『妖怪博士』江戸川乱歩44
○少年探偵団シリーズ第3作品『妖怪博士』
前回→https://typing.twi1.me/game/369916
次回→https://typing.twi1.me/game/369918
初回→https://typing.twi1.me/game/369844
第2作品→https://typing.twi1.me/game/329807
第1作品→https://typing.twi1.me/game/314206
順位 | 名前 | スコア | 称号 | 打鍵/秒 | 正誤率 | 時間(秒) | 打鍵数 | ミス | 問題 | 日付 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | berry | 7216 | 王 | 7.4 | 97.2% | 594.2 | 4414 | 126 | 97 | 2024/10/10 |
2 | みき | 6341 | S | 6.4 | 98.0% | 687.5 | 4450 | 90 | 97 | 2024/09/28 |
関連タイピング
-
プレイ回数10万歌詞200打
-
プレイ回数4044かな314打
-
プレイ回数96万長文かな1008打
-
プレイ回数3.2万歌詞1030打
-
プレイ回数28長文3856打
-
プレイ回数4.8万長文かな316打
-
プレイ回数1.8万長文かな102打
-
プレイ回数8.3万長文744打
問題文
(「おめえさんがた、しょうにゅうどうをけんぶつにきたのか」)
「おめえさん方、鍾乳洞を見物に来たのか」
(じいさんはひにやけたかおをしわだらけにして、)
じいさんは日に焼けた顔をシワだらけにして、
(しょうねんたちによびかけました。「ええ、そうです。)
少年たちに呼びかけました。「ええ、そうです。
(きょう、ぼくたちよりさきに、けんぶつにきたひとはいますか」)
今日、ぼくたちより先に、見物に来た人はいますか」
(こばやししょうねんもにこにこして、じいさんにたずねました。)
小林少年もニコニコして、じいさんにたずねました。
(「いいや、ひとりもきてねえよ。しょうにゅうどうは、このごろ)
「いいや、一人も来てねえよ。鍾乳洞は、この頃
(さびしがっている。おめえさんがた、がっこうのえんそくかね。)
寂しがっている。おめえさん方、学校の遠足かね。
(こどもばっかりで、よくこんなやまのなかへきたな。)
子どもばっかりで、よくこんな山の中へ来たな。
(みちでももんがにでくわさなかったか」「ははは、)
道でモモンガに出くわさなかったか」「ハハハ、
(ももんがってなんですか。やまのおばけですか。)
モモンガってなんですか。山のオバケですか。
(そんなもの、ぼくたちのいせいにおそれて、にげて)
そんなもの、ぼくたちの威勢に恐れて、逃げて
(いきますよ。ぼくたちはしょうねんたんけんたいなんですからね」)
いきますよ。ぼくたちは少年探検隊なんですからね」
(おちゃめなかつらくんがいばってみせると、じいさんもこえを)
お茶目な桂君が威張ってみせると、じいさんも声を
(たててわらいました。「おじいさん、こんなところにおかし)
たてて笑いました。「おじいさん、こんな所にお菓子
(なんかならべて、かうひとがいるんですか」おおのとしおくんが)
なんか並べて、買う人がいるんですか」大野敏夫君が
(ぶえんりょにたずねると、おじいさんはあけっぱなしの)
無遠慮にたずねると、おじいさんは開けっ放しの
(やまごやのなかをゆびさしながらこたえました。「ははは、)
山小屋の中を指差しながら答えました。「ハハハ、
(そんなもんでしょうばいにゃならねえよ。あれをみな。)
そんなもんで商売にゃならねえよ。あれを見な。
(ほら、あそこにてっぽうがかけてある。あれがおらの)
ほら、あそこに鉄砲が掛けてある。あれがおらの
(ほんしょくだ。おらはりょうしだよ」「ああ、りょうしなの。なにを)
本職だ。おらは猟師だよ」「ああ、猟師なの。何を
(とるんですか。くまですか、それともいのしし)
獲るんですか。クマですか、それともイノシシ
(ですか」「ははは、そんなものは、もっとおくへ)
ですか」「ハハハ、そんなものは、もっと奥へ
(いかなきゃあ、このへんにはいねえ。だがことしの)
行かなきゃあ、このへんには居ねえ。だが今年の
(しょうがつにゃ、このおくのやまで、でっけえくまをいっぴき)
正月にゃ、この奥の山で、でっけえクマを一匹
(とったぞ。おめえたちにみせてやりたかったなあ」)
