『少年探偵団』江戸川乱歩12
○少年探偵団シリーズ第2作品『少年探偵団』
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順位 | 名前 | スコア | 称号 | 打鍵/秒 | 正誤率 | 時間(秒) | 打鍵数 | ミス | 問題 | 日付 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | ヌオー | 5467 | B++ | 5.8 | 93.1% | 763.9 | 4507 | 330 | 98 | 2024/12/12 |
2 | baru | 4425 | C+ | 4.9 | 90.6% | 923.5 | 4559 | 472 | 98 | 2024/12/14 |
3 | くま | 2647 | E | 2.9 | 91.3% | 1540.1 | 4503 | 426 | 98 | 2024/12/16 |
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問題文
(しばらくのあいだ、そうしているうちにとつぜん、てんじょうに)
しばらくのあいだ、そうしているうちに突然、天井に
(あらあらしいくつおとがして、ちょうどちかしつへのいりぐち)
荒々しい靴音がして、ちょうど地下室への入り口
(あたりでたちどまると、ことこととみょうなものおとが)
あたりで立ち止まると、コトコトとみょうな物音が
(しはじめました。めをこらしてくらいてんじょうをみあげて)
し始めました。 目をこらして暗い天井を見あげて
(いますと、はっきりとはわかりませんけれど、てんじょうに)
いますと、ハッキリとはわかりませんけれど、天井に
(ちいさなあながひらいて、そこからなにかふといくだのような)
小さな穴がひらいて、そこから何か太い管のような
(ものがさしこまれているようすです。ちょっけいが)
物が差し込まれている様子です。直径が
(にじゅっせんちもあるふといくだです。おや、へんなことを)
二十センチもある太い管です。 おや、変なことを
(するな、いったいあれはなんだろうと、ゆだんなく)
するな、一体あれはなんだろうと、油断なく
(みがまえて、なおもそこをみつめているうちに、)
身構えて、なおもそこを見つめているうちに、
(がががというようなおとがしたかとおもうと、とつじょ)
ガガガというような音がしたかと思うと、突如
(そのふといくだのくちからしろいものが、しぶきをたてて、)
その太い管の口から白いものが、しぶきをたてて、
(たきのようにおちはじめました。みず、みずです。ああ、)
滝のように落ち始めました。水、水です。ああ、
(どくしゃしょくん、このときのこばやしくんのおどろきは、どんなでした)
読者諸君、この時の小林君の驚きは、どんなでした
(ろう。くろいかいぶつは、むごたらしくも、みどりちゃんと)
ろう。 黒い怪物は、むごたらしくも、緑ちゃんと
(こばやしくんを、みずぜめにしようとしているのです。)
小林君を、水責めにしようとしているのです。
(あのはげしさでおちるみずは、ほどなくして、たったろくじょう)
あの激しさで落ちる水は、ほどなくして、たった六畳
(ほどのちかしつに、すきまもなくみちあふれてしまうに)
ほどの地下室に、隙間もなく満ちあふれてしまうに
(ちがいありません。やがてふたりは、そのみずのなかでできし)
違いありません。やがて二人は、その水の中で溺死
(しなければならないのです。そういううちにも、みずは)
しなければならないのです。 そういううちにも、水は
(ちかしつのゆかいちめんに、こうずいのようにながれはじめました。)
地下室の床一面に、洪水のように流れ始めました。
(もうすわっているわけにはいきません。こばやしくんは)
もう座っているわけにはいきません。小林君は
(みどりちゃんをだいて、みずしぶきのかからない、)
緑ちゃんをだいて、水しぶきのかからない、
(すみのほうへみをさけました。みずは、そうして)
隅のほうへ身をさけました。 水は、そうして
(たっているこばやしくんのあしをひたし、くるぶしをひたし、)
立っている小林君の足をひたし、くるぶしをひたし、
(やがてじょじょに、ふくらはぎのほうへはいあがって)
やがて徐々に、ふくらはぎのほうへ這い上がって
(くるのです。ちょうどそのころ、しょうねんそうさくたいのしのざきくんと)
