紫式部 源氏物語 空蝉 2 與謝野晶子訳

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1 berry 7778 7.8 98.7% 383.9 3025 39 46 2024/10/25
2 HAKU 7441 7.6 97.2% 399.4 3057 85 46 2024/10/05
3 だだんどん 6204 A++ 6.7 92.3% 447.9 3029 250 46 2024/11/05

問題文

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(「へいぜいいないひとがきていまして、あねのそばへいかれないのです」)

「平生いない人が来ていまして、姉のそばへ行かれないのです」

(「そしてこんばんのうちにかえすのだろうか。あえなくてはつまらない」)

「そして今晩のうちに帰すのだろうか。逢えなくてはつまらない」

(「そんなことはないでしょう。あのひとがいってしまいましたら)

「そんなことはないでしょう。あの人が行ってしまいましたら

(わたくしがよくいたします」 といった。さもせいこうのじしんがあるようなことをいう、)

私がよくいたします」 と言った。さも成功の自信があるようなことを言う、

(こどもだけれどめはしがよくきくのだからよくいくかもしれないと)

子供だけれど目はしがよく利くのだからよくいくかもしれないと

(げんじはおもっていた。ごのしょうぶがいよいよおわったのか、ひとがわかれわかれに)

源氏は思っていた。碁の勝負がいよいよ終わったのか、人が分かれ分かれに

(たっていくようなおとがした。 「わかさまはどこにいらっしゃいますか。)

立って行くような音がした。 「若様はどこにいらっしゃいますか。

(このおこうしはしめてしまいますよ」 といってこうしをことことと)

このお格子はしめてしまいますよ」 と言って格子をことことと

(なかからならした。 「もうみなねるのだろう、じゃあはいっていってじょうずにやれ」)

中から鳴らした。 「もう皆寝るのだろう、じゃあはいって行って上手にやれ」

(とげんじはいった。こぎみもきまじめなあねのこころはうごかせそうではないのをしって)

と源氏は言った。小君もきまじめな姉の心は動かせそうではないのを知って

(そうだんはせずに、そばにひとのすくないときにしんしつへげんじをみちびいていこうと)

相談はせずに、そばに人の少ない時に寝室へ源氏を導いて行こうと

(おもっているのである。 「きいのかみのいもうともこちらにいるのか。)

思っているのである。 「紀伊守の妹もこちらにいるのか。

(わたくしにすきみさせてくれ」 「そんなこと、こうしにはきちょうがそえて)

私に隙見させてくれ」 「そんなこと、格子には几帳が添えて

(たててあるのですから」 とこぎみはいう。そのとおりだ、しかし、)

立ててあるのですから」 と小君は言う。そのとおりだ、しかし、

(そうだけれどとげんじはおかしくおもったが、みたとはしらすまい、かわいそうだと)

そうだけれどと源氏はおかしく思ったが、見たとは知らすまい、かわいそうだと

(かんがえて、ただよふけまでまつくつうをいっていた。こぎみは、こんどはよこのつまどを)

考えて、ただ夜ふけまで待つ苦痛を言っていた。小君は、今度は横の妻戸を

(あけさせてはいっていった。 にょうぼうたちはみなねてしまった。)

あけさせてはいって行った。 女房たちは皆寝てしまった。

(「このしきいのまえでわたくしはねる。よくかぜがとおるから」 といって、こぎみはいたまに)

「この敷居の前で私は寝る。よく風が通るから」 と言って、小君は板間に

(うわしきをひろげてねた。にょうぼうたちはとうなんのすみのへやにみなはいってねたようである。)

上敷をひろげて寝た。女房たちは東南の隅の室に皆はいって寝たようである。

(こぎみのためにつまどをあけにでてきたどうじょもそこへはいってねた。)

小君のために妻戸をあけに出て来た童女もそこへはいって寝た。

など

(しばらくそらねいりをしてみせたあとで、こぎみはそのすみのへやからさしている)

しばらく空寝入りをして見せたあとで、小君はその隅の室からさしている

(ひのあかりのほうを、ひろげたびょうぶでへだててこちらはくらくなったつまどのまえのへやへ)

灯の明りのほうを、ひろげた屏風で隔ててこちらは暗くなった妻戸の前の室へ

(げんじをひきいれた。ひとめについてはじをかきそうなふあんをおぼえながら、げんじは)

