『妖怪博士』江戸川乱歩41

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少年探偵団シリーズ第3作品『妖怪博士』
※分かりやすくする為、表記等を一部改変しております

○少年探偵団シリーズ第3作品『妖怪博士』
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第1作品→https://typing.twi1.me/game/314206
順位 名前 スコア 称号 打鍵/秒 正誤率 時間(秒) 打鍵数 ミス 問題 日付
1 ヌオー 5567 A 5.9 94.0% 788.0 4682 295 99 2024/12/17
2 baru 4212 C 4.7 90.1% 1010.2 4775 520 99 2024/12/02

関連タイピング

問題文

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(にじゅうめんそうはのぶおくんがきたくすれば、きっとこのいえへ、)

二十面相は信雄君が帰宅すれば、きっとこの家へ、

(だれかがそうさくにふみこんでくるとさっして、ようじんぶかく)

だれかが捜索に踏み込んで来ると察して、用心深く

(すいっちをきっておいて、にげさったにちがい)

スイッチを切っておいて、逃げ去ったに違い

(ありません。「しかたがない。かいちゅうでんとうのひかりで、もう)

ありません。「仕方がない。懐中電灯の光で、もう

(すこしおくのほうへはいってみよう。こいずみくん、きみがかんきん)

少し奥のほうへ入ってみよう。小泉君、きみが監禁

(されたてつのへやというのは、どのへんだね」「ずっと)

された鉄の部屋というのは、どのへんだね」「ずっと

(おくのほうですよ。このろうかをいけばいいです。ぼく、)

奥のほうですよ。この廊下を行けばいいです。ぼく、

(ごあんないします」のぶおくんはそういって、こばやししょうねんの)

ご案内します」信雄君はそう言って、小林少年の

(かいちゅうでんとうをかりると、それをふりてらしながら)

懐中電灯を借りると、それを振り照らしながら

(そろそろとろうかをあるきはじめました。のぶおくんは、ながい)

ソロソロと廊下を歩き始めました。 信雄君は、長い

(ろうかをすすんでいるなか、いまにもどこからかさんかくひげの)

廊下を進んでいる中、今にもどこからか三角ヒゲの

(ひるたはかせがぬーっとかおをだして、ぴすとるを)

ヒルタ博士がヌーッと顔を出して、ピストルを

(つきつけるのではないかとびくびくでしたが、)

突き付けるのではないかとビクビクでしたが、

(そんなこともなく、やっとれいのうごくてんじょうのへやを)

そんなこともなく、やっと例の動く天井の部屋を

(さがしあてました。「うん、これだね。このなかに)

探し当てました。「うん、これだね。この中に

(とじこめられて、てんじょうがだんだんさがってきたときには、)

閉じこめられて、天井が段々下がってきた時には、

(さぞこわかっただろうね。なんという、おそろしい)

さぞ怖かっただろうね。なんという、恐ろしい

(ごうもんどうぐをかんがえだすやつだろう」あけちたんていはこごえで)

拷問道具を考え出す奴だろう」明智探偵は小声で

(そんなことをいいながら、へやのうらにまわって、)

そんなことを言いながら、部屋の裏にまわって、

(てんじょうをうごかすしかけをしらべたり、へやのなかへはいって、)

天井を動かす仕掛けを調べたり、部屋の中へ入って、

など

(かいちゅうでんとうでゆかやかべをしらべたりしていましたが、べつに)

懐中電灯で床や壁を調べたりしていましたが、別に

(てがかりになるようなはっけんもなかったとみえ、ふたりの)

手がかりになるような発見もなかったとみえ、二人の

(しょうねんをうながして、いえじゅうのへやをかたっぱしからしらべはじめ)

少年をうながして、家中の部屋を片っ端から調べ始め

(ました。どのへやのどあにも、かぎはかかって)

ました。 どの部屋のドアにも、カギはかかって

(いませんでしたのでなんのてまもなく、さんにんは)

いませんでしたので何の手間もなく、三人は

(つぎつぎとへやにはいって、かいちゅうでんとうのひかりをかべやゆかになげ)

次々と部屋に入って、懐中電灯の光を壁や床に投げ

(かけましたが、かぐもないがらんとしたへや)

かけましたが、家具もないガランとした部屋

(ばかりで、かみきれいちまいもおちていませんでした。)

ばかりで、紙切れ一枚も落ちていませんでした。

(そうして、さんへやをたんねんにしらべおわったさんにんは、)

そうして、三部屋を丹念に調べ終わった三人は、

(こんどはたてもののちゅうおうにある、いちばんひろいへやへはいっていき)

