『妖怪博士』江戸川乱歩8

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少年探偵団シリーズ第3作品『妖怪博士』
※分かりやすくする為、表記等を一部改変しております

○少年探偵団シリーズ第3作品『妖怪博士』
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第1作品→https://typing.twi1.me/game/314206
順位 名前 スコア 称号 打鍵/秒 正誤率 時間(秒) 打鍵数 ミス 問題 日付
1 ヌオー 5644 A 6.0 94.2% 720.4 4332 266 100 2024/12/16
2 baru 3876 D++ 4.3 89.6% 1001.8 4392 509 100 2024/11/29
3 nao@koya 3378 D 3.5 94.2% 1223.1 4398 266 100 2024/12/17

関連タイピング

問題文

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(「たいちゃん、ほんとうにどうしたの。おかあさん、しんぱい)

「タイちゃん、本当にどうしたの。お母さん、心配

(するじゃありませんか。ね、なんとかいいなさい」)

するじゃありませんか。ね、なんとか言いなさい」

(おかあさんはまくらもとにすわって、やさしくたいじくんのかたを)

お母さんは枕元に座って、優しく泰二君の肩を

(ゆりうごかしながら、しんけんにたずねます。すると)

揺り動かしながら、真剣にたずねます。 すると

(たいじくんも、もうがまんできなくなったのか、なみだをいっぱい)

泰二君も、もう我慢出来なくなったのか、涙を一杯

(ためためをおかあさんのほうにむけて、やっとくちを)

ためた目をお母さんのほうに向けて、やっと口を

(ききました。「おかあさん、ぼく、くるしいんです」)

ききました。「お母さん、ぼく、苦しいんです」

(「え、くるしいって、どこが。どこがいたむの」)

「え、苦しいって、どこが。どこが痛むの」

(おかあさんはやさしいかおをすこしひだりのほうにかしげて、)

お母さんは優しい顔を少し左のほうにかしげて、

(さもしんぱいらしく、たいじくんのかおをのぞきこむように)

さも心配らしく、泰二君の顔をのぞきこむように

(しました。「いいえ、いたむんじゃありません。ぼく、)

しました。「いいえ、痛むんじゃありません。ぼく、

(しんぱいでたまらないのです」「ですから、いったいなにが)

心配でたまらないのです」「ですから、いったい何が

(そんなにしんぱいなの」「それがくちではいえないのです。)

そんなに心配なの」「それが口では言えないのです。

(はっきりわからないのです。でも、ぼく、いまになんだか)

ハッキリ分からないのです。でも、ぼく、今に何だか

(おそろしいことをしそうでしかたがないのです。ぼくの)

恐ろしいことをしそうで仕方がないのです。ぼくの

(こころのなかにべつのひとのこころがはいってきて、おそろしいことを)

心の中に別の人の心が入ってきて、恐ろしいことを

(めいれいしているようなきがしてしかたがないのです」)

命令しているような気がして仕方がないのです」

(それをきいて、おかあさんはぎょっとしたように、)

それを聞いて、お母さんはギョッとしたように、

(かおいろをあおくしました。たいじくんがなにをいっているのか)

顔色を青くしました。泰二君が何を言っているのか

(すこしもわからなかったからです。もしや、あたまがどうか)

少しも分からなかったからです。もしや、頭がどうか

など

(したのではないかと、びっくりしたのです。「ねえ、)

したのではないかと、ビックリしたのです。「ねえ、

(おかあさん、ぼく、おねがいがあるんだけど」たいじくんは)

お母さん、ぼく、お願いがあるんだけど」泰二君は

(ねつにうかされているようなめで、とてもせつなそうに)

熱にうかされているような目で、とても切なそうに

(いいました。「まあ、おかしいことをいうのね。)

言いました。「まあ、おかしいことを言うのね。

(おねがいだなんて。どんなことなの。はやくいってごらん)

お願いだなんて。どんなことなの。早く言ってごらん

(なさい。おかあさん、たいちゃんのことなら、なんでも)

なさい。お母さん、タイちゃんのことなら、なんでも

(きくよ」「へんなことだけど、おかあさん、びっくり)

聞くよ」「変なことだけど、お母さん、ビックリ

(しちゃいけないよ。あのー、ぼくをね、みうごき)

しちゃいけないよ。あのー、ぼくをね、身動き

(できないように、ろーぷでしばってほしいんです」)

