『怪人二十面相』江戸川乱歩32

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少年探偵団シリーズ第1作品『怪人二十面相』
※分かりやすくする為、表記等を一部改変しております

○少年探偵団シリーズ第1作品『怪人二十面相』
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問題文

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(「わからないかね。ほら、きみのあしもとをごらん。)

「分からないかね。ほら、きみの足元をご覧。

(ぼくのにもつにしてはすこしおおきすぎるとらんくがおいて)

ぼくの荷物にしては少し大きすぎるトランクが置いて

(あるじゃないか。なかはからっぽだぜ。つまり、きみの)

あるじゃないか。中は空っぽだぜ。つまり、きみの

(かんおけなのさ。このふたりのぼーいくんが、きみをいま、その)

棺桶なのさ。この二人のボーイ君が、きみを今、その

(とらんくのなかへまいそうしようってわけさ。ははは。)

トランクの中へ埋葬しようって訳さ。ハハハ。

(さすがのめいたんていも、ちょっとはおどろいたかね。)

さすがの名探偵も、ちょっとは驚いたかね。

(ぼくのぶかのものが、ほてるのぼーいにはいりこんで)

ぼくの部下の者が、ホテルのボーイに入りこんで

(いようとはすこしいがいだったねえ。いや、きみ、こえを)

いようとは少し意外だったねえ。 いや、きみ、声を

(たてたってむだだよ。りょうどなりとも、ぼくのかしきりべや)

たてたって無駄だよ。両隣とも、ぼくの貸し切り部屋

(なんだ。それからねんのためにいっておくがね、ここに)

なんだ。それから念のために言っておくがね、ここに

(いるぼくのぶかはふたりだけじゃない。じゃまが)

居るぼくの部下は二人だけじゃない。邪魔が

(はいらないように、ろうかにもちゃんとみはりばんが)

入らないように、廊下にもちゃんと見張り番が

(ついているんだぜ」ああ、なんというふかくでしょう。)

ついているんだぜ」 ああ、なんという不覚でしょう。

(めいたんていは、まんまとてきのわなにおちいったのです。)

名探偵は、まんまと敵の罠に陥ったのです。

(それとしりながら、このんでひのなかへとびこんだような)

それと知りながら、好んで火の中へ飛び込んだような

(ものです。これほどよういがととのっていては、)

ものです。これほど用意が整っていては、

(もうのがれるすべはありません。ちのきらいな)

もうのがれるすべはありません。 血の嫌いな

(にじゅうめんそうのことですから、まさかいのちをうばうような)

二十面相のことですから、まさか命を奪うような

(ことはしないでしょうが、なんといっても、)

ことはしないでしょうが、なんといっても、

(ぞくにとってはけいさつよりもじゃまになるあけちこごろうです。)

賊にとっては警察よりも邪魔になる明智小五郎です。

など

(とらんくのなかへとじこめて、どこかひとしれぬばしょへ)

トランクの中へ閉じこめて、どこか人知れぬ場所へ

(はこびさり、はくぶつかんのしゅうげきがおわるまでつかまえて)

運び去り、博物館の襲撃が終わるまで捕まえて

(おこうというかんがえにちがいありません。ふたりのおおおとこは)

おこうという考えに違いありません。 二人の大男は

(もんどうむようとばかりに、あけちのしんぺんにせまってきました)

問答無用とばかりに、明智の身辺に迫ってきました

(が、いまにもとびかかろうとして、ちょっとためらって)

が、今にも跳びかかろうとして、ちょっとためらって

(おります。めいたんていのみにそなわるいりょくにうたれた)

おります。名探偵の身に備わる威力にうたれた

(のです。でも、ちからではふたりにひとり、いや、さんにんにひとり)

のです。 でも、力では二人に一人、いや、三人に一人

(なのですから、あけちこごろうがいかにつよくても、)

なのですから、明智小五郎がいかに強くても、

(かないっこありません。ああ、かれはきこくそうそう、)

かないっこありません。ああ、彼は帰国そうそう、

(はやくもこのだいとうぞくにつかまることとなり、)

早くもこの大盗賊に捕まることとなり、

(たんていにとってさいだいのちじょくをうけなければならないうんめい)

探偵にとって最大の恥辱を受けなければならない運命

(なのでしょうか。ああ、ほんとうにそうなのでしょうか。)

なのでしょうか。ああ、本当にそうなのでしょうか。

(しかし、ごらんなさい。われらのめいたんていは、このきけんに)

