『妖怪博士』江戸川乱歩22

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少年探偵団シリーズ第3作品『妖怪博士』
※分かりやすくする為、表記等を一部改変しております

○少年探偵団シリーズ第3作品『妖怪博士』
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第1作品→https://typing.twi1.me/game/314206
順位 名前 スコア 称号 打鍵/秒 正誤率 時間(秒) 打鍵数 ミス 問題 日付
1 sai 8827 9.0 97.9% 513.3 4630 99 100 2024/05/30
2 berry 8021 8.1 98.5% 563.0 4585 69 100 2024/05/17
3 subaru 8015 8.3 96.6% 554.7 4607 161 100 2024/05/27
4 HAKU 7783 8.0 96.6% 577.9 4658 160 100 2024/05/15
5 □「いいね」する 7171 7.5 95.7% 618.4 4641 206 100 2024/05/14

関連タイピング

問題文

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(あけちのおもいがけないことばに、ひとびとははっとしたように)

明智の思いがけない言葉に、人々はハッとしたように

(めをみあわせました。「はんにんは、ここにいる」と)

目を見合わせました。「犯人は、ここに居る」と

(いわれても、そこにはあいかわぎしちょうとなかむらそうさかかりちょう、)

言われても、そこには相川技師長と中村捜査係長、

(けいじたち、しんぶんきしゃ、よにんのしょうねんのほかには、べつに)

刑事たち、新聞記者、四人の少年の他には、別に

(あやしいじんぶつもみあたらないではありませんか。)

怪しい人物も見当たらないではありませんか。

(それとも、「はんにんはしんぶんきしゃのなかにまじっている」)

それとも、「犯人は新聞記者の中に混じっている」

(とでもいうのでしょうか。しかし、なんのひつようもない)

とでも言うのでしょうか。しかし、なんの必要もない

(のに、はんにんがわざわざけいさつかんやたんていがおおぜいいるなかへ、)

のに、犯人がわざわざ警察官や探偵が大勢居る中へ、

(やってくるはずもありません。「おいおい、あけちくん、)

やって来るはずもありません。「おいおい、明智君、

(きみはきでもくるったのじゃないかね。それともゆめでも)

きみは気でも狂ったのじゃないかね。それとも夢でも

(みているのか。そのはんにんというのは、このへやの)

見ているのか。その犯人というのは、この部屋の

(なかの、いったいどこにかくれているんじゃね」とのむらはなぜか)

中の、一体どこに隠れているんじゃね」殿村はなぜか

(すこしかおいろをあおくして、くちびるをなめながらこうふんしたこえで)

少し顔色を青くして、唇をなめながら興奮した声で

(つめよりました。あけちたんていはやっぱり、にこにこして)

詰め寄りました。 明智探偵はやっぱり、ニコニコして

(いました。そしてさっとみぎてをあげると、ひとさしゆびを)

いました。そしてサッと右手をあげると、人差し指を

(とのむらたんていのはなのさきにつきつけました。「とのむらくんだよ。)

殿村探偵の鼻の先に突き付けました。「殿村君だよ。

(それとも、ひるたはかせとよんだほうが、おきにめし)

それとも、ヒルタ博士と呼んだほうが、お気に召し

(ますか。きみだ、きみがはんにんだ」とのむらはまるでだんがんで)

ますか。きみだ、きみが犯人だ」 殿村はまるで弾丸で

(むねをうちぬかれでもしたように、よろよろとよろめき)

胸を撃ち抜かれでもしたように、ヨロヨロとよろめき

(ました。そのかおはいっしゅんさっとあおざめたかとおもうと、)

ました。その顔は一瞬サッと青ざめたかと思うと、

など

(つぎのしゅんかんにはふんどにより、むらさきいろにかわりました。)

次の瞬間には憤怒により、紫色に変わりました。

(そして、まるでおいつめられたけだもののように、)

そして、まるで追いつめられたケダモノのように、

(きいろいはをみにくくむきだして、あけちたんていにくってかかる)

黄色い歯を醜くむき出して、明智探偵に食ってかかる

(のでした。「ば、ばかな。な、なにをいうのだ。)

のでした。「バ、バカな。な、なにを言うのだ。

(とんでもないことだ。わしはとのむらこうぞうという、)

とんでもないことだ。わしは殿村弘三という、

(れっきとしたしりつたんていじゃ。きさま、きがくるったな。)

れっきとした私立探偵じゃ。貴様、気が狂ったな。

(なかむらさん、こいつはわしとのしょうぶにまけて、ぎゃくじょうした)

中村さん、こいつはわしとの勝負に負けて、逆上した

(のです。ひきずりだしてください。へやのそとへ、)