来るのです。 ちょうどその頃、少年捜索隊の篠崎君と
(かつらくんいちどうは、やっとのこと、いんどじんのじどうしゃが)
桂君一同は、やっとのこと、インド人の自動車が
(とおったさびしいひろっぱのちかくへ、さしかかって)
通った寂しい広っぱの近くへ、さしかかって
(いました。このみちはいままでのうちでいちばんさびしい)
いました。 この道は今までのうちで一番寂しい
(から、ねんいりにしらべてみなければならないという)
から、念入りに調べてみなければならないと言う
(ので、べつだんのききこみもありませんでしたけれど、)
ので、別段の聞きこみもありませんでしたけれど、
(あきらめないであるいていますと、ゆうやみのひろっぱへ)
諦めないで歩いていますと、夕闇の広っぱへ
(はいろうとするすこしてまえのところで、だがしやのみせあかりの)
入ろうとする少し手前の所で、駄菓子屋の店明かりの
(まえをしち、はちさいのおとこのこが、むこうからやってくるのに)
前を七、八歳の男の子が、向こうからやって来るのに
(であいました。「おい、しのざきくん、あのこどものむねに)
出会いました。「おい、篠崎君、あの子どもの胸に
(ひかっているばっじをみたまえ。なんだかぼくらの)
光っているバッジを見たまえ。なんだかぼくらの
(bdばっじににているじゃないか」かつらくんの)
bdバッジに似ているじゃないか」 桂君の
(ことばに、ふたりがこどもにちかづいてみますと、そのむねに)
言葉に、二人が子どもに近付いてみますと、その胸に
(つけているのはしょうしんしょうめい、しょうねんたんていだんのbdばっじ)
付けているのは正真正銘、少年探偵団のbdバッジ
(でした。bdばっじというのは、こばやしくんのはつあんで、)
でした。 bdバッジというのは、小林君の発案で、
(ついこのあいだできあがったばかりのたんていだんいんの)
ついこのあいだ出来上がったばかりの探偵団員の
(ばっじでした。bdというのは、しょうねんとたんていのbとdを)
バッジでした。bdというのは、少年と探偵のbとdを
(もようのようにくみあわせて、ばっじのずあんにした)
模様のように組み合わせて、バッジの図案にした
(ことからなづけられたのです。「そのばっじ、どこに)
ことから名付けられたのです。「そのバッジ、どこに
(あったの。どっかでひろったのかい」こどもをとらえて)
あったの。どっかで拾ったのかい」 子どもをとらえて
(たずねてみますと、こどもはとりあげられないかと、)
たずねてみますと、子どもは取り上げられないかと、
(けいかいするふうで、「うん、あそこにおちていたんだよ。)
警戒する風で、「うん、あそこに落ちていたんだよ。
(ぼくのだよ。ぼくがひろったから、ぼくのだよ」と、)
ぼくのだよ。ぼくが拾ったから、ぼくのだよ」 と、
(しろいめでふたりをにらみました。こどもが、あそこで)
白い目で二人をにらみました。 子どもが、あそこで
(ひろったとゆびさしたのは、ひろっぱのほうです。)
拾ったと指さしたのは、広っぱのほうです。
(「じゃ、こばやしさんが、わざとおとしていったのかも)
「じゃ、小林さんが、わざと落としていったのかも
(しれないぜ」「うん、そうらしいね。じゅうだいな)
しれないぜ」「うん、そうらしいね。重大な
(てがかりだ」ふたりはいせいよくさけびました。)
手がかりだ」 二人は威勢よく叫びました。
(こばやししょうねんがこうあんしたbdばっじには、ただだんいんの)
小林少年が考案したbdバッジには、ただ団員の
(あかしというほかに、いろいろなようとがあるのでした。)
あかしというほかに、色々な用途があるのでした。
(まずだいいちは、おもいなまりでできているので、ふだんから)
まず第一は、重い鉛で出来ているので、普段から
(それをたくさんぽけっとのなかへいれておけば、)
それをたくさんポケットの中へ入れておけば、
(いざというときのいしつぶてのかわりになる。)
いざというときの石つぶてのかわりになる。
(だいにに、てきにとらえられたばあいなどに、ばっじの)
第二に、敵にとらえられた場合などに、バッジの
(うらのやわらかいなまりのめんへ、ないふでもじをかいて、)
裏のやわらかい鉛の面へ、ナイフで文字を書いて、
(まどやへいのそとへなげて、つうしんすることができる。)
窓や塀の外へ投げて、通信することができる。
(だいさんには、うらめんのはりにひもをむすんで、みずのふかさを)
