『妖怪博士』江戸川乱歩21

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プレイ回数591難易度(4.1) 4388打 長文 長文モードのみ
少年探偵団シリーズ第3作品『妖怪博士』
※分かりやすくする為、表記等を一部改変しております

○少年探偵団シリーズ第3作品『妖怪博士』
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1 berry 7398 7.5 98.0% 571.3 4312 85 99 2024/10/07

関連タイピング

問題文

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(「あけちせんせいは、このわしにむかって、かならずみっかかんで)

「明智先生は、このわしに向かって、必ず三日間で

(じけんをかいけつしてみせると、えらそうにいいちらしよった)

事件を解決してみせると、偉そうに言い散らしよった

(が、そのみっかがにじかんあまりできれるといういまごろに)

が、その三日が二時間あまりで切れるという今頃に

(なっても、このぞくのかくれがさえさがしだすことが)

なっても、この賊の隠れ家さえ探し出すことが

(できないのじゃ。わはは、おいあけちせんせい、きみは)

出来ないのじゃ。ワハハ、おい明智先生、きみは

(いったい、どこをうろうろしているのじゃ」とのむらが)

一体、どこをウロウロしているのじゃ」殿村が

(とくいまんめんで、きいろいはをむきだしてつばをとばし)

得意満面で、黄色い歯をむきだしてツバを飛ばし

(ながら、そこまでしゃべったときでした。)

ながら、そこまでしゃべった時でした。

(とつじょ、へやのなかにみょうなわらいごえがおこりました。)

突如、部屋の中にみょうな笑い声が起こりました。

(「わはは」とのむらのわらいごえにもおとらない、たかわらい)

「ワハハ」殿村の笑い声にもおとらない、高笑い

(です。それが、おかしくてたまらないという)

です。それが、おかしくてたまらないという

(ようにいつまでもつづいているのです。とのむらたんていは)

ようにいつまでも続いているのです。殿村探偵は

(びっくりしたようにはなしをやめて、こえのするほうを)

ビックリしたように話をやめて、声のするほうを

(にらみつけました。「だれじゃ。そこでわらっている)

にらみつけました。「だれじゃ。そこで笑っている

(のはだれじゃ。わしがしんけんにはなしをしているのに、)

のはだれじゃ。わしが真剣に話をしているのに、

(わらうとはけしからん。やめんか。こら、やめんか)

笑うとはけしからん。やめんか。こら、やめんか

(というに」するとそれにこたえるように、しんぶんきしゃの)

というに」 するとそれに答えるように、新聞記者の

(いちだんのあいだから、ひとりのおとこがまえにすすみでて)

一団の間から、一人の男が前に進み出て

(きました。ふくそうをみれば、やっぱりしんぶんきしゃのひとり)

来ました。服装を見れば、やっぱり新聞記者の一人

(らしいのですが、そのおとこはまだわらいのとまらない)

らしいのですが、その男はまだ笑いの止まらない

など

(にこにこがおで、とのむらたんていのめのまえにたちはだかり)

ニコニコ顔で、殿村探偵の目の前に立ちはだかり

(ました。「とのむらくん、あけちはここにいるよ。きみは、)

ました。「殿村君、明智はここに居るよ。きみは、

(いまあけちはどこにいる。あけちのかおがみたいとどなって)

いま明智はどこに居る。明智の顔が見たいとどなって

(いたが、それほどみたければ、このかおをよくみて)

いたが、それほど見たければ、この顔をよく見て

(くれたまえ」それをきくと、とのむらはぎょっとした)

くれたまえ」 それを聞くと、殿村はギョッとした

(ようにかおいろをかえて、に、さんぽあとずさりました。)

ように顔色を変えて、二、三歩あとずさりました。

(みれば、しんぶんきしゃらしいふくそうはしていますが、たしかに)

見れば、新聞記者らしい服装はしていますが、確かに

(あけちたんていにちがいないのです。「ははは、なんだか)

明智探偵に違いないのです。「ハハハ、なんだか

(ひどくおどろいているようじゃないか。さっきから)

酷く驚いているようじゃないか。さっきから

(しんぶんきしゃしょくんのうしろにかくれて、きみのだいえんぜつをはいちょう)

新聞記者諸君の後ろに隠れて、きみの大演説を拝聴

(していたんだよ。なかなかうまいもんだねえ。)