のです。引きずり出してください。部屋の外へ、

(ひきずりだしてください」「とのむらくん、いや、)

引きずり出してください」「殿村君、いや、

(ひるたはかせ、わるあがきはよしたまえ。ぼくには、)

ヒルタ博士、悪あがきはよしたまえ。ぼくには、

(なにもかもわかっているのだ。きみがはんにんではない)

何もかも分かっているのだ。きみが犯人ではない

(のなら、どうしてあんなにかおいろをかえたのだ。きみが)

のなら、どうしてあんなに顔色を変えたのだ。きみが

(おどろきのあまりたおれそうになったことは、ここにいる)

驚きのあまり倒れそうになったことは、ここに居る

(ひとたちがぜんいんみてしまったのだ。こうさんしたまえ。)

人たちが全員見てしまったのだ。降参したまえ。

(このごにおよんで、じたばたするなんて、きみらしくも)

この期に及んで、ジタバタするなんて、きみらしくも

(ないじゃないか」あけちは、いつものこえでしずかにいい)

ないじゃないか」明智は、いつもの声で静かに言い

(きかせました。しかしとのむらは、すこしもひるむようすが)

きかせました。しかし殿村は、少しもひるむ様子が

(ありません。「でたらめだ、きちがいのもうそうだ。)

ありません。「デタラメだ、キチガイの妄想だ。

(それとも、しょうこがあるのか。なにをしょうこに、そんな)

それとも、証拠があるのか。何を証拠に、そんな

(いいがかりをつけるのだ」「しょうこがほしいのか」)

いいがかりをつけるのだ」「証拠が欲しいのか」

(「あるまい。このわしがはんにんだなんて、そんな)

「あるまい。このわしが犯人だなんて、そんな

(でたらめなしょうこがあってたまるものか」「しょうこか、)

デタラメな証拠があってたまるものか」「証拠か、

(しょうこはこれだ」さけんだかとおもうと、あけちたんていのからだが)

証拠はこれだ」叫んだかと思うと、明智探偵の体が

(さっとちゅうにおどり、とのむらのからだにぶつかっていきました。)

サッと宙に踊り、殿村の体にぶつかっていきました。

(とのむらはふいをつかれて、あけちにくみしかれましたが、)

殿村は不意をつかれて、明智に組み敷かれましたが、

(しにものぐるいにもがきまわって、あいてをはねのけようと)

死に物狂いにもがきまわって、相手を跳ね除けようと

(します。そしてふたりのからだは、とっくみあったり)

します。そして二人の体は、取っ組み合ったり

(はなれたりして、ゆかのうえをころげまわるのです。そのばに)

離れたりして、床の上を転げまわるのです。その場に

(いるひとびとはいきをのんで、このおそろしいかくとうをみつめて)

居る人々は息をのんで、この恐ろしい格闘を見つめて

(いました。ふたりのいきごみの、あまりのはげしさに、)

いました。二人の意気込みの、余りの激しさに、

(きゅうには、だれもてだしをすることさえできません)

急には、だれも手出しをすることさえ出来ません

(でした。しかし、たたかいはいっぷんもかからないでおわり)

でした。 しかし、戦いは一分もかからないで終わり

(ました。あけちがかったのです。かくとうのあいだに、)

ました。明智が勝ったのです。格闘の間に、

(とのむらのかめんをはぎとってしまったのです。まず、)

殿村の仮面をはぎ取ってしまったのです。 まず、

(あけちがおきあがって、うつぶせのままかおもあげない)

明智が起き上がって、うつぶせのまま顔も上げない

(とのむらのうでをつかんで、ひきおこすようにおきあがらせ)

殿村の腕をつかんで、引き起こすように起き上がらせ

(ました。すると、ああ、これはどうしたこと)

ました。すると、ああ、これはどうしたこと

(でしょう。とのむらのかおが、まるでべつじんのようにかわって)

でしょう。殿村の顔が、まるで別人のように変わって

(しまっているではありませんか。かみのけだけは、)

しまっているではありませんか。 髪の毛だけは、

(あいかわらずもじゃもじゃにみだれていましたが、けむしの)

相変わらずモジャモジャに乱れていましたが、毛虫の

(ようなふといまゆは、かっこうのよいほそいまゆにかわり、)

ような太い眉は、かっこうのよい細い眉に変わり、

(あのいやらしいでっぱもどこかへきえて、あかいくちびるの)

あのいやらしい出っ歯もどこかへ消えて、赤い唇の

(あいだから、まっしろなうつくしいはならびがみえています。)

間から、真っ白な美しい歯並びが見えています。

(ほおやあごにながくのびたぶしょうひげはあとかたもなく、)