しかし、ご覧なさい。我らの名探偵は、この危険に

(たいしても、やっぱりあのほがらかなえがおをつづけている)

対しても、やっぱりあの朗らかな笑顔を続けている

(ではありませんか。そして、そのえがおが、おかしくて)

ではありませんか。そして、その笑顔が、おかしくて

(たまらないというように、だんだんくずれてくるでは)

たまらないというように、段々くずれてくるでは

(ありませんか。「ははは」わらいとばされて)

ありませんか。「ハハハ」 笑いとばされて

(ふたりのぼーいは、きつねにでもつままれたように)

二人のボーイは、キツネにでもつままれたように

(くちをぽかんとあけて、たちすくんでしまいました。)

口をポカンとあけて、立ちすくんでしまいました。

(「あけちくん、きょせいをはるのはよしたまえ。)

「明智君、虚勢を張るのはよしたまえ。

(なにがおかしいんだ。それともきみは、おそろしさに)

何がおかしいんだ。それともきみは、恐ろしさに

(きでもくるったのか」にじゅうめんそうはあいてのしんいをはかり)

気でも狂ったのか」 二十面相は相手の真意をはかり

(かねて、ただどくぜつをたたくほかはありませんでした。)

かねて、ただ毒舌をたたく他はありませんでした。

(「いや、しっけいしっけい。つい、きみたちのおおまじめな)

「いや、失敬失敬。つい、きみたちの大真面目な

(おしばいがおもしろかったものだからね。だが、ちょっと)

お芝居が面白かったものだからね。だが、ちょっと

(きみ、ここへきてごらん。そして、まどのそとをのぞいて)

きみ、ここへ来てごらん。そして、窓の外をのぞいて

(ごらん。みょうなものがみえるから」「なにがみえる)

ごらん。みょうなものが見えるから」「何が見える

(もんか。そちらはぷらっとほーむのやねだけじゃ)

もんか。そちらはプラットホームの屋根だけじゃ

(ないか。へんなことをいって、そのばしのぎをしよう)

ないか。変なことを言って、その場しのぎをしよう

(なんて、あけちこごろうもおとろえたもんだねえ」)

なんて、明智小五郎も衰えたもんだねえ」

(でもぞくはなんとなくきがかりで、まどのほうへ)

でも賊は何となく気がかりで、窓のほうへ

(ちかよらないではいられませんでした。「ははは、)

近寄らないではいられませんでした。「ハハハ、

(もちろんやねだけさ。だが、そのやねのむこうに)

もちろん屋根だけさ。だが、その屋根の向こうに

(みょうなものがいるんだ。ほらね、こちらのほう)

みょうなものが居るんだ。ほらね、こちらのほう

(だよ」あけちはゆびさしながら、「やねとやねとのあいだ)

だよ」 明智は指さしながら、「屋根と屋根との間

(からちょっとみえているぷらっとほーむに、くろい)

からちょっと見えているプラットホームに、黒い

(ものがうずくまっているだろう。こどものようだね。)

ものがうずくまっているだろう。子どものようだね。

(ちいさなぼうえんきょうで、しきりに、このまどをながめている)

小さな望遠鏡で、しきりに、この窓をながめている

(じゃないか。あのこども、なんだかみたようなかお)

じゃないか。あの子ども、なんだか見たような顔

(だねえ」どくしゃしょくんは、それがだれだか、もうとっくに)

だねえ」 読者諸君は、それがだれだか、もうとっくに

(おさっしのこととおもいます。そうです。おさっしのとおり)

お察しのことと思います。そうです。お察しの通り

(あけちたんていのめいじょしゅ、こばやししょうねんです。こばやしくんはれいの)

明智探偵の名助手、小林少年です。小林君は例の

(ななつどうぐのひとつ、まんねんひつがたのぼうえんきょうで、ほてるのまどを)

七つ道具の一つ、万年筆型の望遠鏡で、ホテルの窓を

(のぞきながら、なにかのあいずをまちかまえているようす)

のぞきながら、何かの合図を待ちかまえている様子

(です。「あ、こばやしのこぞうだな。じゃ、あいつはいえへ)

です。「あ、小林の小僧だな。じゃ、あいつは家へ

(かえらなかったのか」「そうだよ。ぼくがどのへやへ)

