『少年探偵団』江戸川乱歩22

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少年探偵団シリーズ第2作品『少年探偵団』
※分かりやすくする為、表記等を一部改変しております

○少年探偵団シリーズ第2作品『少年探偵団』
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1 berry 8143 8.3 97.5% 513.4 4288 107 96 2024/03/17

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問題文

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(おれじしんでさえ、ほんとうのじぶんが、どんなかおなのか、)

おれ自身でさえ、本当の自分が、どんな顔なのか、

(わすれてしまったほどだからねえ。だが、はくぶつかんの)

忘れてしまったほどだからねえ。 だが、博物館の

(まえで、ちょこちょことにげだして、こどもたちに)

前で、チョコチョコと逃げ出して、子どもたちに

(くみふせられるなんて、にじゅうめんそうともあろうものが、)

組み伏せられるなんて、二十面相ともあろう者が、

(あんなへまをするとでもおもっていたのかい。)

あんなヘマをするとでも思っていたのかい。

(あれがにじゅうめんそうのさいごでは、ちっとばかりかわいそう)

あれが二十面相の最後では、ちっとばかり可哀想

(というもんだよ」にじゅうめんそうは、まくしたてるように)

というもんだよ」 二十面相は、まくしたてるように

(しゃべりつづけて、またしても、われるようにわらう)

しゃべり続けて、またしても、われるように笑う

(のでした。「たいへんないきおいだねえ。だが、むかしのことは)

のでした。「大変な勢いだねえ。だが、昔のことは

(ともかくとして、けっきょく、しょうりはぼくのものだった)

ともかくとして、結局、勝利はぼくのものだった

(じゃないか。せっかくのいんどじんのおおしばいも、)

じゃないか。せっかくのインド人の大芝居も、

(とうとうみやぶられてしまったじゃないか」あけちたんていは)

とうとう見破られてしまったじゃないか」 明智探偵は

(すこしもさわがず、にこにことびしょうしながらこたえました。)

少しも騒がず、ニコニコと微笑しながら答えました。

(「いんどじんのおおしばいか。おもしろかったねえ。おれはね、)

「インド人の大芝居か。面白かったねえ。おれはね、

(しのざきしがほうせきのいんねんばなしをしているのをきいて)

篠崎氏が宝石の因縁話をしているのを聞いて

(しまったんだよ。そして、やたらとあのほうせきがほしく)

しまったんだよ。そして、やたらとあの宝石が欲しく

(なったのさ。そこで、ほうせきをてにいれたうえ、せけんを)

なったのさ。そこで、宝石を手に入れた上、世間を

(あっといわせてやろうと、あのおおしばいをおもいついた)

アッと言わせてやろうと、あの大芝居を思いついた

(のだよ。いんどじんがはんにんだとすれば、まさか)

のだよ。 インド人が犯人だとすれば、まさか

(にじゅうめんそうをうたがうやつはいないからね。ただほうせきだけ)

二十面相を疑うやつはいないからね。ただ宝石だけ

など

(ぬすんだのじゃあ、なにしろかねめのものだから、けいさつの)

盗んだのじゃあ、なにしろ金目の物だから、警察の

(そうさくがうるさいのでねえ。ところで、きみはおれを)

捜索がうるさいのでねえ。 ところで、きみはおれを

(どうしようというのだい。たったひとりで、にじゅうめんそうの)

どうしようというのだい。たった一人で、二十面相の

(ほんきょちへとびこんでくるなんて、すこしむぼうだった)

本拠地へ飛び込んで来るなんて、少し無謀だった

(ねえ。きのどくだけれど、かえりうちだぜ。きみをもう)

ねえ。気の毒だけれど、返り討ちだぜ。きみをもう

(このへやからいっぽだって、だしゃあしないぜ」)

この部屋から一歩だって、だしゃあしないぜ」

(にじゅうめんそうは、おいつめられたけだもののような、)

二十面相は、追いつめられたケダモノのような、

(しょうきをうしなったぎょうそうで、あけちたんていにつかみかからん)

正気を失った形相で、明智探偵につかみかからん

(ばかりです。「ははは、おいにじゅうめんそうくん、)

ばかりです。「ハハハ、おい二十面相君、

(ぼくがひとりぼっちかどうか、ちょっとうしろをむいて)