頬やあごに長く伸びた無精ヒゲは跡形もなく、

(なめらかなはだにかわっているのです。なによりもいちばん)

なめらかな肌に変わっているのです。 なによりも一番

(めにつくのは、れいのせなかのこぶがとれてしまって、)

目につくのは、例の背中のこぶがとれてしまって、

(すっきりしたすがたにかわっていたことです。みれば、)

すっきりした姿に変わっていたことです。見れば、

(いまのかくとうのあいだに、あけちによってうわぎもべすとも)

今の格闘の間に、明智によって上着もベストも

(ぬがされ、わいしゃつもずたずたにひきさかれて、)

脱がされ、ワイシャツもズタズタに引き裂かれて、

(そのなかにかくしてあった、こぶをぬきだされてしまった)

その中に隠してあった、コブを抜き出されてしまった

(のです。そしていやいやながらたったすがたは、さっきまでの)

のです。 そして嫌々ながら立った姿は、さっきまでの

(みにくいおとことはにてもにつかない、すらっとしたこうせいねん)

醜い男とは似ても似つかない、スラッとした好青年

(でした。としも、まださんじゅうぜんごなのです。「みなさん、)

でした。歳も、まだ三十前後なのです。「みなさん、

(これがとのむらたんていのしょうたいです。こんなへんそうを、どうして)

これが殿村探偵の正体です。こんな変装を、どうして

(みやぶることができなかったのかと、いぶかしくおもう)

見破ることが出来なかったのかと、いぶかしく思う

(でしょうが、それはみなさんのめがにぶいためではなく、)

でしょうが、それは皆さんの目が鈍いためではなく、

(こいつがおそろしい「へんそうのてんさい」だからです。)

こいつが恐ろしい「変装の天才」だからです。

(はんざいしじょうにもれいのないほど、ふしぎにへんそうがうまいおとこ)

犯罪史上にも例のない程、不思議に変装が上手い男

(です」あけちのせつめいをきいても、ひとびとはまだはんしんはんぎ)

です」 明智の説明を聞いても、人々はまだ半信半疑

(でした。あのばけものみたいなものが、こんなうつくしい)

でした。あのバケモノみたいな者が、こんな美しい

(せいねんだったなんて、まるでゆめのようで、きゅうにはしんじる)

青年だったなんて、まるで夢のようで、急には信じる

(ことができなかったのです。)

ことが出来なかったのです。

(「てんじょうのかお」)

「天井の顔」

(ろうじんのへんそうをみやぶられたとのむらは、なにがおかしいのか、)

老人の変装を見破られた殿村は、何がおかしいのか、

(いきなりげらげらとわらいだしました。「わはは、)

いきなりゲラゲラと笑い出しました。「ワハハ、

(ぼくがひるたはかせだって。こいつはおかしい。)

ぼくがヒルタ博士だって。こいつはおかしい。

(あけちくん、きみはきでもくるったのじゃないかね。)

明智君、きみは気でも狂ったのじゃないかね。

(あのひるたはかせというはんにんが、こんなわかぞうだった)

あのヒルタ博士という犯人が、こんな若造だった

(とでもいうのか。ははは、こいつはゆかいだ。ははは、)

とでも言うのか。ハハハ、こいつは愉快だ。ハハハ、

(みなさん、よくぼくのかおをみてください。まだ、)

みなさん、よくぼくの顔を見てください。まだ、

(かわいらしいせいねんじゃありませんか。これがひるたはかせ)

可愛らしい青年じゃありませんか。これがヒルタ博士

(でしょうか。このぼくが、ひるたはかせというろうじんと)

でしょうか。このぼくが、ヒルタ博士という老人と

(おなじにんげんでしょうか。え、だれもひるたはかせを)

同じ人間でしょうか。え、だれもヒルタ博士を

(しらないだって。こまりましたね。ああ、いいことが)

知らないだって。困りましたね。ああ、いいことが

(ある。ここにいるよにんのしょうねんしょくんは、ひるたはかせに)

ある。ここに居る四人の少年諸君は、ヒルタ博士に

(ひどいめにあわされたんだから、あのあやしいはかせのかおを)

酷い目にあわされたんだから、あの怪しい博士の顔を

(みているでしょう。さあ、あいかわくん、おおのくん、さいとうくん、)

見ているでしょう。さあ、相川君、大野君、斎藤君、

(うえむらくん、こっちへよって、ぼくのかおをよくみて)

上村君、こっちへ寄って、ぼくの顔をよく見て

(ください。このおじさんが、ひるたはかせとおなじひと)

ください。このおじさんが、ヒルタ博士と同じ人

(だとおもいますか。え、きみたち、どうですか」)

だと思いますか。え、きみたち、どうですか」

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