『妖怪博士』江戸川乱歩25

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プレイ回数752難易度(4.2) 4741打 長文 長文モードのみ
少年探偵団シリーズ第3作品『妖怪博士』
※分かりやすくする為、表記等を一部改変しております

○少年探偵団シリーズ第3作品『妖怪博士』
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第1作品→https://typing.twi1.me/game/314206
順位 名前 スコア 称号 打鍵/秒 正誤率 時間(秒) 打鍵数 ミス 問題 日付
1 berry 7366 7.5 97.8% 618.2 4656 102 100 2024/10/07
2 もち 5252 B++ 5.5 95.5% 861.5 4747 222 100 2024/11/08
3 tana 4401 C+ 4.5 96.0% 1032.5 4740 195 100 2024/10/14

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問題文

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(「ははは」とつぜん、あけちたんていが、おかしくてたまらない)

「ハハハ」突然、明智探偵が、おかしくてたまらない

(というようにわらいだしました。「おいおい、)

というように笑い出しました。「おいおい、

(つまらないいたずらはよしたまえ。そのぼたんは、)

つまらないイタズラはよしたまえ。そのボタンは、

(ききゃしないんだよ。こんなこともあろうかと)

ききゃしないんだよ。こんなこともあろうかと

(おもって、ぼくはこのへやへくるまえ、そっとちかしつに)

思って、ぼくはこの部屋へ来る前、そっと地下室に

(はいって、きかいのそうちをとりはずしておいたのだ。いくら)

入って、機械の装置を取り外しておいたのだ。いくら

(きみがふんだって、おとしあなはあきゃしないよ」)

きみが踏んだって、落とし穴はあきゃしないよ」

(ああ、なんというぬけめのないやりくちでしょう。)

ああ、なんという抜け目のないやり口でしょう。

(さすがはめいたんていです。これでは、いかなるあくにんでも、)

さすがは名探偵です。これでは、いかなる悪人でも、

(てもあしもでないではありませんか。「ちくしょう」)

手も足も出ないではありませんか。「ちくしょう」

(とのむらはものすごいふんどのぎょうそうで、くちをゆがめてさけび)

殿村は物凄い憤怒の形相で、口をゆがめて叫び

(ました。そして、いきなりみをおどらせて、あいた)

ました。そして、いきなり身をおどらせて、あいた

(ままになっていたしょだなのうしろのいしょうべやへかけこんだ)

ままになっていた書棚の後ろの衣装部屋へ駆け込んだ

(かとおもうと、とつぜんぱっとでんとうがきえて、へやのなかは)

かと思うと、突然パッと電灯が消えて、部屋の中は

(すみをながしたようなくらやみになってしまいました。むろん、)

墨を流したような暗闇になってしまいました。無論、

(とのむらがいしょうべやにしかけてあるすいっちをきった)

殿村が衣装部屋に仕掛けてあるスイッチを切った

(のです。たちまちくらやみのへやのなかに、そうぞうしい)

のです。 たちまち暗闇の部屋の中に、そうぞうしい

(ものおとがおこりました。なにかをわめくこえ、はしりまわる)

物音が起こりました。何かをわめく声、走りまわる

(くつのおと。そのなかに、ひときわたかいさけびごえがきこえます。)

靴の音。その中に、一際高い叫び声が聞こえます。

(「みなさん、さわぐことはありません。しずかにして)

「みなさん、騒ぐことはありません。静かにして

など

(ください。あいつはふくろのねずみです。このへやのでぐち)

ください。あいつは袋のネズミです。この部屋の出口

(には、ちゃんとけいじがみはりばんをしているのです。)

には、ちゃんと刑事が見張り番をしているのです。

(いくらくらやみでも、にげだすことはできません」それは)

いくら暗闇でも、逃げ出すことは出来ません」 それは

(あけちたんていのこえでした。あけちはこのしょさいへはいるまえ、)

明智探偵の声でした。明智はこの書斎へ入る前、

(なかむらけいぶのぶかのけいじたちに、そっとみぶんを)

中村警部の部下の刑事たちに、そっと身分を

(うちあけて、ろうかのでぐちはもちろん、いしょうべやから)

打ち明けて、廊下の出口はもちろん、衣装部屋から

(ちかしつにつうじるどあのそとにも、ちゃんとみはりを)

地下室に通じるドアの外にも、ちゃんと見張りを

(たてておいたのです。やがて、へやのなかがぼーっと)

立てておいたのです。 やがて、部屋の中がボーッと

(あかるくなりました。ろうそくのひかりです。さっき)

明かるくなりました。ロウソクの光です。さっき

(とのむらがちかしつをあんないしてまわったしょくだいが、つくえのうえに)

