『少年探偵団』江戸川乱歩30

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少年探偵団シリーズ第2作品『少年探偵団』
※分かりやすくする為、表記等を一部改変しております

○少年探偵団シリーズ第2作品『少年探偵団』
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問題文

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(しょうじょは、てのひらのもじにあおざめているおおとりしを、)

少女は、てのひらの文字に青ざめている大鳥氏を、

(なんだかおかしそうにみつめていましたが、やがて)

なんだかおかしそうに見つめていましたが、やがて

(さっとかおをかくし、いたどのおとがしないよう、そろそろと)

サッと顔を隠し、板戸の音がしないよう、ソロソロと

(しめてしまいました。このしょうじょは、かぎのかけてある)

しめてしまいました。 この少女は、カギのかけてある

(いたどを、どうしてひらくことができたのでしょう。)

板戸を、どうしてひらくことが出来たのでしょう。

(いや、それよりも、まだやとわれたばかりのこむすめの)

いや、それよりも、まだ雇われたばかりの小娘の

(くせに、なんというあやしげなふるまいをするやつ)

くせに、なんという怪しげな振る舞いをするやつ

(でしょう。おおとりしもてんいんも、まだこのことにすこしも)

でしょう。 大鳥氏も店員も、まだこのことに少しも

(きづいていないようですが、わたしたちは、このしょうじょの)

気づいていないようですが、私たちは、この少女の

(こうどうを、ゆだんなくみはっていなければなりません。)

行動を、油断なく見張っていなければなりません。

(「きみょうなけいかく」)

「奇妙な計画」

(「あと、もうみっかしかないぞ」てのひらにかかれた)

「あと、もう三日しかないぞ」てのひらに書かれた

(よこくのすうじに、しゅじんのおおとりしはすっかりおどかされて)

予告の数字に、主人の大鳥氏はすっかりおどかされて

(しまいました。ぞくはおうごんとうのへやへ、くもなく)

しまいました。 賊は黄金塔の部屋へ、苦もなく

(しのびこんだばかりか、ねむっているしゅじんの)

忍び込んだばかりか、ねむっている主人の

(てのひらに、ふででもじをかいたのです。いたどと)

てのひらに、筆で文字を書いたのです。板戸と

(ひじょうべるの、ふたつのかんもんはなんのこうかもなかった)

非常ベルの、二つの関門は何の効果もなかった

(のです。このぶんではだいさんのかんもんも、しんようすることは)

のです。このぶんでは第三の関門も、信用することは

(できないかもしれません。まじゅつしにじゅうめんそうに)

出来ないかもしれません。魔術師二十面相に

(かかっては、どんなかがくのちからもききめを)

かかっては、どんな科学の力も効き目を

など

(あらわさないのかもしれません。にじゅうめんそうはなにかきたい)

あらわさないのかもしれません。二十面相は何か気体

(のようにふわふわした、おばけみたいなものにへんしん)

のようにフワフワした、お化けみたいなものに変身

(しているとしかかんがえられないのですから。おおとりしは)

しているとしか考えられないのですから。 大鳥氏は

(さまざまなことをかんがえながら、おうごんとうのまえにすわりつづけて)

様々なことを考えながら、黄金塔の前に座り続けて

(いました。ひとときもめをはなすきになれないのです。)

いました。ひと時も目を離す気になれないのです。

(めをはなせば、たちまちきえてしまうようなきがする)

目を離せば、たちまち消えてしまうような気がする

(のです。さて、そのひのおひるすぎのことでした。)

のです。 さて、その日のお昼過ぎのことでした。

(おおとりとけいてんのしはいにんであるかどのろうじんが、なにかおおきな)

大鳥時計店の支配人である門野老人が、何か大きな

(ふろしきづつみをかかえて、てんいんたちのめをしのぶように)

風呂敷包みをかかえて、店員たちの目を忍ぶように

(して、おくのまのおおとりしのところへやってきました。)

して、奥の間の大鳥氏の所へやって来ました。

(かどのしはいにんは、このみせのえいぎょうやけいりをあつかうひとで、)

門野支配人は、この店の営業や経理を扱う人で、

(おとうさんのだいからにだいつづくやくしょくで、おおとりけのかぞくも)

おとうさんの代から二代続く役職で、大鳥家の家族も

(どうぜんなじんぶつですから、したがってしゅじんのしんようもひじょうに)