今度は建物の中央にある、一番広い部屋へ入って行き

(ました。ところが、せんとうにたっていたあけちたんていがいっぽ)

ました。 ところが、先頭に立っていた明智探偵が一歩

(へやのなかへはいったかとおもうと、とつぜん、どこからとも)

部屋の中へ入ったかと思うと、突然、どこからとも

(なく、ひとのわらいごえがきこえてきたではありませんか。)

なく、人の笑い声が聞こえてきたではありませんか。

(わははというたかわらいです。ぜったいに、あきやだとおもい)

ワハハという高笑いです。絶対に、空き家だと思い

(こんでいた、まっくらやみのへやのなかでふいうちに、ひとの)

こんでいた、真っ暗闇の部屋の中で不意打ちに、人の

(わらいごえをきいたときの、さんにんのおどろきはどれほどだった)

笑い声を聞いた時の、三人の驚きはどれほどだった

(でしょう。さすがのあけちたんていも、おもわずたちどまって)

でしょう。 さすがの明智探偵も、思わず立ち止まって

(しまいましたし、のぶおくんがてにしていたかいちゅうでんとうの)

しまいましたし、信雄君が手にしていた懐中電灯の

(ひかりは、もちぬしのこころのさわぎをはくじょうするように、はげしく)

光は、持ち主の心の騒ぎを白状するように、激しく

(ゆらめきました。すうじかんまえに、あんなおそろしいめに)

ゆらめきました。 数時間前に、あんな恐ろしい目に

(あったのぶおしょうねんは、こころのなかで「そら、でた」と)

あった信雄少年は、心の中で「そら、出た」と

(さけんで、もうにげごしになっていました。くらいので)

叫んで、もう逃げ腰になっていました。暗いので

(ひとにはみられませんでしたが、そのかおはきっとゆうれい)

人には見られませんでしたが、その顔はきっと幽霊

(のようにまっさおになっていたにちがいありません。)

のように真っ青になっていたに違いありません。

(「わはは、あけちくん、ごくろうさまだね。こくほうをとりもどしに)

「ワハハ、明智君、ご苦労様だね。国宝を取り戻しに

(きたのかね。それとも、このおれをつかまえるために)

来たのかね。それとも、このおれを捕まえるために

(やってきたのかね。おきのどくだが、まだきみみたいな)

やって来たのかね。お気の毒だが、まだきみみたいな

(へぼたんていにつかまるほど、おいぼれてはいないつもり)

ヘボ探偵に捕まるほど、老いぼれてはいないつもり

(だよ。わはは」やみのなかのこえは、ぼうじゃくぶじんにわらい)

だよ。ワハハ」闇の中の声は、傍若無人に笑い

(ました。おお、にじゅうめんそうです。にげさったとばかり)

ました。 おお、二十面相です。逃げ去ったとばかり

(おもっていたにじゅうめんそうは、まだこのあきやのような)

思っていた二十面相は、まだこの空き家のような

(たてもののくらやみのなかにみをひそめて、いっぴきのおそろしいやじゅう)

建物の暗闇の中に身をひそめて、一匹の恐ろしい野獣

(のように、らいばるあけちこごろうをまちかまえていた)

のように、ライバル明智小五郎を待ち構えていた

(のです。あけちたんていはそれをきくとさっとみがまえて、)

のです。 明智探偵はそれを聞くとサッと身構えて、

(のぶおくんのかいちゅうでんとうをひったくるようにてにとり、)

信雄君の懐中電灯をひったくるように手に取り、

(いきなりこえのするほうへさしむけました。しかし、)

いきなり声のするほうへ差し向けました。 しかし、

(そのへやにはなにもののすがたもありません。いままでのみっつの)

その部屋には何者の姿もありません。今までの三つの

(へやとおなじ、がらんとしたあきべやなのです。ああ、)

部屋と同じ、ガランとした空き部屋なのです。ああ、

(そうです。このへやはほかのへやとちがって、いりぐちの)

そうです。この部屋は他の部屋と違って、入り口の

(ちかくに、もうひとつくうかんがあるのです。いま、かいちゅうでんとうの)

近くに、もう一つ空間があるのです。今、懐中電灯の

(ひかりのなかに、そのどあがあらわれてきました。にじゅうめんそうは、)

光の中に、そのドアが現れてきました。二十面相は、

(そのどあのむこうがわでしゃべっているのです。)

そのドアの向こう側でしゃべっているのです。

(にじゅうめんそうの、このだいたんふてきなふるまいには、なにかわけが)

二十面相の、この大胆不敵な振る舞いには、何か訳が

(あるのでしょう。そのくうかんのくらやみのなかで、なにかそうぞうも)

