『妖怪博士』江戸川乱歩24

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少年探偵団シリーズ第3作品『妖怪博士』
※分かりやすくする為、表記等を一部改変しております

○少年探偵団シリーズ第3作品『妖怪博士』
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第1作品→https://typing.twi1.me/game/314206
順位 名前 スコア 称号 打鍵/秒 正誤率 時間(秒) 打鍵数 ミス 問題 日付
1 berry 7128 7.2 98.4% 653.6 4734 75 100 2024/10/07
2 井口理 6685 S+ 6.8 97.1% 698.4 4812 143 100 2024/10/15
3 tana 4538 C++ 4.6 96.8% 1022.7 4798 156 100 2024/10/14

関連タイピング

問題文

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(じつにみごとなはやわざです。あのたかいてんじょうからとび)

実に見事な早ワザです。あの高い天井から飛び

(おりて、しりもちをつくでもなくゆかのうえをに、さんど)

降りて、尻もちをつくでもなく床の上を二、三度

(ぴょんぴょんはねて、すっとたちあがると、ひとびとの)

ピョンピョン跳ねて、スッと立ち上がると、人々の

(かおをみまわしてにこにこわらっているのです。それは)

顔を見まわしてニコニコ笑っているのです。 それは

(じゅうし、ごさいほどの、こじきのようなうすぎたないしょうねんでした。)

十四、五歳ほどの、乞食のような薄汚い少年でした。

(てんじょうから、こどものこじきがふってきたのです。ひとびとが)

天井から、子どもの乞食が降って来たのです。人々が

(あっとぎょうてんしたのもむりはありません。「とのむらくん、)

アッと仰天したのも無理はありません。「殿村君、

(このこどもにみおぼえはないかね。きみがさいしょ、)

この子どもに見覚えはないかね。きみが最初、

(とうようせいさくがいしゃへやってきたときから、このこじきの)

東洋製作会社へやって来た時から、この乞食の

(こどもはたえず、きみのしんぺんにつきまとっていたん)

子どもは絶えず、きみの身辺に付きまとっていたん

(だぜ。よくみたまえ。きみはいままでこのこどもに、)

だぜ。よく見たまえ。きみは今までこの子どもに、

(なんかいもであっているはずだ」とのむらはこじきのしょうねんを、)

何回も出会っているはずだ」 殿村は乞食の少年を、

(あなのあくほどみつめました。みつめているうちに、)

穴のあくほど見つめました。見つめているうちに、

(かれのかおがだんだんあおざめていくではありませんか。たしかに)

彼の顔が段々青ざめていくではありませんか。確かに

(みおぼえがあるようです。なにかしら、ひしひしとおもい)

見覚えがあるようです。何かしら、ひしひしと思い

(あたることがあるらしいのです。あけちはとのむらの)

当たることがあるらしいのです。 明智は殿村の

(うろたえるありさまをしりめにかけながら、いちどうに)

うろたえる有り様を尻目にかけながら、一同に

(はなしかけました。「みなさん、ごしょうかいしましょう。)

話しかけました。「みなさん、ご紹介しましょう。

(このこどもは、こんなきたないふうをしていますが、)

この子どもは、こんな汚いふうをしていますが、

(けっしてほんとうのこじきではありません。ぼくのしょうねんじょしゅの)

決して本当の乞食ではありません。ぼくの少年助手の

など

(こばやしよしおくんです。わざとこんなへんそうをさせて、せんじつ)

小林芳雄君です。わざとこんな変装をさせて、先日

(から、このおとこをびこうさせておいたのです。)

から、この男を尾行させておいたのです。

(こばやしくんはとのむらのいっきょいちどうを、のこすところもなくみとどけ)

小林君は殿村の一挙一動を、残す所もなく見届け

(ました。そして、まいにちぼくにほうこくしていたのです」)

ました。そして、毎日ぼくに報告していたのです」

(どくしゃしょくんは、このすうじつ、まいばんのようにまどから)

読者諸君は、この数日、毎晩のように窓から

(あけちたんていのしょさいへしのびこんだ、こじきのしょうねんをおぼえて)

明智探偵の書斎へ忍び込んだ、乞食の少年を憶えて

(いるでしょう。あのいようなこじきのしょうねんこそ、いまここに)

いるでしょう。あの異様な乞食の少年こそ、今ここに

(いるこばやしよしおくんだったのです。ひとびとはそれをきいて、)

居る小林芳雄君だったのです。 人々はそれを聞いて、

(またべつのおどろきにうたれました。「ああ、こんなおくの)

また別の驚きに打たれました。「ああ、こんな奥の

(てがよういしてあったのか。やっぱりあけちたんていはたいした)

