『妖怪博士』江戸川乱歩43

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少年探偵団シリーズ第3作品『妖怪博士』
※分かりやすくする為、表記等を一部改変しております

○少年探偵団シリーズ第3作品『妖怪博士』
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順位 名前 スコア 称号 打鍵/秒 正誤率 時間(秒) 打鍵数 ミス 問題 日付
1 berry 7585 7.7 97.9% 587.7 4553 95 96 2024/10/10
2 みき 5901 A+ 6.1 96.6% 754.7 4612 158 96 2024/09/27

関連タイピング

問題文

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(「こばやしくんとのぶおくん、よくおぼえておいてくれたまえ。)

「小林君と信雄君、よく覚えておいてくれたまえ。

(ぼくはかならずあいつをつかまえてみせる。このてで、)

ぼくは必ずあいつを捕まえてみせる。この手で、

(あいつのくびをおさえつけてみせる。こんなにばかに)

あいつの首を押さえつけてみせる。こんなにバカに

(されては、もうがまんができない。いまからいっかげつ)

されては、もう我慢が出来ない。今から一ヵ月

(いないに、いいかね、いっかげついないだよ。ぼくはきっと、)

以内に、いいかね、一ヵ月以内だよ。ぼくはきっと、

(にじゅうめんそうをけいむしょにおくってみせるよ」どんなたいてきに)

二十面相を刑務所に送ってみせるよ」どんな大敵に

(であっても、いつもにこにこわらっているめいたんていも、)

出会っても、いつもニコニコ笑っている名探偵も、

(このときばかりはめをおこらせ、はをくいしばって、)

この時ばかりは目を怒らせ、歯を食いしばって、

(かいじんにじゅうめんそうへふくしゅうをちかうのでした。しかし、)

怪人二十面相へ復讐を誓うのでした。 しかし、

(にじゅうめんそうのほうも、しょうねんたんていだんいんへのふくしゅうを、まだ)

二十面相のほうも、少年探偵団員への復讐を、まだ

(つづけるとせんげんしています。ああ、にほんいちのめいたんていと)

続けると宣言しています。ああ、日本一の名探偵と

(きだいのかいとうのたたかいは、いよいよ、そのぜっちょうにたっし)

希代の怪盗の戦いは、いよいよ、その絶頂に達し

(ようとしています。あけちがかつのか、それとも)

ようとしています。明智が勝つのか、それとも

(にじゅうめんそうがかつのか。そのけっせんのひがまちどおしいでは)

二十面相が勝つのか。その決戦の日が待ち遠しいでは

(ありませんか。)

ありませんか。

(「しょうねんたんけんたい」)

「少年探検隊」

(それいらい、あけちたんていはもちろん、けいさつもねっしんにそうさくを)

それ以来、明智探偵はもちろん、警察も熱心に捜索を

(つづけたのですが、にじゅうめんそうはどこへかくれてしまった)

続けたのですが、二十面相はどこへ隠れてしまった

(のか、まったくゆくえがわからなくなってしまい)

のか、まったく行方が分からなくなってしまい

(ました。かならず、しょうねんたんていだんいんのぜんいんにふくしゅうして)

ました。必ず、少年探偵団員の全員に復讐して

など

(みせると、あれほどせんげんしておきながら、まるで)

みせると、あれほど宣言しておきながら、まるで

(ものわすれでもしたように、どこかへきえてしまった)

物忘れでもしたように、どこかへ消えてしまった

(のです。ではにじゅうめんそうは、もうふくしゅうはあきらめた)

のです。 では二十面相は、もう復讐は諦めた

(のでしょうか。そして、ほばくされるこわさに、とうきょうから)

のでしょうか。そして、捕縛される怖さに、東京から

(にげだしてしまったのでしょうか。いやいや、ゆだんは)

逃げ出してしまったのでしょうか。いやいや、油断は

(できません。あいては、なにしろまほうつかいのようなかいぶつ)

出来ません。相手は、何しろ魔法使いのような怪物

(です。ふくしゅうをあきらめたとみせかけて、このとうきょうの)

です。復讐を諦めたと見せかけて、この東京の

(どこかのすみにみをひそめ、じっとじきがくるのを)

どこかの隅に身をひそめ、ジッと時機が来るのを

(まっているのかもしれません。そしてこんどこそ、)

待っているのかもしれません。そして今度こそ、

(せけんのひとをあっといわせるような、おそろしいけいかくを)

世間の人をアッと言わせるような、恐ろしい計画を

(たてているのかもしれません。にじゅうめんそうがすがたを)

