『少年探偵団』江戸川乱歩36

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少年探偵団シリーズ第2作品『少年探偵団』
※分かりやすくする為、表記等を一部改変しております

○少年探偵団シリーズ第2作品『少年探偵団』
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問題文

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(ああ、やはりにじゅうめんそうはまじゅつによって、きたいのような)

ああ、やはり二十面相は魔術によって、気体のような

(ものにばけて、このへやのどこかのすみにたたずんで)

ものに化けて、この部屋のどこかの隅にたたずんで

(いるのでしょうか。そして、だれのめにも)

いるのでしょうか。そして、だれの目にも

(みえないかいぶつのすがたが、めいたんていあけちこごろうのめに)

見えない怪物の姿が、名探偵明智小五郎の目に

(だけは、はっきりうつっているのでしょうか。)

だけは、ハッキリ映っているのでしょうか。

(あけちたんていはするどく「きみがにじゅうめんそうだ」と、いい)

明智探偵は鋭く「きみが二十面相だ」と、言い

(ました。おおとりしはびっくりして、きょろきょろへやの)

ました。大鳥氏はビックリして、キョロキョロ部屋の

(なかをみまわしました。しかし、ぞくのすがたはどこにも)

中を見回しました。しかし、賊の姿はどこにも

(みあたりません。「ははは、ごじょうだんを。ここには)

見当たりません。「ハハハ、ご冗談を。ここには

(わしたちよにんのほかには、だれもいないじゃ)

わしたち四人のほかには、だれもいないじゃ

(ありませんか」いかにも、とをしめきったじゅうじょうの)

ありませんか」 いかにも、戸をしめきった十畳の

(ざしきには、しゅじんのおおとりしとろうしはいにんのかどの、そして)

座敷には、主人の大鳥氏と老支配人の門野、そして

(あけちたんていとこばやししょうねんのよにんのほかには、だれもいない)

明智探偵と小林少年の四人のほかには、だれも居ない

(のです。いったい、あけちはなにをいっているのでしょう。)

のです。一体、明智は何を言っているのでしょう。

(あたまがどうかしているのではないでしょうか。)

頭がどうかしているのではないでしょうか。

(「そうです。ここにはわれわれ、よにんだけです。しかし、)

「そうです。ここには我々、四人だけです。しかし、

(にじゅうめんそうはやはり、このへやにいるのです」「せんせい、)

二十面相はやはり、この部屋に居るのです」「先生、

(あなたのおことばは、わたしどもにはさっぱりわけが)

あなたのお言葉は、私どもにはさっぱり訳が

(わかりません。もっとくわしくおっしゃっていただけ)

わかりません。もっと詳しくおっしゃっていただけ

(ませんか」しらがのろうしはいにんはおどおどしながら、)

ませんか」 しらがの老支配人はオドオドしながら、

など

(たんていにたずねました。「ほう、あなたにもまだ)

探偵にたずねました。「ほう、あなたにもまだ

(わからないのですか。で、あなたはにじゅうめんそうがどこに)

わからないのですか。で、あなたは二十面相がどこに

(いるか、ききたいとおっしゃるのですね。それを)

居るか、聞きたいとおっしゃるのですね。それを

(いってもいいのですか」あけちはろうしはいにんのかおをじっと)

言ってもいいのですか」 明智は老支配人の顔をジッと

(みつめてから、いみありげにいいました。「え、なんと)

見つめてから、意味ありげに言いました。「え、何と

(いいましたか」かどのろうじんは、なぜかぎょっとした)

言いましたか」 門野老人は、なぜかギョッとした

(ように、たんていをみかえしました。「だれがにじゅうめんそうか、)

ように、探偵を見返しました。「だれが二十面相か、

(あかしてもかまわないかといったのです」あけちのめに、)

明かしても構わないかと言ったのです」 明智の目に、

(でんこうのようなはげしいひかりがかがやき、ぐっとあいてをにらみ)

電光のような激しい光が輝き、グッと相手をにらみ

(つけました。ろうしはいにんは、そのがんこうにいられでもした)

つけました。老支配人は、その眼光に射られでもした

(ようにかえすことばもなく、おもわずめをふせました。)

ように返す言葉もなく、思わず目を伏せました。

(「ははは、おいにじゅうめんそう、よくもばけたねえ。)