していたんだよ。なかなか上手いもんだねえ。

(おかげで、ぼくはすっかりおなかのかわがねじれて)

おかげで、ぼくはすっかりお腹の皮がねじれて

(しまったぜ」あけちたんていははぎれのいいくちょうでとのむらを)

しまったぜ」明智探偵は歯切れのいい口調で殿村を

(からかって、またしてもおかしそうにわらいだす)

からかって、またしてもおかしそうに笑い出す

(のでした。)

のでした。

(「きみがはんにんだ」)

「きみが犯人だ」

(そのばにいたひとびとはあけちたんていのとつぜんのしゅつげんに、ひどく)

その場に居た人々は明智探偵の突然の出現に、酷く

(めんくらってしまいましたが、なかでもとのむらたんていのおどろきは)

面食らってしまいましたが、中でも殿村探偵の驚きは

(ひときわでした。まさか、このへやにあけちがあらわれる)

ひときわでした。まさか、この部屋に明智が現れる

(とは、ゆめにもかんがえていなかったからです。しかし、)

とは、夢にも考えていなかったからです。しかし、

(さすがはとのむらたんてい。たちまちおどろきのいろをおしかくして、)

さすがは殿村探偵。たちまち驚きの色を押し隠して、

(おおごえにわらいだしました。「わはは、おそいあけちたんてい)

大声に笑い出しました。「ワハハ、遅い明智探偵

(じゃ。きみはいまごろになってのこのこと、なにをしに)

じゃ。きみは今頃になってノコノコと、何をしに

(おいでなさった。もうそうさくは、すっかりすんで)

おいでなさった。もう捜索は、すっかり済んで

(しまったのじゃよ。ゆうかいされたよにんのこどもは、)

しまったのじゃよ。誘拐された四人の子どもは、

(ごらんのとおり、ぶじにとりもどした。せけんをさわがした)

ご覧の通り、無事に取り戻した。世間を騒がした

(きみつぶんしょも、ちゃんとあいかわさんのぽけっとにおさまって)

機密文書も、ちゃんと相川さんのポケットに収まって

(いる。すべて、このわしがはっけんしたのじゃ。ざんねん)

いる。全て、このわしが発見したのじゃ。残念

(ながら、あけちたんていがみつけだしたのではないのだ。)

ながら、明智探偵が見つけ出したのではないのだ。

(あけちくん、きみはいったいなにをしに、ここへきたのじゃ。)

明智君、きみは一体なにをしに、ここへ来たのじゃ。

(あかっぱじをかくためか。それとも、わしのうでまえにこうさん)

赤っ恥をかくためか。それとも、わしの腕前に降参

(して、でしいりでもするためか」しかし、われらの)

して、弟子入りでもするためか」 しかし、我らの

(あけちたんていは、すこしもさわぎませんでした。あいかわらず、)

明智探偵は、少しも騒ぎませんでした。相変わらず、

(にこにことほほえみながら、おちつきはらっていいかえし)

ニコニコと微笑みながら、落ち着き払って言い返し

(ました。「いかにも。きみのうでまえをはいけんしにきた)

ました。「いかにも。きみの腕前を拝見しに来た

(のだよ。きみのすいりはすばらしいねえ。だが、)

のだよ。きみの推理は素晴らしいねえ。だが、

(でしいりしようなどとはおもわない。なぜかというと、)

弟子入りしようなどとは思わない。なぜかというと、

(ぼくもきみがしっているだけのことは、ちゃんと)

ぼくもきみが知っているだけのことは、ちゃんと

(しっているからさ。ただ、きみがそれらをどうやって)

知っているからさ。ただ、きみがそれらをどうやって

(みつけだしてみせるのか、わざとすがたをかくしてはいけんして)

見つけ出してみせるのか、わざと姿を隠して拝見して

(いたのだよ。きみのおしばいはすてきだったぜ」)

いたのだよ。きみのお芝居は素敵だったぜ」

(「ふふん、まけおしみもほどほどにするがいい。あとから)

「フフン、負け惜しみも程々にするがいい。あとから

(のこのこやってきて、そんなうそをついたって、)

ノコノコやって来て、そんなウソをついたって、

(だれがまにうけるもんか。わしのしっていたことは、)

だれが真に受けるもんか。わしの知っていたことは、

(きみもすっかりしりぬいていたって。ふふふ、むしの)