ぼくが一人ぼっちかどうか、ちょっとうしろを向いて

(ごらん」たんていのことばに、にじゅうめんそうはぎょっとして、)

ごらん」 探偵の言葉に、二十面相はギョッとして、

(くるっと、うしろのどあのほうをふりむきました。)

クルッと、うしろのドアのほうを振り向きました。

(すると、ああ、これはどうでしょう。いつのまに)

すると、ああ、これはどうでしょう。いつのまに

(しのびこんだのか、いっぱいにひらかれたどあのそとには、)

忍び込んだのか、一杯にひらかれたドアの外には、

(おしかさなるようにして、ごにんのせいふくけいかんが、おもおもしく)

押し重なるようにして、五人の制服警官が、重々しく

(たちはだかっていました。「ちくしょうめ。)

立ちはだかっていました。「ちくしょうめ。

(やりやがったな」にじゅうめんそうはふいをうたれて、)

やりやがったな」 二十面相は不意を打たれて、

(よろよろとよろめきながら、さもくやしそうにわめき)

ヨロヨロとよろめきながら、さも悔しそうにわめき

(ました。そして、いきなりいっぽうのまどのほうへかけより)

ました。そして、いきなり一方の窓のほうへ駆け寄り

(ます。「おい、まどからとびおりるなんて、つまらない)

ます。「おい、窓から飛び降りるなんて、つまらない

(かんがえはよしたほうがいいぜ。ねんのためにいっておく)

考えはよしたほうがいいぜ。念のために言っておく

(がね、このいえのまわりは、ごじゅうにんのけいかんがとりかこんで)

がね、この家の周りは、五十人の警官が取り囲んで

(いるんだよ」あけちたんていがにのやをはなちました。)

いるんだよ」 明智探偵が二の矢を放ちました。

(「うー、そうか。よくてがまわったなあ」)

「うー、そうか。よく手がまわったなあ」

(にじゅうめんそうはまどをひらいて、くらやみのちじょうをみおろす)

二十面相は窓をひらいて、暗闇の地上を見おろす

(ようなしぐさをしましたが、またくるっとこちらを)

ような仕草をしましたが、またクルッとこちらを

(むいて、「ところがねえ、たったひとつ、きみたちの)

向いて、「ところがねえ、たった一つ、きみたちの

(てのとどかないばしょがあるんだよ。これがおれのさいごの)

手の届かない場所があるんだよ。これがおれの最後の

(きりふださ。どこだとおもうかね。それはね、こうさ」)

切り札さ。どこだと思うかね。それはね、こうさ」

(いいはなったかとおもうと、にじゅうめんそうのじょうはんしんが、)

言い放ったかと思うと、二十面相の上半身が、

(ぐーっとまどのそとへのりだし、そのままさっとやみの)

グーッと窓の外へ乗り出し、そのままサッと闇の

(くうかんへきえさってしまいました。それはまるで)

空間へ消え去ってしまいました。 それはまるで

(きかいじかけのにんぎょうが、かたんとひっくりかえる)

機械仕掛けの人形が、カタンとひっくりかえる

(ような、めにもとまらぬはやわざでした。にじゅうめんそうは、)

ような、目にもとまらぬ早ワザでした。 二十面相は、

(いったいなにをしたのでしょう。まどのそとへとびおりて、)

一体何をしたのでしょう。窓の外へ飛び降りて、

(にげさるつもりだったのでしょうか。)

逃げ去るつもりだったのでしょうか。

(しかし、あけちたんていはうそをいったのではありません。)

しかし、明智探偵はウソを言ったのではありません。

(このようかんのまわりには、ほんとうにすうじゅうにんのけいかんたいが)

この洋館の周りには、本当に数十人の警官隊が

(とりまいているのです。そのかこみをきりぬけて、)

取り巻いているのです。その囲みを切り抜けて、

(にげだすことなどおもいもおよびません。あけちたんていは、)

逃げ出すことなど思いも及びません。 明智探偵は、

(にじゅうめんそうのすがたがまどのそとにきえたのをみると、いそいで)

二十面相の姿が窓の外に消えたのを見ると、急いで

(そこにかけより、ちじょうをみおろしましたが、これは)

そこに駆け寄り、地上を見おろしましたが、これは

(ふしぎ、ちじょうにはまったくひとのすがたがありません。)