「ハハハ、おい二十面相、よくも化けたねえ。

(まるで、ろくじゅうのろうじんそっくりじゃないか。だが、)

まるで、六十の老人そっくりじゃないか。だが、

(ぼくのめをごまかすことはできない。きみだ、きみが)

ぼくの目をごまかすことは出来ない。きみだ、きみが

(にじゅうめんそうだ」「と、とんでもない。そ、そんなばかな)

二十面相だ」「と、とんでもない。そ、そんな馬鹿な

(ことは」かどのしはいにんはまっさおになって、べんかい)

ことは」 門野支配人は真っ青になって、弁解

(しようとしました。しゅじんのおおとりしも、それにことばを)

しようとしました。 主人の大鳥氏も、それに言葉を

(そえます。「あけちせんせい、それはなにかのおもいちがい)

そえます。「明智先生、それは何かの思い違い

(でしょう。このかどのは、おやのだいからわしのみせに)

でしょう。この門野は、親の代からわしの店に

(つとめているりちぎなものです。このおとこがにじゅうめんそう)

つとめている律義な者です。この男が二十面相

(だなんて、そんなはずはございません」「いや、)

だなんて、そんなはずはございません」「いや、

(あなたは、にじゅうめんそうがへんそうのだいめいじんであることを、)

あなたは、二十面相が変装の大名人であることを、

(おわすれになっているのです。なるほど、ほんとうの)

お忘れになっているのです。なるほど、本当の

(かどのくんはりちぎなひとでしょう。しかし、このおとこはかどのくん)

門野君は律義な人でしょう。しかし、この男は門野君

(ではありません。あのよこくがあってからまもなく、)

ではありません。あの予告があってからまもなく、

(にじゅうめんそうはほんとうのかどのくんをとあるばしょにかんきんして、)

二十面相は本当の門野君をとある場所に監禁して、

(じぶんがかどのくんにばけて、おみせにしゅっきんしていたのです。)

自分が門野君に化けて、お店に出勤していたのです。

(いや、おみせにしゅっきんしていただけではありません。)

いや、お店に出勤していただけではありません。

(かどのくんのじたくへも、ずうずうしくまいばんかえっていた。)

門野君の自宅へも、ずうずうしく毎晩帰っていた。

(かぞくのひとたちでさえ、それをすこしもきづかなかった)

家族の人たちでさえ、それを少しも気づかなかった

(のです」ああ、そんなことがありうるでしょうか。)

のです」 ああ、そんなことがありうるでしょうか。

(いま、めのまえにたっているろうじんは、どうみても)

今、目の前に立っている老人は、どう見ても

(かどのしはいにんそっくりです。どこにも、あやしいところは)

門野支配人そっくりです。どこにも、怪しい所は

(ありません。いったい、それほどまでにじょうずなへんそうが)

ありません。一体、それほどまでに上手な変装が

(できるでしょうか。いちどうがあっけにとられて、)

出来るでしょうか。 一同があっけにとられて、

(あけちたんていのかおをみつめている、ちょうどそのとき)

明智探偵の顔を見つめている、ちょうどその時

(でした。ああ、またしても、どこからか、あの)

でした。ああ、またしても、どこからか、あの

(おそろしいこえがきこえてくるではありませんか。)

おそろしい声が聞こえて来るではありませんか。

(「ふふふ、あけちせんせいもおいぼれたもんだねえ。)

「フフフ、明智先生も老いぼれたもんだねえ。

(にじゅうめんそうをとりにがしたくるしまぎれに、なにもしらない)

二十面相をとりにがした苦しまぎれに、何も知らない

(ろうじんにつみをきせようなんて。おいせんせい、めを)

老人に罪を着せようなんて。おい先生、目を

(あけて、よくみるがいい。おれはここにいるぜ。)

あけて、よく見るがいい。おれはここに居るぜ。

(にじゅうめんそうは、ここにいるんだぜ」ああ、なんという)

二十面相は、ここに居るんだぜ」ああ、なんという

(だいたんふてきなぞくでしょう。ぞくは、まだこのへやの)

大胆不敵な賊でしょう。賊は、まだこの部屋の

(どこかにかくれているのでしょうか。「せんせい、あれ)

どこかに隠れているのでしょうか。「先生、あれ

(です。あれがにじゅうめんそうです。やっぱりてんじょうから)