第三には、裏面の針にヒモをむすんで、水の深さを
(はかったり、もののきょりをそくていしたりすることができる。)
計ったり、物の距離を測定したりすることができる。
(だいよんには、てきにゆうかいされたばあい、みちにこれをいくつも)
第四には、敵に誘拐された場合、道にこれをいくつも
(おとしておけば、ほうがくをしらせるめじるしになる。)
落としておけば、方角を知らせる目印になる。
(というように、こばやしくんがれっきょしたbdばっじのこうのうは、)
というように、小林君が列挙したbdバッジの効能は、
(じゅっかじょうほどもあったのです。だんいんたちは、ちょうど)
十ヵ条ほどもあったのです。 団員たちは、ちょうど
(あめりかのけいじのように、このばっじをようふくのむねの)
アメリカの刑事のように、このバッジを洋服の胸の
(うちがわにつけて、なにかのときには、そこをひらいて)
内側に付けて、何かのときには、そこをひらいて
(みせて、ぼくはこういうものだなどと、たんていきどりで)
みせて、ぼくはこういうものだなどと、探偵気取りで
(じまんしていたのですが、そのむねのばっじのほかに、)
自慢していたのですが、その胸のバッジのほかに、
(おのおののぽけっとには、おなじばっじがにじゅっこから)
おのおののポケットには、同じバッジが二十個から
(さんじゅっこぐらいずつ、ちゃんとよういしてあったのです。)
三十個ぐらいずつ、ちゃんと用意してあったのです。
(かつらくんとしのざきくんは、おとこのこが、そのbdばっじをひろっぱの)
桂君と篠崎君は、男の子が、そのbdバッジを広っぱの
(どうろでひろったときくと、たちまちいまいった、だいよんの)
道路で拾ったと聞くと、たちまち今言った、第四の
(ようとをおもいだし、こばやししょうねんがそうさくたいのみちしるべとして)
用途を思い出し、小林少年が捜索隊の道しるべとして
(おとしていったものとさとりました。どくしゃしょくんは、)
落として行った物と悟りました。 読者諸君は、
(もうとっくにおわかりでしょう。こばやしくんがじどうしゃの)
もうとっくにおわかりでしょう。小林君が自動車の
(なかで、いんどじんにしばられるとき、そっとぽけっとから)
中で、インド人にしばられる時、ソッとポケットから
(つかみだして、ばんぱーのつけねのうえにおいた、)
つかみだして、バンパーの付け根の上に置いた、
(ひゃくえんぎんかのようなものは、このbdばっじに)
百円銀貨のようなものは、このbdバッジに
(ほかならなかったのです。そして、そのこばやしくんの)
ほかならなかったのです。そして、その小林君の
(もくてきはいま、みごとにたっせいされたのです。しのざきくんと)
目的は今、見事に達成されたのです。 篠崎君と
(かつらくんは、よういしていたまんねんひつがたかいちゅうでんとうを)
桂君は、用意していた万年筆型懐中電灯を
(とりだすと、おとこのこにおしえられたちてんへはしって)
取り出すと、男の子に教えられた地点へ走って
(いって、くらいじめんをてらしながら、ほかにばっじは)
行って、暗い地面を照らしながら、ほかにバッジは
(おちていないかと、ねっしんにさがしはじめました。)
落ちていないかと、熱心に探し始めました。
(「ああ、あったあった。ここにもひとつおちている」)
「ああ、あったあった。ここにも一つ落ちている」
(かいちゅうでんとうのひかりのなかに、あたらしいなまりのばっじがきらきらと)
懐中電灯の光の中に、新しい鉛のバッジがキラキラと
(かがやいているのです。「てきのじどうしゃは、このみちを)
輝いているのです。「敵の自動車は、この道を
(とおったにちがいない。きみ、ふえをふいて、みんなを)
通ったに違いない。きみ、笛を吹いて、みんなを
(あつめよう」ふたりはぽけっとのななつどうぐのなかから)
集めよう」二人はポケットの七つ道具の中から
(ふえをとりだして、おもいっきりふきました。)
笛を取り出して、思いっきり吹きました。
(よるのそらに、はげしいふえのおとがひびきわたりますと、)
夜の空に、激しい笛のおとが響き渡りますと、
(まださほどとおくへいっていなかったのこりの)
まださほど遠くへ行っていなかった残りの
(ごにんのしょうねんが、かれらもふえでこたえながら、)
五人の少年が、彼らも笛で答えながら、
(どこからともなく、そのばへあつまってきました。)
どこからともなく、その場へ集まってきました。