殿村が地下室を案内してまわった燭台が、机の上に

(おいてあったのにきづいて、なかむらかかりちょうがそれにひを)

置いてあったのに気づいて、中村係長がそれに火を

(つけたのです。そのうすいあかりをたよりに、あけちは)

つけたのです。 その薄い明かりを頼りに、明智は

(いしょうべやにかけこんで、かべにかけならべてあるいしょうの)

衣装部屋に駆け込んで、壁に掛け並べてある衣装の

(かげまで、くまなくしらべましたが、どこにもひとのすがたは)

陰まで、くまなく調べましたが、どこにも人の姿は

(ありません。「そのどあをあけたものはいませんか」)

ありません。「そのドアをあけた者はいませんか」

(ちかしつにつうじるどあのむこうがわへこえをかけると、)

地下室に通じるドアの向こう側へ声をかけると、

(ぱっとそのどあがひらいて、ふたりのけいじがかおをみせ)

パッとそのドアがひらいて、二人の刑事が顔を見せ

(ました。「いいえ、だれもこちらへはきていません。)

ました。「いいえ、だれもこちらへは来ていません。

(しょさいがまっくらになったので、じゅうぶんちゅういしていたの)

書斎が真っ暗になったので、充分注意していたの

(ですが」けいじのひとりがかいちゅうでんとうをてにしていました)

ですが」 刑事の一人が懐中電灯を手にしていました

(ので、あけちはそれをかりて、もういちど、いしょうべやを)

ので、明智はそれを借りて、もう一度、衣装部屋を

(すみからすみまでさがしました。でも、やっぱりとのむらのすがたは)

隅から隅まで探しました。でも、やっぱり殿村の姿は

(みえないのです。そのとき、でんとうのすいっちもしらべて)

見えないのです。その時、電灯のスイッチも調べて

(みましたが、とのむらがすいっちのとってをひきちぎって)

みましたが、殿村がスイッチの取っ手を引きちぎって

(しまったようで、でんとうをつけることもできません)

しまったようで、電灯をつけることも出来ません

(でした。そこでこんどは、はんたいがわのろうかにあいている)

でした。そこで今度は、反対側の廊下にあいている

(どあのところへかけつけてみると、そとのみはりばんに)

ドアの所へ駆けつけてみると、外の見張り番に

(たずねるまでもなくおおぜいのしんぶんきしゃが、おたがいにてを)

たずねるまでもなく大勢の新聞記者が、お互いに手を

(つないで、げんじゅうなとおせんぼをしていてくれました。)

つないで、厳重な通せんぼをしていてくれました。

(「ここからは、だれもでたものはおりません」)

「ここからは、だれも出た者はおりません」

(きしゃたちはくちぐちにこたえました。あけちはねんのため、)

記者たちは口々に答えました。 明智は念のため、

(かいちゅうでんとうをかざして、へやのまどをしらべてみました。)

懐中電灯をかざして、部屋の窓を調べてみました。

(しかし、ふたつのまどはしめきったままで、なんのいじょうも)

しかし、二つの窓は閉めきったままで、何の異常も

(ありませんし、そのまどのそばにはあいかわぎしちょうや、)

ありませんし、その窓のそばには相川技師長や、

(よにんのしょうねんたちがたっていたのですから、そこから)

四人の少年たちが立っていたのですから、そこから

(にげだせるはずがありません。そうすると、もう)

逃げ出せるはずがありません。そうすると、もう

(とのむらのにげだすばしょは、どこにもないのです。)

殿村の逃げ出す場所は、どこにもないのです。

(それなのに、あけちやなかむらかかりちょう、こばやししょうねん、しんぶんきしゃ)

それなのに、明智や中村係長、小林少年、新聞記者

(などが、すみからすみまでさがしまわっても、あやしいひとかげは)

などが、隅から隅まで探しまわっても、怪しい人影は

(どこにもみえません。じつにふしぎです。ひるたはかせは)

どこにも見えません。実に不思議です。ヒルタ博士は

(にんじゅつでもつかって、けむりのようにきえてしまった)

忍術でも使って、煙のように消えてしまった

(のでしょうか。「みなさん、しばらくうごかないで、)

のでしょうか。「みなさん、しばらく動かないで、

(じっとしていてください。あいつはこのへやに)

ジッとしていてください。あいつはこの部屋に

(います。みなさんのなかに、まぎれこんでいるのです」)

居ます。みなさんの中に、まぎれこんでいるのです」

(あけちのこえにひとびとはたちどまったまま、ぼんやりした)