です。あれが二十面相です。やっぱり天井から

(きこえてくる。ね、おわかりでしょう。かどのくんじゃ)

聞こえて来る。ね、おわかりでしょう。門野君じゃ

(ございません。かどのくんはにじゅうめんそうじゃございません」)

ございません。門野君は二十面相じゃございません」

(おおとりしは、きょうふにたえられないようにそっとてんじょうを)

大鳥氏は、恐怖に耐えられないようにソッと天井を

(ゆびさしながら、ささやくのでした。しかし、)

指さしながら、ささやくのでした。 しかし、

(あけちたんていはすこしもさわぎません。くちをつぐんだまま、)

明智探偵は少しも騒ぎません。口をつぐんだまま、

(じっとおおとりしをみかえしています。すると、とつじょ)

ジッと大鳥氏を見返しています。 すると、突如

(として、どこからかともなく、まったくべつのこえが)

として、どこからかともなく、まったく別の声が

(ひびいてきました。「おいおい、こどもだましは)

響いて来ました。「おいおい、子どもだましは

(よしたまえ。ぼくがふくわじゅつをしらないとでもおもって)

よしたまえ。 ぼくが腹話術を知らないとでも思って

(いるのか。ははは」おおとりしはそれをきいて、ぞっと)

いるのか。ハハハ」 大鳥氏はそれを聞いて、ゾッと

(ふるえあがってしまいました。ああ、なんというふしぎな)

震え上がってしまいました。ああ、何という不思議な

(ことでしょう。それはまぎれもなくあけちたんていのこえ)

ことでしょう。それはまぎれもなく明智探偵の声

(でした。てんじょうからあけちのこえがひびいてきたのです。)

でした。天井から明智の声が響いて来たのです。

(しかも、とうのたんていはめのまえにじっとくちをつぐんで)

しかも、当の探偵は目の前にジッと口をつぐんで

(すわっています。まるでまほうつかいです。あけちたんていが、)

座っています。まるで魔法使いです。明智探偵が、

(とつじょとしてふたりになったとしかかんがえられないのです。)

突如として二人になったとしか考えられないのです。

(「おわかりになりましたか。ごしゅじん、これがふくわじゅつ)

「おわかりになりましたか。ご主人、これが腹話術

(というものです。くちをすこしもうごかさないでものをいう)

というものです。口を少しも動かさないで物を言う

(じゅつです。いまのように、ぼくがこうしてくちをふさいで)

術です。今のように、ぼくがこうして口をふさいで

(ものをいうと、まるでちがうほうがくからきこえてくる)

物を言うと、まるで違う方角から聞こえて来る

(かのようにかんじるのです。てんじょうとおもえばてんじょうのよう)

かのように感じるのです。天井と思えば天井のよう

(でもあり、ゆかしたとおもえばゆかしたからのようにもきこえ)

でもあり、床下と思えば床下からのようにも聞こえ

(ます。おわかりになりましたか」いまになって、)

ます。おわかりになりましたか」 今になって、

(おおとりしにもやっと、ことのしだいがあきらかになりました。)

大鳥氏にもやっと、事の次第が明らかになりました。

(ふくわじゅつというものがあることは、おおとりしもはなしにきいて)

腹話術というものがあることは、大鳥氏も話に聞いて

(いました。さきほどからのこえが、みんなふくわじゅつであった)

いました。先程からの声が、みんな腹話術であった

(とすれば、すっかりつじつまがあうのです。てんじょうや)

とすれば、すっかりつじつまが合うのです。天井や

(ゆかしたなどをあれほどさがしても、にじゅうめんそうのすがたがはっけん)

床下などをあれほど探しても、二十面相の姿が発見

(されなかったわけが、ようやくわかったのです。)

されなかった訳が、ようやくわかったのです。

(それではやっぱり、にじゅうめんそうはかどのろうじんにばけている)

それではやっぱり、二十面相は門野老人に化けている

(のでしょうか。おおとりしはまだはんしんはんぎのまなざしで、)

のでしょうか。 大鳥氏はまだ半信半疑のまなざしで、

(じっとかどのろうじんをみつめました。かどのろうじんはまっさおに)

ジッと門野老人を見つめました。門野老人は真っ青に

(なっています。しかし、まだこうさんしたようすは)

なっています。しかし、まだ降参した様子は

(みえません。)

見えません。

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