手が用意してあったのか。やっぱり明智探偵は大した

(ものだ」と、こえをのんでかんたんしないではいられません)

ものだ」と、声を飲んで感嘆しないではいられません

(でした。「では、このこばやしくんのくちから、とのむらのひみつを)

でした。「では、この小林君の口から、殿村の秘密を

(おはなしさせることにしましょう。こばやしくん、)

お話しさせることにしましょう。小林君、

(かいつまんではなしてみたまえ」あけちがさしずすると、)

かいつまんで話してみたまえ」明智が指図すると、

(こじきのしょうねんのこばやしくんは、すぐかいかつにかたりはじめました。)

乞食の少年の小林君は、すぐ快活に語り始めました。

(「ぼくはあけちせんせいのめいれいで、とのむらをびこうしました。)

「ぼくは明智先生の命令で、殿村を尾行しました。

(そしてとのむらがひとめをしのびながら、こっそりこのいえへ)

そして殿村が人目を忍びながら、コッソリこの家へ

(はいるのをみとどけたのです。そこで、せんせいとごそうだん)

入るのを見届けたのです。 そこで、先生とご相談

(したうえ、とのむらのるすをみはからい、ぼくは、このいえの)

した上、殿村の留守を見計らい、ぼくは、この家の

(やねうらへしのびこむことにしました。それにはひじょうに)

屋根裏へ忍び込むことにしました。それには非常に

(くろうしましたが、けさ、やっとそのもくてきをはたした)

苦労しましたが、今朝、やっとその目的を果たした

(のです。ぼくはてんじょうのうえをはいまわり、てんじょうに)

のです。 ぼくは天井の上を這い回り、天井に

(ないふで、したからきづかれないように、ちいさいすきまを)

ナイフで、下から気づかれないように、小さい隙間を

(つくって、へやのなかのようすをのぞきみしていたのです。)

作って、部屋の中の様子をのぞき見していたのです。

(そして、なにもかもみてしまいました。このひとはろうじんの)

そして、何もかも見てしまいました。この人は老人の

(とのむらたんていだけでなく、べつのひとにもばけるのです。)

殿村探偵だけでなく、別の人にも化けるのです。

(さんかっけいのあごひげをはやして、おおきなめがねをかけた、)

三角形のあごヒゲを生やして、大きな眼鏡をかけた、

(ごじゅっさいぐらいのりっぱなしんしにばけるのです。このひとは)

五十歳ぐらいの立派な紳士に化けるのです。この人は

(そういうすがたにばけて、ちかしつからあいかわくんたちをじゅんばんに)

そういう姿に化けて、地下室から相川君たちを順番に

(このへやへつれてきました。そして、みんなをしばり)

この部屋へ連れてきました。そして、みんなをしばり

(あげて、さるぐつわをはめて、あのせっこうぞうのなかへ)

あげて、さるぐつわをはめて、あの石膏像の中へ

(かくしたのです。せっこうぞうのそこには、おおきなあながあいて)

隠したのです。石膏像の底には、大きな穴があいて

(いるのです。みんなをひとりひとりそのなかへいれて、)

いるのです。みんなを一人一人その中へ入れて、

(またもとのようにたてておいたのです。また、このおとこは)

また元のように立てておいたのです。また、この男は

(あいかわくんたちをおどしているとき、このひとはじぶんのことを)

相川君たちをおどしている時、この人は自分のことを

(ひるたはかせといっていました。それから、ぼくは)

ヒルタ博士と言っていました。それから、ぼくは

(とのむらがゆうがたにがいしゅつするのをまって、じむしょへ)

殿村が夕方に外出するのを待って、事務所へ

(かけつけ、ぼくがみたりきいたりしたことをすべて)

駆けつけ、ぼくが見たり聞いたりしたことを全て

(あけちせんせいにほうこくしたのです」こんなにみとどけられて)

明智先生に報告したのです」 こんなに見届けられて

(しまっては、もううんのつきです。とのむらであり、)

しまっては、もう運のつきです。殿村であり、

(ひるたはかせでもあるおとこはまっさおになって、ぎりぎりと)

ヒルタ博士でもある男は真っ青になって、ギリギリと

(はぎしりをしながら、こばやしくんをにらみつけていました)

歯ぎしりをしながら、小林君をにらみつけていました

(が、なんというごうじょうなやつでしょう。まだ、やせがまんを)

が、なんという強情な奴でしょう。まだ、やせ我慢を

(はって、きでもくるったようにげらげらわらいだした)

