半七捕物帳 石燈籠10

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プレイ回数323難易度(4.5) 2849打 長文
岡本綺堂 半七捕物帳シリーズ 第二話
順位 名前 スコア 称号 打鍵/秒 正誤率 時間(秒) 打鍵数 ミス 問題 日付
1 すもさん 5913 A+ 6.1 96.5% 478.4 2933 104 53 2024/03/03
2 やまちやまちゃん 4591 C++ 4.6 98.3% 602.7 2815 48 53 2024/03/17

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問題文

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(「いいどきょうだな。おめえのいろにゃあすぎものだ」と、はんしちは)

「いい度胸だな。おめえの情婦(いろ)にゃあ過ぎ物だ」と、半七は

(にがわらいをした。「だが、しょうじきになにもかもよくいってくれた。)

苦笑いをした。「だが、正直に何もかもよく云ってくれた。

(おめえもとんだおんなにかわいがられたのがうんのつきだ。こりゅうはどうでごくもんだが、)

おめえも飛んだ女に可愛がられたのが運の尽きだ。小柳はどうで獄門だが、

(おめえのほうはいいとりしだいで、くびだけはつながるにそういねえ。)

おめえの方は云い取り次第で、首だけは繋がるに相違ねえ。

(まあ、あんしんしていろ」)

まあ、安心していろ」

(「どうぞおじひをねがいます。わたしはまったくいくじのないにんげんなんで、)

「どうぞ御慈悲を願います。わたしは全く意気地のない人間なんで、

(ゆうべもおちおちねられませんでした。あにいのかおをひとめみたときに、)

ゆうべもおちおち寝られませんでした。大哥(あにい)の顔を一と目見た時に、

(こりゃあもういけねえとおうじょうしてしまいました。あのおんなには)

こりゃあもういけねえと往生してしまいました。あの女には

(ぎりがわるいようですけれども、わたしのようなものはこうしてなにもかも)

義理がわるいようですけれども、私のような者はこうして何もかも

(すっかりはくじょうしてしまったほうが、むねがかるくなってかえってようございますよ」)

すっかり白状してしまった方が、胸が軽くなって却って好うございますよ」

(「じゃあきのどくだが、すぐにかんだのおやぶんのところまでいっしょにきてくれ。)

「じゃあ気の毒だが、すぐに神田の親分の所まで一緒に来てくれ。

(どのみち、とうぶんはしゃばはみられめえから、まあ、ゆっくり)

どの道、当分は娑婆(しゃば)は見られめえから、まあ、ゆっくり

(したくをしていくがいいや」 「ありがとうございます」)

支度をして行くがいいや」 「ありがとうございます」

(きんじはかさねてれいをいった。かれのめはいくじなくうるんでいた。)

金次は重ねて礼を云った。かれの眼は意気地なくうるんでいた。

(おたがいにわかいからだだ。こうおもうとはんしちは、じぶんのとりことなって)

おたがいに若い身体(からだ)だ。こう思うと半七は、自分のとりことなって

(ひかれていくこのよわよわしいわかいおとこがいじらしくてならなかった。)

牽(ひ)かれて行くこの弱々しい若い男がいじらしくてならなかった。

(はんしちのほうこくをきいて、おやぶんのきちごろうはかなすぎのはまでくじらをつかまえたほどに)

四 半七の報告を聴いて、親分の吉五郎は金杉の浜で鯨をつかまえたほどに

(おどろいた。)

驚いた。

(「いぬもあるけばぼうにあたるというが、てめえもうろうろしている)

「犬もあるけば棒にあたると云うが、手前(てめえ)もうろうろしている

(うちに、どえらいことをしやがったな。まだかけだしだとおもっていたら)

うちに、ど偉いことをしやがったな。まだ駈け出しだと思っていたら

など

(ゆだんのならねえやつだ。いい、いい、なにしろおおできだ。てめえのほねをぬすむような)

油断のならねえ奴だ。いい、いい、なにしろ大出来だ。てめえの骨を盗むような

(おれじゃあねえ。てめえのはたらきはみんなだんながたにもうしたててやるからそうおもえ。)

俺じゃあねえ。てめえの働きはみんな旦那方に申し立ててやるからそう思え。

(それにしても、そのこりゅうというやつをはやくひきあげてしまわなけりゃならねえ。)

それにしても、その小柳という奴を早く引き揚げてしまわなけりゃならねえ。

(おんなでもいけっぷてえやつだ。なにをするかしれねえから、だれかいって)

