「こころ」1-44 夏目漱石

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(上)先生と私
順位 名前 スコア 称号 打鍵/秒 正誤率 時間(秒) 打鍵数 ミス 問題 日付
1 どんぐり 5891 A+ 6.3 93.1% 286.7 1823 134 37 2024/10/26
2 ぽむぽむ 5419 B++ 5.6 95.8% 325.7 1844 79 37 2024/10/18
3 たれ 5364 B++ 5.5 96.9% 340.2 1884 59 37 2024/10/16
4 mame 5086 B+ 5.4 94.0% 334.6 1817 115 37 2024/11/10

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問題文

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(せんせいはへいぜいからむしろしっそななりをしていた。)

先生は平生からむしろ質素な服装をしていた。

(それにかないはこにんずであった。したがってじゅうたくもけっしてひろくはなかった。)

それに家内は少人数であった。したがって住宅も決して広くはなかった。

(けれどもそのせいかつのぶっしつてきにゆたかなことは、うちわにはいりこまないわたくしのめにさえ)

けれどもその生活の物質的に豊かな事は、内輪にはいり込まない私の眼にさえ

(あきらかであった。)

明らかであった。

(ようするにせんせいのくらしはぜいたくとはいえないまでも、)

要するに先生の暮しは贅沢とはいえないまでも、

(あたじけなくきりつめたむだんりょくせいのものではなかった。)

あたじけなく切り詰めた無弾力性のものではなかった。

(「そうでしょう」とわたくしがいった。)

「そうでしょう」と私がいった。

(「そりゃそのくらいのかねはあるさ、けれどもけっしてざいさんかじゃありません。)

「そりゃそのくらいの金はあるさ、けれども決して財産家じゃありません。

(ざいさんかならもっとおおきなうちでもつくるさ」)

財産家ならもっと大きな家でも造るさ」

(このときせんせいはおきあがって、えんだいのうえにあぐらをかいていたが、)

この時先生は起き上がって、縁台の上に胡坐をかいていたが、

(こういいおわると、たけのつえのさきでじめんのうえへえんのようなものをかきはじめた。)

こういい終ると、竹の杖の先で地面の上へ円のようなものを描き始めた。

(それがすむと、こんどはすてっきをつきさすようにまっすぐにたてた。)

それが済むと、今度はステッキを突き刺すように真直に立てた。

(「これでももとはざいさんかなんだがなあ」)

「これでも元は財産家なんだがなあ」

(せんせいのことばははんぶんひとりごとのようであった。)

先生の言葉は半分独り言のようであった。

(それですぐあとについていきそこなったわたくしは、ついだまっていた。)

それですぐ後に尾いて行き損なった私は、つい黙っていた。

(「これでももとはざいさんかなんですよ、きみ」)

「これでも元は財産家なんですよ、君」

(といいなおしたせんせいは、つぎにわたくしのかおをみてびしょうした。)

といい直した先生は、次に私の顔を見て微笑した。

(わたくしはそれでもなんともこたえなかった。)

私はそれでも何とも答えなかった。

(むしろぶちょうほうでこたえられなかったのである。)

むしろ不調法で答えられなかったのである。

(するとせんせいがまたもんだいをよそへうつした。)

すると先生がまた問題を他へ移した。

など

(「あなたのおとうさんのびょうきはそのごどうなりました」)

「あなたのお父さんの病気はその後どうなりました」

(わたくしはちちのびょうきについてしょうがついごなんにもしらなかった。)

私は父の病気について正月以後何にも知らなかった。

(つきづきくにからおくってくれるかわせとともにくるかんたんなてがみは、)

月々国から送ってくれる為替と共に来る簡単な手紙は、

(れいのとおりちちのしゅせきであったが、びょうきのうったえはそのうちにはほとんど)

例の通り父の手蹟であったが、病気の訴えはそのうちにはほとんど

(みあたらなかった。)

見当たらなかった。

(そのうえしょたいもたしかであった。)

その上書体も確かであった。

(このしゅのびょうにんにみるふるえがすこしもふでのはこびをみだしていなかった。)

この種の病人に見る震えが少しも筆の運びを乱していなかった。

(「なんともいってきませんが、もういいんでしょう」)

「何ともいって来ませんが、もう好いんでしょう」

(「よければけっこうだが、ーーびょうしょうがびょうしょうなんだからね」)

「好ければ結構だが、ーー病症が病症なんだからね」

(「やっぱりだめですかね。でもとうぶんはもちあってるんでしょう。)

「やっぱり駄目ですかね。でも当分は持ち合ってるんでしょう。

(なんともいってきませんよ」)

何ともいって来ませんよ」

(「そうですか」)

「そうですか」

(わたくしはせんせいがわたくしのうちのざいさんをきいたり、わたくしのちちのびょうきをたずねたりするのを、)

私は先生が私のうちの財産を聞いたり、私の父の病気を尋ねたりするのを、

(ふつうのだんわーーむねにうかんだままをそのとおりくちにする、)

普通の談話ーー胸に浮かんだままをその通り口にする、

(ふつうのだんわとおもってきいていた。)

普通の談話と思って聞いていた。

(ところがせんせいのことばのそこにはりょうほうをむすびつけるおおきないみがあった。)

ところが先生の言葉の底には両方を結び付ける大きな意味があった。

(せんせいじしんのけいけんをもたないわたくしはむろんそこにきがつくはずがなかった。)

先生自身の経験を持たない私は無論そこに気が付くはずがなかった。

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