出来ないように、ロープでしばって欲しいんです」

(おかあさんは「まあ」といったきり、つぎにいうことばも)

お母さんは「まあ」と言ったきり、次に言う言葉も

(でないようすで、かなしげにたいじくんをみつめました。)

出ない様子で、悲しげに泰二君を見つめました。

(こどもがおかあさんに、しばってくれとおねがいする)

子どもがお母さんに、しばってくれとお願いする

(なんて、しょうきのさたではありません。たいじくんは)

なんて、正気のさたではありません。泰二君は

(かわいそうに、ほんとうにきがへんになったのではない)

可哀想に、本当に気が変になったのではない

(でしょうか。「ねえ、おかあさん、おねがいです」)

でしょうか。「ねえ、お母さん、お願いです」

(「なにをいっているんです。たいちゃん、それは)

「何を言っているんです。タイちゃん、それは

(じょうだんなんでしょう。そんなことをいって、)

冗談なんでしょう。そんなことを言って、

(おかあさんをびっくりさせて、あとでわらおうとおもって)

お母さんをビックリさせて、あとで笑おうと思って

(いるんでしょう」「いいえ、じょうだんなんかじゃ)

いるんでしょう」「いいえ、冗談なんかじゃ

(ありません。ぼく、しんけんなんです。ほんとうにろーぷで)

ありません。ぼく、真剣なんです。本当にロープで

(しばってくれないと、あんしんできないんです」「まあ、)

しばってくれないと、安心出来ないんです」「まあ、

(ほんきでそんなことをいっているの。じゃあ、わけを)

本気でそんなことを言っているの。じゃあ、訳を

(はなしなさい。おかあさんが、おまえをしばったりなんか)

話しなさい。お母さんが、お前をしばったりなんか

(できるとおもうかい」「わけは、ぼくにもよく)

出来ると思うかい」「訳は、ぼくにもよく

(わからないんです。でも、どうしても、)

分からないんです。でも、どうしても、

(そうしなければ、あんしんできないんです。ねえ、)

そうしなければ、安心できないんです。ねえ、

(おかあさん、しばってください。おねがいです。)

お母さん、しばってください。お願いです。

(でないと、ぼく、きがくるいそうなんです」たいじくんの)

でないと、ぼく、気が狂いそうなんです」 泰二君の

(あおざめたかおをみると、なにかしらこころのなかで、はげしく)

青ざめた顔を見ると、なにかしら心の中で、激しく

(くるしみもだえていることが、はっきりわかります。)

苦しみもだえていることが、はっきりわかります。

(きがくるいそうだというのも、まんざらうそとはおもえ)

気が狂いそうだというのも、まんざら嘘とは思え

(ません。おかあさんはこまってしまいました。あいにく、)

ません。 お母さんは困ってしまいました。あいにく、

(おとうさんは、しごとでかんさいのほうへしゅっちょうちゅうですし、)

お父さんは、仕事で関西のほうへ出張中ですし、

(ほかはめしつかいばかりで、そんなときのそうだんあいてには)

ほかは召し使いばかりで、そんなときの相談相手には

(なりません。「ねえ、はやくしばってください。)

なりません。「ねえ、早くしばってください。

(でないと、ぼく、しにそうです」たいじくんはくるしそうに)

でないと、ぼく、死にそうです」 泰二君は苦しそうに

(もがきながら、ぽろぽろとなみだをこぼしています。)

もがきながら、ポロポロと涙をこぼしています。

(それをみると、おかあさんもむしょうにかなしくなって、)

それを見ると、お母さんも無性に悲しくなって、

(そででめのふちをふきました。「いいよいいよ。)

そでで目のふちを拭きました。「いいよいいよ。

(じゃあ、おかあさんがしばってあげるからね。)

じゃあ、お母さんがしばってあげるからね。

(そんなに、もがくんじゃありません。しずかにまって)

そんなに、もがくんじゃありません。静かに待って

(いてね」おかあさんは、とにかくたいじくんをあんしんさせる)

いてね」 お母さんは、とにかく泰二君を安心させる

(ために、まねごとでもしばるほかはないとかんがえた)

ために、真似事でもしばる他はないと考えた

(のでした。そしてものおきべやへいって、にもつをしばる)

のでした。そして物置部屋へ行って、荷物をしばる

(ためのろーぷのたばをもって、たいじくんのところへかえりました)

