(そのたびにいっしゅのこころぐるしさをなめたわたくしは、とうとうかえるけっしんをした。)

そのたびに一種の心苦しさを嘗めた私は、とうとう帰る決心をした。

(くにからりょひをおくらせるてかずとじかんをはぶくため、わたくしはいとまごいかたがた)

国から旅費を送らせる手数と時間を省くため、私は暇乞いかたがた

(せんせいのところへいって、いるだけのかねをいちじたてかえてもらうことにした。)

先生の所へ行って、要るだけの金を一時立て替えてもらう事にした。

(せんせいはすこしかぜのきみで、ざしきへでるのがおっくうだといって、)

先生は少し風邪の気味で、座敷へ出るのが億劫だといって、

(わたくしをそのしょさいにとおした。)

私をその書斎に通した。

(しょさいのがらすどからふゆにいってまれにみるようななつかしいやわらかなにっこうが)

書斎の硝子戸から冬に入って稀に見るような懐かしい和らかな日光が

(つくえかけのうえにさしていた。)

机掛けの上に射していた。

(せんせいはこのひあたりのいいへやのなかへおおきなひばちをおいて、)

先生はこの日あたりの好い室の中へ大きな火鉢を置いて、

(ごとくのうえにかけたかなだらいからたちあがるゆげで、いきのくるしくなるのをふせいでいた。)

五徳の上に懸けた金盥から立ち上る湯気で、呼吸の苦しくなるのを防いでいた。

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