明智の声に人々は立ち止まったまま、ボンヤリした

(ろうそくのひかりのなかで、おたがいのかおをじろじろと)

ロウソクの光の中で、お互いの顔をジロジロと

(ながめあいました。なにしろあいては、へんそうのめいじん)

ながめ合いました。なにしろ相手は、変装の名人

(です。それにさっき、へんそうのざいりょうがいっぱいならんでいる)

です。それにさっき、変装の材料が一杯並んでいる

(いしょうべやへとびこんだのですから、どんなへんそうをして)

衣装部屋へ飛び込んだのですから、どんな変装をして

(いるか、しれたものではありません。まさかこどもに)

いるか、知れたものではありません。 まさか子どもに

(ばけることはできませんから、こばやしくんやあいかわくんたち)

化けることは出来ませんから、小林君や相川君たち

(ごにんのしょうねんははぶくとしても、そのへやには、あけちの)

五人の少年は省くとしても、その部屋には、明智の

(ほかになかむらかかりちょう、あいかわぎしちょう、それからろく、しちにんの)

他に中村係長、相川技師長、それから六、七人の

(しんぶんきしゃがいるのです。もしかしたら、なかむらかかりちょうが)

新聞記者が居るのです。もしかしたら、中村係長が

(ふたりになっていたりするのではないでしょうか。)

二人になっていたりするのではないでしょうか。

(そうかんがえると、しりあいのかおでさえ、うたがってみない)

そう考えると、知り合いの顔でさえ、疑ってみない

(といけないのです。それにくわえて、このくらさです。)

といけないのです。それに加えて、この暗さです。

(あかちゃけたろうそくのひかりにてらされて、ぜんいんがなんだか)

赤茶けたロウソクの光に照らされて、全員がなんだか

(おばけのようなかおつきにみえてきます。あけちたんていは、)

オバケのような顔つきに見えてきます。 明智探偵は、

(たちすくんでいるひとびとのかおを、じゅんじゅんにかいちゅうでんとうで)

立ちすくんでいる人々の顔を、順々に懐中電灯で

(てらしていきました。さいごは、しんぶんきしゃのいちだんです。)

照らしていきました。最後は、新聞記者の一団です。

(あけちは、きしゃたちのかおをいちいちおぼえているわけでは)

明智は、記者たちの顔をいちいち憶えている訳では

(ないので、ねんいりにしらべなければなりません。)

ないので、念入りに調べなければなりません。

(「きみたちきしゃしょくんは、たしかろくにんでしたよね」あけちが)

「きみたち記者諸君は、確か六人でしたよね」明智が

(たずねると、「いや、しちにんですよ。ろうかのそとでかぞえて)

たずねると、「いや、七人ですよ。廊下の外で数えて

(みたときは、たしかしちにんでした」きしゃのひとりがこたえ)

みた時は、確か七人でした」記者の一人が答え

(ました。「いや、それじゃ、やっぱりろくにんです。)

ました。「いや、それじゃ、やっぱり六人です。

(ろうかにいたときは、ぼくもきみたちのなかまだったのです)

廊下に居た時は、ぼくもきみたちの仲間だったのです

(から」いかにも、そのときあけちは、まだほんみょうを)

から」いかにも、そのとき明智は、まだ本名を

(なのらないで、きしゃのようなかおをしていたのでした。)

名乗らないで、記者のような顔をしていたのでした。

(「ああ、そうだ。それじゃろくにんですね」「かぞえてみて)

「ああ、そうだ。それじゃ六人ですね」「数えてみて

(ください。たしかに、きみたちはろくにんですか」)

ください。確かに、きみたちは六人ですか」

(きしゃたちは、なかまのにんずうをかぞえました。「おや、)

記者たちは、仲間の人数を数えました。「おや、

(へんだな。やっぱりしちにんいますぜ」それをきくと、)

変だな。やっぱり七人居ますぜ」 それを聞くと、

(あけちはなぜかにこにことわらいました。)

明智はなぜかニコニコと笑いました。

(「そうでしょう。ぼくも、さっきからへんだとおもって)

「そうでしょう。ぼくも、さっきから変だと思って

(いたのです」なにげなく、そんなことをつぶやき)

いたのです」何気なく、そんなことをつぶやき

(ながら、しちにんのかおにつぎつぎとかいちゅうでんとうのひかりをあてて)

ながら、七人の顔に次々と懐中電灯の光を当てて

(いきましたが、やがてさいごのしちにんめにきたとき、)

いきましたが、やがて最後の七人目に来た時、

(かいちゅうでんとうのまるいひかりがぴったりとまりました。)

懐中電灯の丸い光がピッタリ止まりました。

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