ためのロープの束を持って、泰二君の所へ帰りました

(が、いくらほんにんのたのみとはいえ、おやがわがこをしばる)

が、いくら本人の頼みとはいえ、親が我が子をしばる

(なんて、かたちだけにもせよ、いやなよかんがするので、)

なんて、形だけにもせよ、嫌な予感がするので、

(どうしたらいいのか、とためらっていると、)

どうしたらいいのか、とためらっていると、

(たいじくんはそんなことはおかまいなく、はやくはやくと)

泰二君はそんなことはお構いなく、早く早くと

(せがむのです。やっぱり、しばるしかありません。)

せがむのです。 やっぱり、しばるしかありません。

(このうえ、いらいらさせれば、ほんとうにきがくるわないとも)

この上、イライラさせれば、本当に気が狂わないとも

(かぎりません。それほど、たいじくんはしんけんなのです。)

限りません。それほど、泰二君は真剣なのです。

(そこで、おかあさんはなれないてつきでかなしげに、)

そこで、お母さんは馴れない手つきで悲しげに、

(ねているたいじくんのてとあしにろーぷをぐるぐるまいて、)

寝ている泰二君の手と足にロープをグルグル巻いて、

(かたちだけしばりました。「もっと、きつくしばって)

形だけしばりました。「もっと、きつくしばって

(ください。どうやってもとけないように、つよくむすんで)

ください。どうやってもとけないように、強く結んで

(ください」「わかったわかった。うんときつくむすび)

ください」「分かった分かった。ウンときつく結び

(ましたよ。さあ、これでいいですか。じゃあね、)

ましたよ。さあ、これでいいですか。じゃあね、

(じっときをしずめてね、もうなにもかんがえないでねるのよ」)

ジッと気を沈めてね、もう何も考えないで寝るのよ」

(おかあさんはそういいながら、ぬいであったかけぶとんを)

お母さんはそう言いながら、脱いであった掛け布団を

(たいじくんのうえにかけ、そのうえからたいじくんのからだをあかんぼう)

泰二君の上にかけ、その上から泰二君の体を赤ん坊

(でもあやすように、かるくたたいてやるのでした。)

でもあやすように、軽く叩いてやるのでした。

(しばらくそうしてようすをみていると、たいじくんは)

しばらくそうして様子を見ていると、泰二君は

(ろーぷでしばってもらってやっとあんしんしたのか、)

ロープでしばってもらってやっと安心したのか、

(やがてすやすやと、しずかなねいきをたてて、ねむり)

やがてスヤスヤと、静かな寝息をたてて、ねむり

(こんでしまいました。おかあさんはそっと、たいじくんの)

こんでしまいました。 お母さんはソッと、泰二君の

(ひたいにてをあててみましたが、べつにはつねつしている)

ひたいに手をあててみましたが、別に発熱している

(ようすもありません。またふとんのなかへてをいれて、)

様子もありません。また布団の中へ手を入れて、

(たいじくんのしばられているてくびにさわってみても、)

泰二君のしばられている手首にさわってみても、

(みゃくはくもふだんとかわらないことがわかりました。)

脈拍も普段と変わらないことが分かりました。

(「これならば、おいしゃさまをおよびするほどのこと)

「これならば、お医者さまをお呼びするほどのこと

(でもないですね。まあ、あすのあさまでそっとして、)

でもないですね。まあ、あすの朝までソッとして、

(ようすをみてみましょう」おかあさんは、そんなふうに)

様子をみてみましょう」お母さんは、そんなふうに

(かんがえて、そのままじぶんのへやへかえりました。ところが)

考えて、そのまま自分の部屋へ帰りました。 ところが

(そのよふけ、いちじごろのことです。へやでやすんでいた)

その夜更け、一時頃のことです。部屋で休んでいた

(おかあさんは、ふとみょうなものおとでめをさましました。)

お母さんは、ふとみょうな物音で目を覚ましました。

(だれかが、しのびあしでろうかをあるいているようなものおと)

だれかが、忍び足で廊下を歩いているような物音

(なのです。おとうさんはるすちゅうですし、おくのしょさいには)

なのです。 お父さんは留守中ですし、奥の書斎には

(たいせつなかいしゃのきみつしょるいがしまってあるので、もしどろぼう)

大切な会社の機密書類がしまってあるので、もし泥棒

(でもはいったのだとしたら、たいへんです。)

でも入ったのだとしたら、大変です。

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