あるのでしょう。その空間の暗闇の中で、何か想像も

(つかないようなおそろしいけいかくをして、さんにんがはいって)

つかないような恐ろしい計画をして、三人が入って

(くるのをまちかまえているのではないでしょうか。)

来るのを待ち構えているのではないでしょうか。

(のぶおくんはそれをかんがえると、ばけものやしきにでもいる)

信雄君はそれを考えると、バケモノ屋敷にでも居る

(ような、いっしゅのいようなおそろしさにぞーっとせすじがさむく)

ような、一種の異様な恐ろしさにゾーッと背筋が寒く

(なって、しんぞうがはげしくどきどきしはじめました。)

なって、心臓が激しくドキドキし始めました。

(しかし、さすがにあけちたんていはすこしもおそれるようすは)

しかし、さすがに明智探偵は少しも恐れる様子は

(なく、つかつかとそのどあにちかづいて、いきなり)

なく、ツカツカとそのドアに近付いて、いきなり

(それをひきあけました。そしてかいちゅうでんとうをふりてらし)

それを引きあけました。そして懐中電灯を振り照らし

(ながら、ひろいおくのまへとふみこんでいきます。)

ながら、広い奥の間へと踏み込んで行きます。

(こばやししょうねんもげんきよく、あとにつづきました。それを)

小林少年も元気よく、あとに続きました。それを

(みては、いくらきみがわるくてもぐずぐずしているわけ)

見ては、いくら気味が悪くてもグズグズしている訳

(にはいきません。あとでこばやしくんにわらわれたりしては、)

にはいきません。あとで小林君に笑われたりしては、

(しょうねんたんていだんのはじです。のぶおくんはしにものぐるいのゆうきを)

少年探偵団の恥です。信雄君は死に物狂いの勇気を

(ふるいおこして、おずおずとふたりのあとにつづきました。)

奮い起こして、オズオズと二人のあとに続きました。

(こんなふうにかくと、にじゅうめんそうのこえがきこえてから、)

こんな風に書くと、二十面相の声が聞こえてから、

(さんにんがおくのまにふみこむまで、かなりてまどった)

三人が奥の間に踏み込むまで、かなり手間取った

(ようにかんじられますが、ほんとうはいちびょうかにびょうの、)

ように感じられますが、本当は一秒か二秒の、

(ひじょうにすばやいこうどうでした。にじゅうめんそうのぶきみなこえは、)

非常に素早い行動でした。 二十面相の不気味な声は、

(そのあいだもたえずつづいていました。「おいあけちくん、)

そのあいだも絶えず続いていました。「おい明智君、

(おれはゆかいでたまらないのだよ。うらみかさなるきみの)

おれは愉快でたまらないのだよ。恨み重なるきみの

(てしたのこどもたちを、ひとりひとりおもうぞんぶんいじめ)

手下の子どもたちを、一人一人思う存分イジメ

(ながら、しかもそのうえ、ごほうびとしてりっぱなたからものまで)

ながら、しかもその上、ご褒美として立派な宝物まで

(ちょうだいできたんだからね。おれはこれからも、)

ちょうだい出来たんだからね。おれはこれからも、

(このとくのいいしょうばいをけっしてやめないつもりだよ。まだ)

この得のいい商売を決して辞めないつもりだよ。まだ

(おれいをしていないこどもが、こばやしくんもふくめてはんぶんいじょう)

お礼をしていない子どもが、小林君も含めて半分以上

(のこっているんだからね。そして、それがすんだら)

残っているんだからね。 そして、それが済んだら

(あけちくん、きみのばんだぜ。きみへのおれいは、いちばんあと)

明智君、きみの番だぜ。きみへのお礼は、一番あと

(まわしにするつもりだ。できるだけのばしたほうが)

まわしにするつもりだ。出来るだけ延ばしたほうが

(たのしみがいがあるからねえ。わはは、あけちくん、)

楽しみ甲斐があるからねえ。ワハハ、明智君、

(そのときになってなきっつらをしないように、いまから)

その時になって泣きっ面をしないように、今から

(かくごしておくといいぜ」あけちはへやにふみこむと、)

覚悟しておくといいぜ」 明智は部屋に踏み込むと、

(ものもいわずにこえのするほうへかいちゅうでんとうをむけました)

物も言わずに声のするほうへ懐中電灯を向けました

(が、これはふしぎ、このへやもやっぱりあきやの)

が、これは不思議、この部屋もやっぱり空き家の

(ようにがらんとしていて、にじゅうめんそうのすがたはどこにも)

ようにガランとしていて、二十面相の姿はどこにも

(みえません。)

見えません。

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