獲ったぞ。おめえたちに見せてやりたかったなあ」
(「へえー、ほんとうですか。おじいさんはめいじんなんだね」)
「へえー、本当ですか。おじいさんは名人なんだね」
(「うん、よんじゅうねんまえからりょうしをやっているからね。)
「うん、四十年前から猟師をやっているからね。
(おめえさんがた、べんとうはもっているか。もっている)
おめえさん方、弁当は持っているか。持っている
(なら、あなへはいるまえにくっておくがいい。あなのなかは、)
なら、穴へ入る前に食っておくがいい。穴の中は、
(ずいぶんふかいから、べんとうがすんだら、おらがあんないして)
ずいぶん深いから、弁当が済んだら、おらが案内して
(やる」「じゃあ、おじいさんは、しょうにゅうどうのあんないにんも)
やる」「じゃあ、おじいさんは、鍾乳洞の案内人も
(やっているんですか」「うん、はるとあきは、それが)
やっているんですか」「うん、春と秋は、それが
(おらのないしょくだよ」「でも、ぼくたちにはひつようないん)
おらの内職だよ」「でも、ぼくたちには必要ないん
(です。しょうにゅうどうのないぶのことは、ほんでよんでしらべて)
です。鍾乳洞の内部のことは、本で読んで調べて
(きましたし、それにぼくたちはいろいろなたんけんどうぐを)
来ましたし、それにぼくたちは色々な探検道具を
(よういしてきたんです。ひゃくめーとるいじょうもある、ひもを)
用意して来たんです。百メートル以上もある、ヒモを
(みっつももっているんです。それをいりぐちのいわにくくり)
三つも持っているんです。それを入り口の岩にくくり
(つけて、ひもをのばしながらはいっていけば、みちにまよう)
つけて、ヒモを伸ばしながら入って行けば、道に迷う
(ことはありませんからね。そのほかにも、かいちゅうでんとうを)
ことはありませんからね。その他にも、懐中電灯を
(みっつもっていますし、じしゃくとかないふとか、すべて)
三つ持っていますし、磁石とかナイフとか、すべて
(そろっているんです。ぼくたちはたんけんたいですから、)
そろっているんです。ぼくたちは探検隊ですから、
(あんないにんなんかあっちゃあ、かえっておもしろくないん)
案内人なんかあっちゃあ、かえって面白くないん
(ですよ」こばやししょうねんがせつめいすると、おじいさんは)
ですよ」小林少年が説明すると、おじいさんは
(うなずいて、「そんなにいうんなら、あんないはしねえ。)
うなずいて、「そんなに言うんなら、案内はしねえ。
(あなのなかはわかれみちがいくつもあって、はじめてのものは)
穴の中は分かれ道がいくつもあって、初めての者は
(おっかながるが、なあにぐるぐるまわっている)
おっかながるが、なあにグルグルまわっている
(うちに、いりぐちへもどってくるよ。それに、そんなに)
うちに、入り口へ戻ってくるよ。それに、そんなに
(ながいひもをもっているんならだいじょうぶだ。まあ、べんとう)
長いヒモを持っているんなら大丈夫だ。まあ、弁当
(でもくって、ゆっくりけんぶつしてくるがええ」と、)
でも食って、ゆっくり見物してくるがええ」と、
(たのもしそうに、げんきなしょうねんたちをながめていました)
頼もしそうに、元気な少年たちをながめていました
(が、いちどうがそのへんのいわのうえにこしをおろして、)
が、一同がそのへんの岩の上に腰をおろして、
(りゅっくさっくのなかから、はなしあいできめたひのまる)
リュックサックの中から、話し合いで決めた日の丸
(べんとうをくいはじめると、じいさんはなおもじょうだんをいい)
弁当を食い始めると、じいさんはなおも冗談を言い
(ながら、やまごやのなかへすがたをけしてしまいました。)
ながら、山小屋の中へ姿を消してしまいました。
(「やみのめいろ」)
「闇の迷路」
(しょうねんたちはことりのこえをききながら、おおきなにぎりめしを)
少年たちは小鳥の声を聞きながら、大きな握り飯を
(すっかりたいらげ、すいとうのみずをごくごくのんで、おひる)
すっかり平らげ、水筒の水をゴクゴク飲んで、お昼
(ごはんをすませると、あるものはりゅっくさっくのなか)
ご飯を済ませると、ある者はリュックサックの中
(からみちしるべのひもを、あるものはかいちゅうでんとうをだし、)
から道しるべのヒモを、ある者は懐中電灯を出し、
(かくじしゅっぱつのよういをして、いよいよしょうにゅうどうのいりぐちへ)
各自出発の用意をして、いよいよ鍾乳洞の入り口へ
(ちかづきました。おおきなやまのしたに、けずりとったような、)
近付きました。大きな山の下に、削り取ったような、