同然な人物ですから、したがって主人の信用も非常に

(あつく、このひとだけにはいたどのあいかぎもあずけ、)

厚く、この人だけには板戸の合いカギもあずけ、

(そのほかのぼうびそうちのとりあつかいかたもしらせてある)

そのほかの防備装置の取り扱い方も知らせてある

(のです。ですからしはいにんは、いつでもじゆうにおくざしきに)

のです。 ですから支配人は、いつでも自由に奥座敷に

(はいることができます。たたみのひじょうべるのしかけも、)

入ることが出来ます。畳の非常ベルの仕掛けも、

(はしらのかくしぼたんをおしてでんりゅうをきってしまえば、)

柱の隠しボタンを押して電流を切ってしまえば、

(いくらへやのなかをあるいても、すこしもものおとはしない)

いくら部屋の中を歩いても、少しも物音はしない

(のです。かどのしはいにんは、そうしてなんどもいたどをでたり)

のです。 門野支配人は、そうして何度も板戸を出たり

(はいったりしてひとめをしのびながら、まずいちばんに)

入ったりして人目を忍びながら、まず一番に

(いちめーとるもあるほそながいふろしきづつみを、つぎにかたちは)

一メートルもある細長い風呂敷包みを、次に形は

(ちいさいけれどたいへんおもそうなふろしきづつみをいつつ、)

小さいけれど大変重そうな風呂敷包みを五つ、

(つぎつぎにざしきのなかへはこびました。「おいおい、)

次々に座敷の中へ運びました。「おいおい、

(かどのくん、きみはいったいなにをもちこんできたんだね。)

門野君、きみは一体何を持ち込んできたんだね。

(しょうばいのはなしなら、べつのへやにしてほしいんだが」)

商売の話なら、別の部屋にしてほしいんだが」

(しゅじんのおおとりしは、しはいにんのみょうなしぐさをあっけに)

主人の大鳥氏は、支配人のみょうな仕草をあっけに

(とられてながめていましたが、たまりかねたように、)

とられてながめていましたが、たまりかねたように、

(こうこえをかけました。するとしはいにんはいたどを)

こう声をかけました。 すると支配人は板戸を

(しめきって、しゅじんのそばへよりながら、こえをひそめて)

しめきって、主人のそばへ寄りながら、声をひそめて

(ささやくのです。「いや、しょうだんではございません。)

ささやくのです。「いや、商談ではございません。

(だんなさま、おわすれになりましたか。ほら、わたしが)

旦那さま、お忘れになりましたか。ほら、私が

(よっかほどまえにもうしあげたことを」「え、よっかまえ)

四日ほど前に申し上げたことを」「え、四日前

(だって。ああ、そうか。おうごんとうのかえだまのはなし)

だって。ああ、そうか。黄金塔の替え玉の話

(だったね」「そうですよ、だんなさま。もうこう)

だったね」「そうですよ、旦那さま。もうこう

(なっては、あのほかにてはございませんよ。ぞくは)

なっては、あのほかに手はございませんよ。賊は

(かんたんに、このへやへはいってきたじゃございませんか。)

簡単に、この部屋へ入って来たじゃございませんか。

(せっかくのぼうびそうちも、なんのききめもありません。)

せっかくの防備装置も、何の効き目もありません。

(ですから、わたしのかんがえをじっこうするというほかには、)

ですから、私の考えを実行するというほかには、

(とうなんをふせぐしゅだんはありません。あいてがまほうつかい)

盗難をふせぐ手段はありません。相手が魔法使い

(なら、こちらもまほうをつかうまででございますよ」)

なら、こちらも魔法を使うまででございますよ」

(しはいにんは、しらがあたまをふって、いっそうこえをひくくしていう)

支配人は、しらが頭をふって、一層声を低くして言う

(のです。「うん、いまになってみると、きみのかんがえに)

のです。「うん、今になってみると、きみの考えに

(したがっておけばよかったとおもうが、しかし、)

したがっておけばよかったと思うが、しかし、

(もうておくれだ。これからおうごんとうのかえだまをつくる)

もう手遅れだ。これから黄金塔の替え玉を作る

(なんて、むりだからね」「いや、だんなさま、ごしんぱい)