はって、気でも狂ったようにゲラゲラ笑い出した

(のです。「わはは、おいこぞう、でたらめもいいかげんに)

のです。「ワハハ、おい小僧、デタラメもいい加減に

(しろ。きさま、ゆめでもみたんじゃないか。このおれが)

しろ。貴様、夢でも見たんじゃないか。このおれが

(ひるたはかせにばけただって。ば、ばかな、おれは)

ヒルタ博士に化けただって。バ、バカな、おれは

(しらん。おれはそんなまねをしたおぼえはない」)

知らん。おれはそんな真似をした覚えはない」

(しかし、こばやししょうねんはすこしもひるみませんでした。)

しかし、小林少年は少しもひるみませんでした。

(いきなりきたないきもののふところから、なにかかみのけのかたまり)

いきなり汚い着物のふところから、何か髪の毛の塊

(のようなものをとりだして、それをとのむらのまえに)

のような物を取り出して、それを殿村の前に

(さしだしながら、はげしいくちょうでせめるように)

差し出しながら、激しい口調で責めるように

(いいました。「それじゃひとつ、これをかぶってごらん)

言いました。「それじゃ一つ、これをかぶってごらん

(なさい。きみがひるたはかせにばけたときのかつらと、)

なさい。きみがヒルタ博士に化けた時のカツラと、

(つけひげとめがねです。きみがひるま、へんそうをといて、)

付けヒゲと眼鏡です。きみが昼間、変装をといて、

(あのいしょうべやへなげこんでおいたのを、ぼくがそっと)

あの衣装部屋へ投げ込んでおいたのを、ぼくがソッと

(てにいれたのです。さあ、これをつけてごらん)

手に入れたのです。さあ、これを付けてごらん

(なさい。そうすれば、きみがひるたはかせかどうか、)

なさい。そうすれば、きみがヒルタ博士かどうか、

(あいかわくんたちがひとめでみわけてくれるでしょう」ああ、)

相川君たちが一目で見分けてくれるでしょう」ああ、

(さすがはこばやししょうねんです。あいてにうむをいわせぬ、)

さすがは小林少年です。相手に有無を言わせぬ、

(りっぱなしょうこひんをちゃんとにぎっていたのです。いくら)

立派な証拠品をちゃんと握っていたのです。 いくら

(ごうじょうなとのむらでも、このかつらや、あごひげをつけて、)

強情な殿村でも、このカツラや、あごヒゲを付けて、

(よにんのしょうねんにかおをみせるゆうきはありません。)

四人の少年に顔を見せる勇気はありません。

(もうぜったいぜつめいです。とのむらはちばしっためで、たすけでも)

もう絶体絶命です。 殿村は血走った目で、助けでも

(もとめるように、あたりをきょろきょろみまわし)

求めるように、あたりをキョロキョロ見まわし

(ました。そして、ぞっとするようなおそろしいひょうじょうに)

ました。そして、ゾッとするような恐ろしい表情に

(なって、じりりじりりと、あとずさりをはじめた)

なって、ジリリジリリと、あとずさりを始めた

(のです。とのむらはそのとき、しょさいのまんなかのおおきいつくえの)

のです。殿村はその時、書斎の真ん中の大きい机の

(まえにたっていたのですが、だんだんあとずさりをして、)

前に立っていたのですが、段々あとずさりをして、

(つくえのうしろにまわりました。そして、ひとびとにさとられない)

机の後ろにまわりました。そして、人々に悟られない

(ように、そっとつくえのしたのゆかにでているちいさなぼたんの)

ように、そっと机の下の床に出ている小さなボタンの

(ようなものをふみつけました。ああ、あぶない。それは)

ような物を踏みつけました。 ああ、危ない。それは

(いつだったか、あいかわたいじしょうねんがひるたはかせによって、)

いつだったか、相川泰二少年がヒルタ博士によって、

(ちかしつへおとされた、あのおとしあなをひらくぼたん)

地下室へ落とされた、あの落とし穴をひらくボタン

(なのです。ところが、いったいどうしたということ)

なのです。 ところが、一体どうしたということ

(でしょう。とのむらがいくらぼたんをふんでも、へやの)

でしょう。殿村がいくらボタンを踏んでも、部屋の

(なかにはなんのいへんもおこらないではありませんか。)

中には何の異変も起こらないではありませんか。

(ちょうどあけちたんていとこばやししょうねんのたっているあたりの)

ちょうど明智探偵と小林少年の立っているあたりの

(ゆかに、しかくいあながあくはずなのですが、そんなようすは)

床に、四角い穴があくはずなのですが、そんな様子は

(すこしもないではありませんか。)

少しもないではありませんか。

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