女でも生(い)けっぷてえ奴だ。なにをするか知れねえから、誰か行って

(はんしちをすけてやれ」)

半七を助(す)けてやれ」

(ものなれたてさきふたりがはんしちをさきにたててふたたびりょうごくへむかったのは、)

物馴れた手先ふたりが半七を先に立てて再び両国へむかったのは、

(みじかいふゆのひももうくれかかって、みせものごやがちょうどはねるころで)

短い冬の日ももう暮れかかって、見世物小屋がちょうど閉(は)ねる頃で

(あった。ふたりはそとにまっていて、はんしちだけがこやへはいると、)

あった。二人は外に待っていて、半七だけが小屋へはいると、

(こりゅうはがくやできものをきがえていた。)

小柳は楽屋で着物を着替えていた。

(「わたしはかんだのきちごろうのところからきたが、おやぶんがなにかようがあると)

「わたしは神田の吉五郎のところから来たが、親分がなにか用があると

(いうから、ごくろうだがちょっときてくんねえ」と、はんしちはなにげなしにいった。)

云うから、御苦労だがちょっと来てくんねえ」と、半七は何げなしに云った。

(こりゅうのかおにはくらいかげがさした。しかしあんがいおちついたたいどで)

小柳の顔には暗い影が翳(さ)した。しかし案外おちついた態度で

(さびしくわらった。)

寂しく笑った。

(「おやぶんが・・・・・・。なんだかいやですわねえ。なんのごようでしょう」)

「親分が……。なんだか忌(いや)ですわねえ。なんの御用でしょう」

(「あんまりおめえのひょうばんがいいもんだから、おやぶんもおつなきに)

「あんまりおめえの評判が好いもんだから、親分も乙な気に

(なったのもかもしれねえ」)

なったのもかも知れねえ」

(「あら、じょうだんはおいて、ほんとうになんでしょう、おまえさん、)

「あら、冗談は措(お)いて、ほんとうに何でしょう、お前さん、

(たいていしっているんでしょう」)

大抵知っているんでしょう」

(いしょうつづらにしなやかなからだをもたせながら、こりゅうはへびのような)

衣裳葛籠(つづら)にしなやかな身体をもたせながら、小柳は蛇のような

(めをしてはんしちのかおをうかがっていた。)

眼をして半七の顔を窺っていた。

(「いや、おいらはほんのつかいやっこだ。なんにもしらねえ。)

「いや、おいらはほんの使い奴(やっこ)だ。なんにも知らねえ。

(なにしろたいしててまをとらせることじゃあるめえから、せわをやかせねえで)

なにしろ大して手間を取らせることじゃあるめえから、世話を焼かせねえで

(すなおにきてくんねえ」)

素直に来てくんねえ」

(「そりゃあまいりますとも・・・・・・。ごようとおっしゃりゃあにげかくれは)

「そりゃあ参りますとも……。御用とおっしゃりゃあ逃げ隠れは

(できませんからね」と、こりゅうはたばこいれをとりだしてしずかにいっぷくすった。)

出来ませんからね」と、小柳は煙草入れを取り出してしずかに一服すった。

(となりのおでこしばいではうちだしのたいこがきこえた。ほかのげいにんたちも)

隣りのおでこ芝居では打出しの太鼓がきこえた。ほかの芸人たちも

(いっしゅのふあんにおそわれたらしく、いきをころしてとおくからふたりのもんどうに)

一種の不安に襲われたらしく、息を殺して遠くから二人の問答に

(みみをすましていた。せまいがくやのすみずみはくらくなった。)

耳を澄ましていた。狭い楽屋の隅々は暗くなった。

(「ひがみじけえ。おやぶんもきがみじけえ。ぐずぐずしているとおれまでしかられるぜ。)

「日が短けえ。親分も気が短けえ。ぐずぐずしていると俺まで叱られるぜ。

(はやくしてくんねえ」 と、はんしちはじれったそうにさいそくした。)

早くしてくんねえ」 と、半七は焦れったそうに催促した。

(「はい、はい。すぐにおともします」)

「はい、はい。すぐにお供します」

(ようやくがくやをでてきたこりゅうは、そこのくらいかげにもふたりのてさきが)

ようやく楽屋を出て来た小柳は、そこの暗いかげにも二人の手先が

(たっているのをみて、くやしそうにはんしちのほうをじろりとにらんだ。)

立っているのを見て、くやしそうに半七の方をじろりと睨んだ。

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