たてているのかもしれません。 二十面相が姿を

(かくしてからはつかほどあとのことでした。ちょうど、)

隠してから二十日ほどあとのことでした。ちょうど、

(にちようびとさいじつがつづいて、おやすみがふつかつづいたので、)

日曜日と祭日が続いて、お休みが二日続いたので、

(しょうねんたんていだんいんたちはぜんいんではいきんぐにでかける)

少年探偵団員たちは全員でハイキングに出かける

(ことになりました。しょうねんたちは、にじゅうめんそうが、)

ことになりました。 少年たちは、二十面相が、

(ちっともすがたをあらわさないので、たいくつでしかたがなかった)

ちっとも姿を現さないので、退屈で仕方がなかった

(のです。それに、いまははるのおわりにちかく、はいきんぐ)

のです。それに、今は春の終わりに近く、ハイキング

(にはもってこいのきせつです。げんきなだんいんたちは、)

には持ってこいの季節です。元気な団員たちは、

(なんだかじっとしていられないようなきもちでした。)

なんだかジッとしていられないような気持ちでした。

(たんていのしごとがなければ、せめてやまのぼりでもして、)

探偵の仕事がなければ、せめて山登りでもして、

(おもうぞんぶんはねまわってみたかったのです。しょうねんたちは)

思う存分跳ね回ってみたかったのです。 少年たちは

(いっしゅうかんもまえから、このふつかつづきのおやすみにはどこへ)

一週間も前から、この二日続きのお休みにはどこへ

(でかけようかと、たのしくそうだんしていましたが、だんいんの)

出かけようかと、楽しく相談していましたが、団員の

(かつらしょういちくんとしのざきはじめくんが、おくたまのしょうにゅうどうをたんけんしよう)

桂正一君と篠崎始君が、奥多摩の鍾乳洞を探検しよう

(じゃないかとねっしんにしゅちょうしました。かつらくんとしのざきくんは、)

じゃないかと熱心に主張しました。 桂君と篠崎君は、

(おなじちゅうがっこうのいちねんせいでしたが、ごくさいきんにどうきゅうせいが)

同じ中学校の一年生でしたが、ごく最近に同級生が

(だいがくせいのにいさんといっしょに、そのしょうにゅうどうへでかけた)

大学生の兄さんと一緒に、その鍾乳洞へ出かけた

(ことがあって、そのしょうねんがどうくつのなかのものすごさ)

ことがあって、その少年が洞窟の中の物凄さ

(についていろいろとはなしてきかせてくれたので、ふたりは)

について色々と話して聞かせてくれたので、二人は

(もうむちゅうになってしまったのです。しょうねんたんていだんいん)

もう夢中になってしまったのです。少年探偵団員

(たちは、ふかさもしれないどうくつのたんけんときいて、)

たちは、深さも知れない洞窟の探検と聞いて、

(おおよろこびでさんせいしました。ぼうけんがなによりもすきな)

大喜びで賛成しました。冒険が何よりも好きな

(しょうねんたちのことですから、むりもありません。)

少年たちのことですから、無理もありません。

(そして、おやすみのはいきんぐは、おくたまの)

そして、お休みのハイキングは、奥多摩の

(nしょうにゅうどうときまったのでした。しょうねんたちの)

n鍾乳洞と決まったのでした。 少年たちの

(はいきんぐには、すこしみちのりがとおいですが、)

ハイキングには、少し道のりが遠いですが、

(そのにんずうはじゅういちにんもおり、そのなかにはおとなにも)

その人数は十一人もおり、その中には大人にも

(おとらない、しっかりもののこばやしよしおくんがだんちょうとして)

劣らない、しっかり者の小林芳雄君が団長として

(つきそっていくのですから、だんいんのおとうさん)

付き添って行くのですから、団員のお父さん

(おかあさんたちもあんしんして、このはいきんぐをおゆるしに)

お母さんたちも安心して、このハイキングをお許しに

(なりました。とうじつのにちようびのあさは、ぜんいんがくらいうち)

なりました。当日の日曜日の朝は、全員が暗いうち

(からおおさわぎして、りゅっくさっくをせおい、すいとうを)

から大騒ぎして、リュックサックを背負い、水筒を

(さげ、おとうさんのふるいすてっきなどをもって、)

さげ、お父さんの古いステッキなどを持って、

(とざんすがたでしんじゅくえきにしゅうごうしました。ちゅうおうせんでいちじかん)