きみもすっかり知り抜いていたって。フフフ、虫の

(いいいいぐさもあったもんじゃ」「ところが、ぼくは)

いい言い草もあったもんじゃ」「ところが、ぼくは

(それいじょうのことをしっているのさ。なんならひとつ、)

それ以上のことを知っているのさ。なんなら一つ、

(そのしょうこをおめにかけてもいいが」「いよいよ、)

その証拠をお目にかけてもいいが」「いよいよ、

(まけおしみのつよいおかたじゃ。おもしろい。それではひとつ、)

負け惜しみの強いお方じゃ。面白い。それでは一つ、

(そのしょうことやらをみせてもらいましょうかな」)

その証拠とやらを見せてもらいましょうかな」

(「みたいというんだね」あけちはなぜかひにくなびしょうを)

「見たいと言うんだね」 明智はなぜか皮肉な微笑を

(うかべて、じっととのむらのみにくいかおをみつめました。)

浮かべて、ジッと殿村の醜い顔を見つめました。

(しかしとのむらは、いっこうにひるむようすもありません。)

しかし殿村は、いっこうにひるむ様子もありません。

(「みたいもんじゃね」「それではまずきくが、)

「見たいもんじゃね」「それではまず聞くが、

(きみは、このじけんのはんにんをつかまえるというやくそくは)

きみは、この事件の犯人を捕まえるという約束は

(どうしたんだね。たしかによにんのしょうねんときみつぶんしょは)

どうしたんだね。確かに四人の少年と機密文書は

(とりもどしたが、かんじんのはんにんをにがしてしまったじゃ)

取り戻したが、肝心の犯人を逃がしてしまったじゃ

(ないか。それで、やくそくをはたしたなんておおきなくちを)

ないか。それで、約束を果たしたなんて大きな口を

(きくのは、すこしおかしくはないかね」「ふふん、)

きくのは、少しおかしくはないかね」「フフン、

(そうらおいでなすった。どうせそんなことだろうと)

そうらおいでなすった。どうせそんなことだろうと

(おもったよ。あけちくん、それはむりなんだいというものじゃ。)

思ったよ。明智君、それは無理難題というものじゃ。

(きみにしたら、はんにんをつかまえるのはおろか、このぞくの)

きみにしたら、犯人を捕まえるのはおろか、この賊の

(かくれがさえけんとうがつかなかったのではないか。)

隠れ家さえ見当がつかなかったのではないか。

(それに、これほどのてがらをたてたわしを、ただ)

それに、これほどの手柄をたてたわしを、ただ

(はんにんをつかまえていないからといってせめるのは、)

犯人を捕まえていないからといって責めるのは、

(むりというものじゃ。そんなにいわれるからには、)

無理というものじゃ。そんなに言われるからには、

(きみじしんは、おおよそはんにんのありかをごぞんじ)

きみ自身は、おおよそ犯人の在りかをご存知

(なんじゃろうね。それとも、もうはんにんをつかまえた)

なんじゃろうね。それとも、もう犯人を捕まえた

(とでもおっしゃるのかな。うふふ」ところが、)

とでもおっしゃるのかな。ウフフ」 ところが、

(そのとのむらのあざけりを、あけちはもののみごとに、ぴしりと)

その殿村のあざけりを、明智は物の見事に、ピシリと

(うちかえしたのです。「いかにも。ぼくははんにんの)

打ち返したのです。「いかにも。ぼくは犯人の

(ありかをしっている。いや、それだけじゃない。)

在りかを知っている。いや、それだけじゃない。

(もうちゃんとつかまえているのだ」「え、なんじゃと。)

もうちゃんと捕まえているのだ」「え、なんじゃと。

(はんにんはつかまえただって。ははは、これはおもしろい。)

犯人は捕まえただって。ハハハ、これは面白い。

(それでは、そのはんにんというのをみせてもらおうじゃ)

それでは、その犯人というのを見せてもらおうじゃ

(ないか。それとも、ここへはつれてこられないとでも)

ないか。それとも、ここへは連れて来られないとでも

(いうのかね」「みせてほしいか」「うん、みせられる)

言うのかね」「見せて欲しいか」「うん、見せられる

(ものならみせてほしいね」「はんにんは、ここにいる。)

ものなら見せて欲しいね」「犯人は、ここに居る。

(このへやのなかにいるのだ」)

この部屋の中に居るのだ」

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