(おそろしいいわがむきだしになっていて、そのいわの)
恐ろしい岩がむきだしになっていて、その岩の
(いちぶに、まるでかいぶつがくちをあけてでもいるような、)
一部に、まるで怪物が口をあけてでもいるような、
(まっくろなあながぽっかりとあいています。それが、)
真っ黒な穴がポッカリとあいています。それが、
(どうくつのいりぐちなのです。「さあ、いよいよ、)
洞窟の入り口なのです。「さあ、いよいよ、
(ぼくたちはどうくつのめいろのなかへはいるんだぜ。)
ぼくたちは洞窟の迷路の中へ入るんだぜ。
(みちしるべのひもをたんとうするのは、しのざきくんだよ。)
道しるべのヒモを担当するのは、篠崎君だよ。
(ここへ、ひものはしをしっかりむすびつけてくれたまえ。)
ここへ、ヒモの端をしっかり結びつけてくれたまえ。
(そして、どんなことがあってもひもをはなしちゃだめ)
そして、どんなことがあってもヒモを放しちゃダメ
(だよ。それをはなしたら、ぼくたちはまいごになって)
だよ。それを放したら、ぼくたちは迷子になって
(しまうんだからね。いいかい」こばやしだんちょうのさしずに)
しまうんだからね。いいかい」 小林団長の指図に
(したがって、しのざきはじめくんはてにしていたおおきな)
したがって、篠崎始君は手にしていた大きな
(にづくりようのひものはしをとがったいわのさきにしっかり)
荷作り用のヒモの端を尖った岩の先にしっかり
(むすびつけました。「かいちゅうでんとうは、まずはしばくんのをつかう)
結びつけました。「懐中電灯は、まず羽柴君のを使う
(ことにしよう。みっつどうじにつかって、でんちがきれて)
ことにしよう。三つ同時に使って、電池が切れて
(しまってはたいへんだからね。さあ、はしばくんそれを)
しまっては大変だからね。さあ、羽柴君それを
(つけて、ぼくといっしょにさきにたってあるくんだよ」だんちょうと)
つけて、ぼくと一緒に先に立って歩くんだよ」団長と
(いっしょにせんとうにたつことになったそうじくんは、すっかり)
一緒に先頭に立つことになった壮二君は、すっかり
(きもちをたかぶらせ、かいちゅうでんとうをふりてらしながら、)
気持ちを高ぶらせ、懐中電灯を振り照らしながら、
(はやくもどうくつのなかへいきました。つづいてこばやしだんちょう、)
早くも洞窟の中へ行きました。 続いて小林団長、
(それからこいずみのぶおくん、あいかわたいじくんと、じゅうにんのだんいんが)
それから小泉信雄君、相川泰二君と、十人の団員が
(たていちれつになってぞろぞろとあなのなかへはいっていき)
縦一列になってゾロゾロと穴の中へ入って行き
(ました。さいこうびにはひもをもつしのざきくん、そのよこには)
ました。最後尾にはヒモを持つ篠崎君、その横には
(すもうせんしゅのかつらしょういちくんが、ごえいやくのようによりそって)
相撲選手の桂正一君が、護衛役のように寄り添って
(います。どうくつにはいってご、ろっぽいくと、みちがひじょうに)
います。洞窟に入って五、六歩行くと、道が非常に
(せまくなっており、よつんばいにならなければすすめない)
狭くなっており、四つん這いにならなければ進めない
(ほどです。しかし、そのせまいみちをじゅうめーとるすすめば)
ほどです。しかし、その狭い道を十メートル進めば
(ひろいばしょにでるということを、ほんでよんでいたもの)
広い場所に出るということを、本で読んでいたもの
(ですから、ぜんいんひどくぶきみなのをがまんして、)
ですから、全員ひどく不気味なのを我慢して、
(ごそごそとつめたいいわはだにさわりながら、はっていき)
ゴソゴソと冷たい岩肌にさわりながら、這って行き
(ました。そうしてしばらくいくと、あんのじょう、とつぜん、)
ました。そうしてしばらく行くと、案の定、突然、
(さゆうのいわはだがなくなってしまったかとおもわれるほど、)
左右の岩肌が無くなってしまったかと思われるほど、
(ひろいばしょにでました。いわのてんじょうがどのへんにある)
広い場所に出ました。岩の天井がどのへんにある
(のか、たかさもわからないくらいです。「しのざきくん、)
のか、高さも分からないくらいです。「篠崎君、
(ひもはだいじょうぶかい」「うん、だいじょうぶだよ」そのこえが、)
ヒモは大丈夫かい」「うん、大丈夫だよ」その声が、
(まるでふかいいどのなかでものをいっているように、)
まるで深い井戸の中で物を言っているように、
(がーんとひびいて、かすかなこだまがかえってきました。)
ガーンと響いて、かすかな木霊が返ってきました。