『少年探偵団』江戸川乱歩31

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少年探偵団シリーズ第2作品『少年探偵団』
※分かりやすくする為、表記等を一部改変しております

○少年探偵団シリーズ第2作品『少年探偵団』
前回→https://typing.twi1.me/game/329838
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初回→https://typing.twi1.me/game/329807

第1作品→https://typing.twi1.me/game/314206
順位 名前 スコア 称号 打鍵/秒 正誤率 時間(秒) 打鍵数 ミス 問題 日付
1 かす 6589 S+ 7.0 94.3% 666.7 4675 282 99 2024/06/08
2 kuma 5422 B++ 5.8 92.9% 800.6 4698 357 99 2024/06/23

関連タイピング

問題文

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(おおとりしは、まだすこしためらいぎみです。「いや、)

大鳥氏は、まだ少しためらい気味です。「いや、

(それはもうだいじょうぶでございます。どうかわたしにおまかせ)

それはもう大丈夫でございます。どうか私におまかせ

(ください。かならずにじゅうめんそうのうらをかいて、あっと)

ください。必ず二十面相の裏をかいて、アッと

(いわせてみせます」しはいにんは、もうかいとうをとらえた)

いわせてみせます」 支配人は、もう怪盗をとらえた

(ようなはないきです。「よろしい。きみがそれまでいう)

ような鼻息です。「よろしい。きみがそれまで言う

(のなら、すべてまかせることにしよう。じゃひとつ、)

のなら、すべて任せることにしよう。じゃ一つ、

(そのにせものをあのわくのなかへつみあげてみようじゃ)

その偽物をあの枠の中へ積み上げてみようじゃ

(ないか」しゅじんもやっとなっとくして、それからふたり)

ないか」 主人もやっと納得して、それから二人

(がかりで、ほんものとにせものをとりかえました。「おお、)

がかりで、本物と偽物を取り替えました。「おお、

(りっぱだ。かたちといいいろつやといい、だれがこれをにせもの)

立派だ。形といい色つやといい、だれがこれを偽物

(だとおもうだろう。かどのくん、こりゃうまくいきそう)

だと思うだろう。門野君、こりゃうまくいきそう

(だね」おおとりしは、わくのなかにつみあげられたにせものの)

だね」 大鳥氏は、枠の中に積み上げられた偽物の

(ごじゅうのとうをながめて、かんしんしたようにつぶやき)

五重の塔をながめて、感心したようにつぶやき

(ました。このとりかえのさいには、れいのせきがいせんそうちを)

ました。この取り替えの際には、例の赤外線装置を

(とめて、ぴすとるがはっしゃしないようにしておいた)

止めて、ピストルが発射しないようにしておいた

(ことはもうすまでもありません。「それじゃ、ほんものの)

ことは申すまでもありません。「それじゃ、本物の

(ほうを、ふたりですぐゆかしたにうめることにしようじゃ)

ほうを、二人ですぐ床下に埋めることにしようじゃ

(ないか」いまでは、しゅじんのおおとりしもやるきになって)

ないか」 今では、主人の大鳥氏もやる気になって

(います。ふたりはできるだけものおとをたてないように)

います。二人は出来るだけ物音をたてないように

(ちゅういしながら、へやのまんなかのたたみをめくり、そのしたの)

注意しながら、部屋の真ん中の畳をめくり、その下の

など

(ゆかいたをとりはずしました。「くわも、ちゃんとよういして)

床板を取り外しました。「クワも、ちゃんと用意して

(まいりました」しはいにんはさいしょにもちこんでおいた、)

まいりました」 支配人は最初に持ち込んでおいた、

(ながいふろしきづつみをひらいて、いっちょうのくわをとりだし)

長い風呂敷包みをひらいて、一丁のクワを取り出し

(ますと、いきなりきもののすそをそとがわにおりあげて、)

ますと、いきなり着物の裾を外側に折り上げて、

(ゆかいたのしたのじめんにおりました。そのときです。ふたりが)

床板の下の地面におりました。 その時です。二人が

(しごとにむちゅうになってすこしもきづかないでいるすきに、)

仕事に夢中になって少しも気づかないでいる隙に、

(またしてもいたどのいちまいが、おともなくすーっとほそめに)

またしても板戸の一枚が、音もなくスーッと細めに

(ひらき、そこからみおぼえのあるかおがそっとしつないの)

ひらき、そこから見覚えのある顔がソッと室内の

(ようすをのぞきこんだではありませんか。)

様子をのぞき込んだではありませんか。

(あのかわいらしいおてつだいさんです。なぞのこむすめです。)