不思議、地上にはまったく人の姿がありません。

(やみよとはいえ、かいかのへやのまどあかりで、にわが)

闇夜とはいえ、階下の部屋の窓明かりで、庭が

(おぼろげにみえているのですが、そのにわにいま、)

おぼろげに見えているのですが、その庭に今、

(とびおりたばかりのにじゅうめんそうのすがたはないのです。)

飛び降りたばかりの二十面相の姿はないのです。

(「おい、ここだ、ここだ。きみはあべこべのりくつを)

「おい、ここだ、ここだ。きみはあべこべの理屈を

(わすれたのかい。おれはとびおりたのではなくて、)

忘れたのかい。おれは飛び降りたのではなくて、

(しょうてんしているんだぜ。あくまのしょうてんさ。ははは」)

昇天しているんだぜ。悪魔の昇天さ。ハハハ」

(くうちゅうからひびくにじゅうめんそうのこえに、ひょいとうえをみた)

空中から響く二十面相の声に、ヒョイと上を見た

(たんていは、あまりのいがいさに、おもわずあっとこえをたてて)

探偵は、あまりの意外さに、思わずアッと声をたてて

(しまいました。ごらんなさい。にじゅうめんそうはまるで)

しまいました。 ご覧なさい。二十面相はまるで

(きょくげいしかのように、やねからさがったいっぽんのつなを)

曲芸師かのように、屋根からさがった一本の綱を

(つかんで、するするとおくじょうへとのぼっていくでは)

つかんで、スルスルと屋上へとのぼっていくでは

(ありませんか。ほんとうにあくまのしょうてんです。たんていには)

ありませんか。本当に悪魔の昇天です。 探偵には

(みえませんでしたけれど、やねのうえには、しろいうわぎを)

見えませんでしたけれど、屋根の上には、白い上着を

(きたれいのこっくが、あしをふんばって、やねのちょうじょうに)

着た例のコックが、足を踏ん張って、屋根の頂上に

(むすびつけたつなを、ぐんぐんとひきあげています。)

結びつけた綱を、グングンと引き上げています。

(したからは、たぐりのぼるちから、うえからはひきあげるちから、)

下からは、たぐりのぼる力、上からは引き上げる力、

(そのりょうほうのちからがくわわって、にじゅうめんそうはみるみるやねに)

その両方の力が加わって、二十面相はみるみる屋根に

(のぼりつき、かわらのうえにはいあがってしまいました。)

のぼりつき、瓦の上に這い上がってしまいました。

(さっき、まどからこっくのかおがのぞいたのは、つなの)

さっき、窓からコックの顔がのぞいたのは、綱の

(よういができましたよ、というあいずだったのです。)

用意が出来ましたよ、という合図だったのです。

(かれはたぶん、つなのはしにからだをくくりつけて、さかさまに)

彼は多分、綱のはしに体をくくりつけて、逆さまに

(まどのそとへぶらさがったのでしょう。こうして、かいとうの)

窓の外へぶらさがったのでしょう。 こうして、怪盗の

(すがたは、またたくまにあけちたんていのめのなかからきえて)

姿は、またたくまに明智探偵の目の中から消えて

(しまいましたが、しかし、やねのうえなどへにげて、)

しまいましたが、しかし、屋根の上などへ逃げて、

(いったいどうしようというのでしょう。さびしいいっけんや)

一体どうしようというのでしょう。さびしい一軒屋

(のことですから、まわりはしほうともあきちで、)

のことですから、周りは四方とも空き地で、

(まちなかのようにやねからやねをつたってにげるしゅだんも)

町なかのように屋根から屋根をつたって逃げる手段も

(ありません。それに、ようかんぜんたいに、おびただしい)

ありません。 それに、洋館全体に、おびただしい

(けいかんたいがとりかこんでいるのです。まったく)

警官隊が取り囲んでいるのです。まったく

(ふくろのねずみもどうぜんではありませんか。やねのうえには)

袋のネズミも同然ではありませんか。屋根の上には

(のみみずやしょくりょうがあるわけでもないでしょうから、)

飲み水や食料があるわけでもないでしょうから、

(いつまでもそんなばしょにいることはできません。)

いつまでもそんな場所に居ることは出来ません。

(あめでもふれば、ふたりはあわれな、ぬれねずみです。)

雨でも降れば、二人は哀れな、ぬれネズミです。

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