なんて、無理だからね」「いや、旦那さま、ご心配

(むようです。わたしはまんいちのばあいをかんがえまして、あのとき)

無用です。私は万一の場合を考えまして、あの時

(すぐしょくにんへちゅうもんしておきましたのですが、それが、)

すぐ職人へ注文しておきましたのですが、それが、

(ただいまできあがってまいりました。これが、)

ただ今出来上がってまいりました。これが、

(そのかえだまでございますよ」しはいにんはほこらしげに、)

その替え玉でございますよ」 支配人は誇らしげに、

(おもそうないつつのふろしきづつみをゆびさしてみせました。)

重そうな五つの風呂敷包みを指さしてみせました。

(「ほう、それはよういがいいね。だが、そのしょくにんから)

「ほう、それは用意がいいね。だが、その職人から

(ぞくのほうへもれるようなことはないだろうね」)

賊のほうへ漏れるようなことはないだろうね」

(「だいじょうぶです。そこはじゅうぶんねんをおして、かたくひみつを)

「大丈夫です。そこは充分念を押して、固く秘密を

(まもらせることにしてあります」「それじゃひとつ、)

守らせることにしてあります」「それじゃ一つ、

(かえだまというものをみせてもらおうか」「よろしゅう)

替え玉というものを見せてもらおうか」「よろしゅう

(ございます。しかし、もしいえのなかにぞくのてさきが)

ございます。しかし、もし家の中に賊の手先が

(いるかもしれませんから、ねんにはねんをいれて)

いるかもしれませんから、念には念をいれて

(しめさせていただきます」しはいにんは、そういいながら)

しめさせていただきます」 支配人は、そう言いながら

(たちあがっていたどをひらき、そとにだれもいないことを)

立ち上がって板戸をひらき、外にだれもいないことを

(たしかめ、げんじゅうにうちがわからかぎをかけました。そして、)

確かめ、厳重に内側からカギをかけました。 そして、

(しゅじんとふたりがかりで、いつつのふろしきをとき、)

主人と二人がかりで、五つの風呂敷をとき、

(いっかいずつにぶんかいされたごじゅうのとうをとりだしました。)

一階ずつに分解された五重の塔を取り出しました。

(みれば、とこのまにあんちしてあるものとすんぶんたがわない)

見れば、床の間に安置してあるものと寸分たがわない

(ごじゅうのとうが、いつつにわかれてきらきらかがやいている)

五重の塔が、五つにわかれてキラキラ輝いている

(のです。「うーむ、よくにせたものだね。これじゃ、)

のです。「うーむ、よく似せたものだね。これじゃ、

(わしにもみわけがつかないくらいだ」「さようで)

わしにも見分けがつかないくらいだ」「左様で

(ございます。そとはおうどうでつくらせ、それにきんめっきを)

ございます。外は黄銅で作らせ、それに金メッキを

(ほどこしました。なかみは、おもさをつくるためになまりに)

ほどこしました。中身は、重さを作るために鉛に

(しました。これで、こうたくもおもさも、ほんものどうようになって)

しました。これで、光沢も重さも、本物同様になって

(おります」しはいにんはとくいげにもうします。)

おります」 支配人は得意気に申します。

(「それで、ほんものをゆかしたにうめ、にせもののほうをとこのまに)

「それで、本物を床下に埋め、偽物のほうを床の間に

(かざっておくというけいかくだったね」「はい、さようです。)

飾っておくという計画だったね」「はい、左様です。

(そうすれば、ぞくはにせものとしらずにぬすみだし、)

そうすれば、賊は偽物と知らずに盗み出し、

(さぞくやしがるでしょうね。にせものといっても、このとおり)

さぞ悔しがるでしょうね。偽物と言っても、この通り

(おもいので、ぬすみだしたとしても、いかなるかいとうもはしる)

重いので、盗み出したとしても、いかなる怪盗も走る

(ことはできません。そのよわみにつけこんで、あけちさん)

ことは出来ません。その弱みにつけこんで、明智さん

(なり、けいさつのかたなりに、ひっとらえていただこう)

なり、警察のかたなりに、ひっとらえていただこう

(というわけでございます」「うむ、そういけばいいが、)

という訳でございます」「うむ、そういけばいいが、

(はたしてうまくいくものだろうか」)

果たしてうまくいくものだろうか」

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