あの可愛らしいお手伝いさんです。謎の小娘です。

(こむすめは、しばらくふたりのようすをながめたうえ、またおとも)

小娘は、しばらく二人の様子をながめた上、また音も

(なくとをしめてたちさってしまいましたが、それから)

なく戸をしめて立ち去ってしまいましたが、それから

(ごふんほどたって、しはいにんのかどのろうじんが、やっとあなを)

五分ほどたって、支配人の門野老人が、やっと穴を

(ほりおわったころ、とつぜん、いえのうらてのほうから、)

掘り終わった頃、突然、家の裏手のほうから、

(おそろしいさけびごえがきこえてきました。「かじだあ。)

おそろしい叫び声が聞こえてきました。「火事だあ。

(だれかきてくれえ。かじだあ」てんいんのこえです。)

だれか来てくれえ。火事だあ」 店員の声です。

(あと、もうさんじゅっぷんでほんもののおうごんとうをうめることが)

あと、もう三十分で本物の黄金塔を埋めることが

(できる、きわどいときに、このさわぎです。「おい、)

出来る、際どい時に、この騒ぎです。「おい、

(たいへんだ。ともかくとうやくわをゆかしたにかくして、たたみをもとに)

大変だ。ともかく塔やクワを床下に隠して、畳を元に

(もどそう。はやくはやく」しゅじんとしはいにんはちからをあわせて、)

戻そう。早く早く」 主人と支配人は力を合わせて、

(とうのいつつのぶぶんをゆかしたになげ、ゆかいたをもとどおりにして、)

塔の五つの部分を床下に投げ、床板を元通りにして、

(たたみをしき、へやにはそとからかぎをかけて、おおいそぎで)

畳を敷き、部屋には外からカギをかけて、大急ぎで

(かじのげんばへかけつけました。うらにわへでてみますと、)

火事の現場へ駆けつけました。 裏庭へ出てみますと、

(にわのすみのものおきごやから、さかんにひがふいています。)

庭の隅の物置き小屋から、盛んに火が吹いています。

(さいわい、おもやからはなれたちいさなこやでしたので、)

さいわい、母屋から離れた小さな子屋でしたので、

(ふきんにもえうつるかのうせいはさほどありませんが、しかし)

付近に燃え移る可能性はさほどありませんが、しかし

(ほっておいてはどんなおおごとになるかわかりません。)

放っておいてはどんな大事になるかわかりません。

(おおとりしはしはいにんとともにてんいんをよびあつめ、こえのかぎりに)

大鳥氏は支配人と共に店員を呼び集め、声の限りに

(さしずし、やっとしゅっかをけしとめることができました。)

指図し、やっと出火を消し止めることが出来ました。

(かろうじてしょうぼうしゃのしゅつどういらいをせずにすんだのです。)

かろうじて消防車の出動依頼をせずに済んだのです。

(そのかじさわぎが、ややにじゅっぷんほどもつづきましたが、)

その火事騒ぎが、やや二十分ほども続きましたが、

(そのあいだにおうごんとうのへやには、みょうなことが)

そのあいだに黄金塔の部屋には、みょうなことが

(おこっていました。しゅじんをふくんだてんいんたちが、みんな)

起こっていました。 主人を含んだ店員たちが、みんな

(かじばのほうへいっているすきをめがけて、ちいさなひとの)

火事場のほうへ行っている隙をめがけて、小さな人の

(すがたが、かぎのかかったいたどをくもなくあけて、すべる)

姿が、カギのかかった板戸を苦もなくあけて、すべる

(ようにへやのなかへはいっていったのです。それは、)

ように部屋の中へ入って行ったのです。 それは、

(じょがくせいのようなながいかみをたばねた、かわいらしいしょうじょ)

女学生のような長い髪を束ねた、可愛らしい少女

(です。いわずとしれた、しんいりのおてつだいさんです。)

です。言わずと知れた、新入りのお手伝いさんです。

(なぞのしょうじょです。しょうじょはおうごんとうのへやへはいったまま、)

謎の少女です。 少女は黄金塔の部屋へ入ったまま、

(なにをしているのでしょうか。しばらくのあいだすがたを)

何をしているのでしょうか。しばらくのあいだ姿を

(あらわしませんでしたが、やがてじゅっぷんあまりもすると、)

現しませんでしたが、やがて十分余りもすると、

(いたどがおともなくひらいて、しょうじょはへやからでて、)

板戸が音もなくひらいて、少女は部屋から出て、

(ちゅういぶかくとをしめると、そのままだいどころのほうへ)

