紫式部 源氏物語 若紫 16 與謝野晶子訳

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順位 名前 スコア 称号 打鍵/秒 正誤率 時間(秒) 打鍵数 ミス 問題 日付
1 subaru 7644 7.9 96.8% 371.4 2935 96 45 2024/10/23
2 HAKU 7258 7.6 95.6% 388.9 2956 133 45 2024/10/24
3 □「いいね」する 6989 S++ 7.3 95.6% 402.6 2949 135 45 2024/10/23
4 りつ 3927 D++ 4.1 95.8% 735.4 3020 132 45 2024/10/24

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問題文

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(「こんなにしょうにんずうでこのさびしいやしきにどうしてすめるのですか」)

「こんなに少人数でこの寂しい邸にどうして住めるのですか」

(といってげんじはないていた。すててかえっていけないきがするのであった。)

と言って源氏は泣いていた。捨てて帰って行けない気がするのであった。

(「もうとをおろしておしまいなさい。こわいようなよるだから、わたくしがとのいのおとこに)

「もう戸をおろしておしまいなさい。こわいような夜だから、私が宿直の男に

(なりましょう。にょうぼうがたはみなにょおうさんのへやへきていらっしゃい」)

なりましょう。女房方は皆女王さんの室へ来ていらっしゃい」

(といって、なれたことのようににょおうさんをちょうだいのなかへだいてはいった。)

と言って、馴れたことのように女王さんを帳台の中へ抱いてはいった。

(だれもだれもいがいなことにあきれていた。めのとはしんぱいをしながらもふつうの)

だれもだれも意外なことにあきれていた。乳母は心配をしながらも普通の

(ちんにゅうしゃをあつかうようにはできぬあいてにたんそくをしながらひかえていた。しょうにょおうは)

闖入者を扱うようにはできぬ相手に歎息をしながら控えていた。小女王は

(おそろしがってどうするのかとふるえているのではだもけあながたっている。)

恐ろしがってどうするのかと慄えているので肌も毛穴が立っている。

(かわいくおもうげんじはささやかないせいをひとえにまきくるんで、それだけをへだてに)

かわいく思う源氏はささやかな異性を単衣に巻きくるんで、それだけを隔てに

(よりそっていた。このしょさがわれながらぜにんしがたいものとはおもいながらも)

寄り添っていた。この所作がわれながら是認しがたいものとは思いながらも

(あいじょうをこめていろいろとはなしていた。 「ねえ、いらっしゃいよ、)

愛情をこめていろいろと話していた。 「ねえ、いらっしゃいよ、

(おもしろいえがたくさんあるいえで、おひなさまあそびなんかのよくできるわたくしのうちへね」)

おもしろい絵がたくさんある家で、お雛様遊びなんかのよくできる私の家へね」

(こんなふうにちいさいひとのきにいるようなはなしをしてくれるげんじのやわらかいちょうしに、)

こんなふうに小さい人の気に入るような話をしてくれる源氏の柔らかい調子に、

(ひめぎみはおそろしさからしだいにかいほうされていった。しかしぶきみであることは)

姫君は恐ろしさから次第に解放されていった。しかし不気味であることは

(わすれずに、ねむりいることはなくてみじろぎしながらねていた。)

忘れずに、眠り入ることはなくて身じろぎしながら寝ていた。

(このばんはよどおしかぜがふきあれていた。 「ほんとうにおきゃくさまがおとまりに)

この晩は夜通し風が吹き荒れていた。 「ほんとうにお客様がお泊まりに

(ならなかったらどんなにわたくしたちはこころぼそかったでしょう。おなじことならにょおうさまが)

ならなかったらどんなに私たちは心細かったでしょう。同じことなら女王様が

(ほんとうのごけっこんのできるおとしであればね」 などとにょうぼうたちは)

ほんとうの御結婚のできるお年であればね」 などと女房たちは

(ささやいていた。しんぱいでならないめのとはちょうだいのちかくにじしていた。)

ささやいていた。心配でならない乳母は帳台の近くに侍していた。

(かぜのすこしふきやんだときはまだくらかったが、かえるげんじはほんとうのこいびとのもとを)

風の少し吹きやんだ時はまだ暗かったが、帰る源氏はほんとうの恋人のもとを

など

(わかれていくじょうけいににていた。 「かわいそうなにょおうさんとこんなに)