登山姿で新宿駅に集合しました。 中央線で一時間

(ほど、それからしせんにのりかえて、またいちじかんあまり、)

ほど、それから支線に乗り換えて、また一時間余り、

(そのしゅうてんでおりると、こんどはかわぞいのみちをばすに)

その終点で降りると、今度は川沿いの道をバスに

(ゆられてやくさんじゅっぷん、それからさきは、もうくるまもとおらない)

揺られて約三十分、それから先は、もう車も通らない

(ほそいやまみちです。ばすをおりたしょうねんたんけんたいは、)

細い山道です。バスを降りた少年探検隊は、

(こばやしだんちょうをせんとうにそうぜいじゅういちにん、あしにまとわりつくくさを)

小林団長を先頭に総勢十一人、足にまとわりつく草を

(わけてこうしんきょくをがっしょうしながら、いさましくすすんでいき)

わけて行進曲を合唱しながら、勇ましく進んで行き

(ました。みあげるほどのわかばのやまと、ふかいたにがわが)

ました。見上げるほどの若葉の山と、深い谷川が

(あります。そのたにがわのむこうがわには、もくもくと)

あります。その谷川の向こう側には、モクモクと

(わかばがしげったやまがそびえています。あしのしたには、)

若葉がしげった山がそびえています。足の下には、

(ごうごうとひびくみずおと、そのみずおとにもまけずときこえて)

ゴウゴウと響く水音、その水音にも負けずと聞こえて

(くることりのさえずり、うぐいすのなきごえ、いってんのくもも)

来る小鳥のさえずり、ウグイスの鳴き声、一点の雲も

(なくはれわたったそらからは、きぎのわかばをとおして、まだ)

なく晴れ渡った空からは、木々の若葉を通して、まだ

(ごぜんちゅうのにっこうがさんさんとふりそそいでいます。「わ、)

午前中の日光がサンサンと降り注いでいます。「わ、

(おどろいた。なにかが、ぼくのあしのそばからとびだして)

驚いた。なにかが、ぼくの足のそばから跳び出して

(いったよ」「わ、うさぎだ。ほら、あそこあそこ。)

いったよ」「わ、ウサギだ。ほら、あそこあそこ。

(ああ、もうみえなくなった」「ほんとうかい」「うそな)

ああ、もう見えなくなった」「本当かい」「ウソな

(もんか。ねずみいろのみみのながいやつが、ぴょんぴょん)

もんか。ネズミ色の耳の長いやつが、ピョンピョン

(とんでいったんだよ。このへんには、うさぎのあなが)

跳んで行ったんだよ。このへんには、ウサギの穴が

(あるのかもしれないねえ」「うさぎならいいけど、)

あるのかもしれないねえ」「ウサギならいいけど、

(くまがでやしないかなあ」「だいじょうぶだよ。こんなところに)

クマが出やしないかなあ」「大丈夫だよ。こんな所に

(くまなんかでるもんか」「ふん、くまがでたら、)

クマなんか出るもんか」「ふん、クマが出たら、

(ぼくがきんたろうのようにすもうをとって、いけどりにして)

ぼくが金太郎のように相撲をとって、生け捕りにして

(やるんだがなあ」すもうせんしゅのかつらしょういちくんがじょうだんを)

やるんだがなあ」相撲選手の桂正一君が冗談を

(いうと、じゅういちにんがこえをそろえてわあわあとわらう)

言うと、十一人が声をそろえてワアワアと笑う

(のでした。うたったりはねたり、げんきなしょうねんたちのこと)

のでした。 歌ったり跳ねたり、元気な少年たちのこと

(ですから、じゅっきろあまりのやまみちをすこしもつかれないで、)

ですから、十キロ余りの山道を少しも疲れないで、

(おひるすぎには、もうnしょうにゅうどうのまえについていました。)

お昼過ぎには、もうn鍾乳洞の前に着いていました。

(しょうにゅうどうのいりぐちのすこしてまえに、いっけんのきたないやまごやが)

鍾乳洞の入り口の少し手前に、一軒の汚い山小屋が

(たっていて、そののきさきにはくだものやおかしやらむね)

建っていて、その軒先には果物やお菓子やラムネ

(などが、すこしだけならべてあります。しょうねんたちがそこを)

などが、少しだけ並べてあります。少年たちがそこを

(とおりかかると、いえのなかからやまおとこのようながんじょうな)

通りかかると、家の中から山男のような頑丈な

(じいさんが、にこにこしながらでてきました。)

じいさんが、ニコニコしながら出てきました。

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