注意深く戸をしめると、そのまま台所のほうへ

(たちさってしまいました。このなぞのしょうじょは、いったいなにもの)

立ち去ってしまいました。この謎の少女は、一体何者

(なのでしょうか。てぶらでへやをでていったところを)

なのでしょうか。手ぶらで部屋を出て行ったところを

(みますと、とうをぬすみにはいったものともおもわれません。)

みますと、塔を盗みに入った者とも思われません。

(では、なにをしにはいったのでしょう。どくしゃしょくん、ためしに)

では、何をしに入ったのでしょう。読者諸君、試しに

(そうぞうしてごらんなさい。それはともかく、やがて、)

想像してごらんなさい。 それはともかく、やがて、

(かじさわぎがしずまりますと、おおとりしとしはいにんはおおいそぎで)

火事騒ぎが静まりますと、大鳥氏と支配人は大急ぎで

(おくざしきへひきかえしました。そしてかどのさんはかたはだを)

奥座敷へ引き返しました。そして門野さんは片肌を

(ぬぎ、またたたみをあげてゆかいたをはずし、くわをてにして)

脱ぎ、また畳を上げて床板を外し、クワを手にして

(ゆかしたにおりました。おおとりしは、もしやいまのさわぎの)

床下におりました。 大鳥氏は、もしや今の騒ぎの

(あいだに、だれかがこのへやへはいって、たたみのしたの)

あいだに、だれかがこの部屋へ入って、畳の下の

(おうごんとうをぬすんでいったのではないかとおもい、しはいにんが)

黄金塔を盗んで行ったのではないかと思い、支配人が

(ゆかいたをはずすのも、もどかしくえんのしたをのぞきこみ)

床板を外すのも、もどかしく縁の下をのぞき込み

(ましたが、おうごんとうにはなんのいじょうもなく、くろいつちの)

ましたが、黄金塔には何の異状もなく、黒い土の

(うえにぴかぴかひかっているのをみて、やっとあんしん)

上にピカピカ光っているのを見て、やっと安心

(しました。やがてかどのしはいにんは、おうごんとうをゆかしたの)

しました。 やがて門野支配人は、黄金塔を床下の

(ふかいあなのなかにうめてしまいました。そして、ゆかいたと)

深い穴の中に埋めてしまいました。そして、床板と

(たたみをもとのとおりにして、「さあ、これでもうだいじょうぶ」)

畳を元の通りにして、「さあ、これでもう大丈夫」

(といわないばかりにしゅじんのかおをみて、にやにやと)

といわないばかりに主人の顔を見て、ニヤニヤと

(わらうのでした。こうしてほんもののたからものは、まったく)

笑うのでした。 こうして本物の宝物は、まったく

(ひとめにつかないばしょへ、じつにてぎわよくかくされて)

人目につかない場所へ、じつに手際よく隠されて

(しまいました。)

しまいました。

(「てんじょうのこえ」)

「天井の声」

(もうこれであんしんです。たとえにじゅうめんそうがよこくどおりに)

もうこれで安心です。たとえ二十面相が予告通りに

(やってきたとしても、おうごんとうはぜったいあんぜんなのです。)

やって来たとしても、黄金塔は絶対安全なのです。

(ぞくはとくいそうににせものをぬすみだしていくことでしょう。)

賊は得意そうに偽物を盗み出していくことでしょう。

(あのおおどろぼうをだましてやるなんて、じつにゆかいでは)

あの大泥棒をだましてやるなんて、じつに愉快では

(ありませんか。ぞくがゆかしたなんかにきづくはずは)

ありませんか。 賊が床下なんかに気づくはずは

(ありませんが、でもようじんにこしたことはありません。)

ありませんが、でも用心にこしたことはありません。

(おおとりしは、そのばんからほんもののおうごんとうがうめてある)

大鳥氏は、その晩から本物の黄金塔が埋めてある

(あたりのたたみのうえにふとんをしかせて、ねむることに)

あたりの畳の上に布団をしかせて、ねむることに

(しました。ひるまも、そのへやからいっぽもそとへでない)

しました。昼間も、その部屋から一歩も外へ出ない

(けっしんです。すると、みょうなことに「さん」のじが)

決心です。 すると、みょうなことに「三」の字が

(てのひらにあらわれていらい、すうじのよこくがぱったりと)

てのひらに現れて以来、数字の予告がパッタリと

(とだえてしまいました。ですがほんとうは、それにはふかい)

途絶えてしまいました。ですが本当は、それには深い

(わけがあったのですが、おおとりしはそこまで)

訳があったのですが、大鳥氏はそこまで

(きがつきません。)

気がつきません。

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