別れて行く情景に似ていた。 「かわいそうな女王さんとこんなに

(したしくなってしまったいじょう、わたくしもしばらくのあいだもこんないえへおいておくことは)

親しくなってしまった以上、私もしばらくの間もこんな家へ置いておくことは

(きがかりでたまらない。わたくしのしじゅうすんでいるうちへおうつししよう。こんなさびしい)

気がかりでたまらない。私の始終住んでいる家へお移ししよう。こんな寂しい

(せいかつをばかりしていらっしゃってはにょおうさんがしんけいすいじゃくになるから」)

生活をばかりしていらっしゃっては女王さんが神経衰弱になるから」

(とげんじがいった。 「みやさまもそんなにおっしゃいますが、)

と源氏が言った。 「宮様もそんなにおっしゃいますが、

(あちらへおいでになることも、しじゅうくにちがすんでからがよろしかろうと)

あちらへおいでになることも、四十九日が済んでからがよろしかろうと

(ぞんじております」 「おとうさまのおやしきではあっても、ちいさいときからべつのところで)

存じております」 「お父様のお邸ではあっても、小さい時から別の所で

(おそだちになったのだから、わたくしにたいするおきもちとしんみつさは)

お育ちになったのだから、私に対するお気持ちと親密さは

(そうちがわないでしょう。いまからいっしょにいることがしょうらいのさわりに)

そう違わないでしょう。今からいっしょにいることが将来の障りに

(なるようなことはだんじてない。わたくしのあいがこんていのふかいものになるだけだとおもう」)

なるようなことは断じてない。私の愛が根底の深いものになるだけだと思う」

(とにょおうのかみをなでながらげんじはいってかえりみながらさった。ふかくきりにくもったそらも)

と女王の髪を撫でながら源氏は言って顧みながら去った。深く霧に曇った空も

(えんであって、だいちにはしもがしろかった。ほんとうのこいのしのびあるきにもてきしたあさの)

艶であって、大地には霜が白かった。ほんとうの恋の忍び歩きにも適した朝の

(ふうけいであるとおもうと、げんじはすこしものたりなかった。ちかごろかくれてかよっているひとの)

風景であると思うと、源氏は少し物足りなかった。近ごろ隠れて通っている人の

(いえがとちゅうにあるのをおもいだして、そのもんをたたかせたがうちへは)

家が途中にあるのを思い出して、その門をたたかせたが内へは

(きこえないらしい。しかたがなくてとものなかからこえのいいおとこをえらんでうたわせた。 )

聞こえないらしい。しかたがなくて供の中から声のいい男を選んで歌わせた。

(あさぼらけきりたつそらのまよいにもゆきすぎがたきいもがかどかな )

朝ぼらけ霧立つ空の迷ひにも行き過ぎがたき妹が門かな

(にどくりかえさせたのである。きのきいたふうをしたしもづかえのじょちゅうをだして、 )

二度繰り返させたのである。気のきいたふうをした下仕えの女中を出して、

(たちとまりきりのまがきのすぎうくばくさのとさじにさわりしもせじ )

立ちとまり霧の籬の過ぎうくば草の戸さじに障りしもせじ

(といわせた。おんなはすぐにもんへはいってしまった。それきりだれも)

と言わせた。女はすぐに門へはいってしまった。それきりだれも

(でてこないので、かえってしまうのもれいたんなきがしたが、よるがどんどん)

出て来ないので、帰ってしまうのも冷淡な気がしたが、夜がどんどん

(あけてきそうで、きまりのわるさににじょうのいんへくるまをすすめさせた。)

明けてきそうで、きまりの悪さに二条の院へ車を進めさせた。

(かわいかったしょうにょおうをおもいだして、げんじはひとりえみをしながらまたねをした。)

かわいかった小女王を思い出して、源氏は独り笑みをしながら又寝をした。

(あさおそくなっておきたげんじはてがみをやろうとしたが、かくぶんしょうも)

朝おそくなって起きた源氏は手紙をやろうとしたが、書く文章も

(ふつうのこいびとあつかいにはされないので、ふでをやすめやすめかんがえてかいた。)

普通の恋人扱いにはされないので、筆を休め休め考えて書いた。

(よいえなどもおくった。)

よい絵なども贈った。

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