源氏を引き入れた。人目について恥をかきそうな不安を覚えながら、源氏は

(みちびかれるままにちゅうおうのおもやのきちょうのたれをはねてなかへはいろうとした。)

導かれるままに中央の母屋の几帳の垂絹をはねて中へはいろうとした。

(それはきわめてさいしんにおこなっていることであったが、いえのなかが)

それはきわめて細心に行なっていることであったが、家の中が

(ねしずまったじかんには、やわらかなげんじのきぬずれのおともみみだった。おんなはちかごろげんじの)

寝静まった時間には、柔らかな源氏の衣摺れの音も耳立った。女は近ごろ源氏の

(てがみのこなくなったのを、あんしんのできることにおもおうとするのであったが、)

手紙の来なくなったのを、安心のできることに思おうとするのであったが、

(いまもゆめのようなあのよるのおもいでをなつかしがって、まいよあんみんも)

今も夢のようなあの夜の思い出をなつかしがって、毎夜安眠も

(できなくなっているころであった。 ひとしれぬこいはひるはしゅうじつものおもいをして、)

できなくなっているころであった。 人知れぬ恋は昼は終日物思いをして、

(よるはねざめがちなおんなにこのひとをしていた。ごのあいてのむすめは、)

夜は寝ざめがちな女にこの人をしていた。碁の相手の娘は、

(こんやはこちらでとまるといってわかわかしいくったくのないはなしをしながらねてしまった。)

今夜はこちらで泊まるといって若々しい屈託のない話をしながら寝てしまった。

(むじゃきにむすめはよくねむっていたが、げんじがこのへやへよってきて、いふくのもつたきものの)

無邪気に娘はよく睡っていたが、源氏がこの室へ寄って来て、衣服の持つ薫物の

(こうがながれてきたときにきづいておんなはかおをあげた。なつのうすいきちょうごしに)

香が流れてきた時に気づいて女は顔を上げた。夏の薄い几帳越しに

(ひとのみじろぐのがくらいなかにもよくかんじられるのであった。しずかにおきて、)

人のみじろぐのが暗い中にもよく感じられるのであった。静かに起きて、

(うすぎぬのひとえをひとつきただけでそっとしんしつをぬけてでた。)

薄衣の単衣を一つ着ただけでそっと寝室を抜けて出た。

(はいってきたげんじは、そとにだれもいずひとりでおんながねていたのにあんしんした。)

はいって来た源氏は、外にだれもいず一人で女が寝ていたのに安心した。

(ちょうだいからしたのところにふたりほどにょうぼうがねていた。うえにかずいたきものをのけて)

帳台から下の所に二人ほど女房が寝ていた。上に被いた着物をのけて

(よっていったときに、あのときのおんなよりもおおきいきがしてもまだげんじは)

寄って行った時に、あの時の女よりも大きい気がしてもまだ源氏は

(こいびとだとばかりおもっていた。あまりによくねむっていることなどにふしんが)

恋人だとばかり思っていた。あまりによく眠っていることなどに不審が

(おこってきて、やっとげんじにそのひとでないことがわかった。あきれるとともに)

起こってきて、やっと源氏にその人でないことがわかった。あきれるとともに

(くやしくてならぬこころになったが、ひとちがいであるといってここからでていくことも)

くやしくてならぬ心になったが、人違いであるといってここから出ていくことも

(あやしがられることでこまったとげんじはおもった。そのひとのかくれたばしょへいっても、)

怪しがられることで困ったと源氏は思った。その人の隠れた場所へ行っても、

(これほどにじぶんからにげようとするのにいっしんであるひとはこころよくじぶんに)

これほどに自分から逃げようとするのに一心である人は快く自分に

(あうはずもなくて、ただぶべつされるだけであろうというきがして、)

逢うはずもなくて、ただ侮蔑されるだけであろうという気がして、

(これがあのびじんであったらこんやのじょうじんにこれをしておいてもよいという)

これがあの美人であったら今夜の情人にこれをしておいてもよいという

(こころになった。これでつれないひとへのげんじのこいもなにほどのふかさかとうたがわれる。)

心になった。これでつれない人への源氏の恋も何ほどの深さかと疑われる。

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