帰らなかったのか」「そうだよ。ぼくがどの部屋へ

(はいるか、ほてるのげんかんでといあわせて、そのへやの)

入るか、ホテルの玄関で問い合わせて、その部屋の

(まどをちゅういしてみはっているようにいいつけている)

窓を注意して見張っているように言いつけている

(のだよ」しかし、それがなにをいみするのか、)

のだよ」 しかし、それが何を意味するのか、

(ぞくには、まだのみこめませんでした。「それで、)

賊には、まだ飲みこめませんでした。「それで、

(どうしようっていうんだ」にじゅうめんそうはだんだんふあんに)

どうしようって言うんだ」 二十面相は段々不安に

(なりながら、おそろしいけんまくであけちにつめより)

なりながら、恐ろしい剣幕で明智に詰め寄り

(ました。「これをごらん。ぼくのてをごらん。)

ました。「これをご覧。ぼくの手をご覧。

(きみたちが、ぼくをどうにかすれば、このはんかちが)

きみたちが、ぼくをどうにかすれば、このハンカチが

(ひらひらとまどのそとへおちていくのだよ」みると、)

ヒラヒラと窓の外へ落ちていくのだよ」 見ると、

(あけちのみぎのてくびが、すこしひらかれたまどのかぶから)

明智の右の手首が、少しひらかれた窓の下部から

(そとへでていて、そのゆびさきにまっしろなはんかちが)

外へ出ていて、その指先に真っ白なハンカチが

(つままれています。「これがあいずなのさ。すると、)

つままれています。「これが合図なのさ。すると、

(あのこどもはえきのじむしつにかけこむんだ。それから)

あの子どもは駅の事務室に駆けこむんだ。それから

(でんわのべるがなる。そしてけいかんたいがかけつけて、)

電話のベルが鳴る。そして警官隊が駆けつけて、

(ほてるのでいりぐちをかためるまで、そうだね、)

ホテルの出入り口をかためるまで、そうだね、

(ごふんもあればじゅうぶんだとはおもわないかね。)

五分もあれば充分だとは思わないかね。

(ぼくはごふんやじゅっぷん、きみたちさんにんをあいてにていこうする)

ぼくは五分や十分、きみたち三人を相手に抵抗する

(ちからはあるつもりだよ。ははは、どうだい、このゆびを)

力はあるつもりだよ。ハハハ、どうだい、この指を

(ぱっとひらこうかね。そうすれば、にじゅうめんそうたいほの)

パッとひらこうかね。そうすれば、二十面相逮捕の

(すばらしいだいばめんが、けんぶつできようというものだが」)

素晴らしい大場面が、見物できようというものだが」

(ぞくは、まどのそとにつきだされたあけちのはんかちと、)

賊は、窓の外に突き出された明智のハンカチと、

(ぷらっとほーむのこばやししょうねんのすがたをみくらべながら、)

プラットホームの小林少年の姿を見比べながら、

(くやしそうにしばらくかんがえていましたが、けっきょく、)

悔しそうにしばらく考えていましたが、結局、

(ふりをさとったのか、ややかおいろをやわらげて)

不利を悟ったのか、やや顔色をやわらげて

(いうのでした。「で、もし、ぼくのほうでてを)

言うのでした。「で、もし、ぼくのほうで手を

(ひいて、きみをぶじにかえすばあいには、そのはんかちは)

ひいて、きみを無事に帰す場合には、そのハンカチは

(おとさないですますつもりだろうね。つまり、きみの)

落とさないで済ますつもりだろうね。つまり、きみの

(じゆうとぼくのじゆうの、こうかんというわけだからね」)

自由とぼくの自由の、交換という訳だからね」

(「むろんだよ。さっきからいうとおり、ぼくのほうにはいま、)

「無論だよ。さっきから言う通り、ぼくのほうには今、

(きみをつかまえるかんがえはすこしもないのだ。もしつかまえる)

きみを捕まえる考えは少しもないのだ。もし捕まえる

(つもりなら、なにもこんなまわりくどいはんかちのあいず)

つもりなら、何もこんな回りくどいハンカチの合図

(なんかいりゃしない。こばやしくんに、すぐけいさつへうったえ)

なんかいりゃしない。小林君に、すぐ警察へ訴え

(させるよ。そうすればいまごろ、きみはけいさつの)

させるよ。そうすれば今頃、きみは警察の

(おりのなかにいたはずだぜ。ははは」)

檻の中にいたはずだぜ。ハハハ」

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