夜長姫と耳男14

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プレイ回数82難易度(4.1) 2855打 長文
坂口安吾の小説です。青空文庫から引用
底本:「坂口安吾全集 12」筑摩書房
   1999(平成11)年1月20日初版第1刷発行
底本の親本:「新潮 第四九巻第六号」
   1952(昭和27)年6月1日発行
初出:「新潮 第四九巻第六号」
   1952(昭和27)年6月1日発行
入力:砂場清隆
校正:田中敬三
2006年2月21日作成
青空文庫作成ファイル
順位 名前 スコア 称号 打鍵/秒 正誤率 時間(秒) 打鍵数 ミス 問題 日付
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4 りく 6122 A++ 6.2 98.3% 461.9 2877 49 63 2024/09/11
5 しらたま 3816 D++ 4.1 91.7% 680.7 2855 257 63 2024/09/11

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問題文

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(そのころ、このやまおくにまでほーそーがはやり、)

そのころ、この山奥にまでホーソーがはやり、

(あのむらにも、このさとにも、しぬものがきりもなかった。)

あの村にも、この里にも、死ぬ者がキリもなかった。

(えきびょうはついにこのむらにもおしよせたから、)

疫病はついにこの村にも押し寄せたから、

(いえごとにやくびょうよけのごふをはり、はくちゅうもかたくとをとして、)

家ごとに疫病除けの護符をはり、白昼もかたく戸を閉して、

(いっかひたいをあつめてにちやしんぶつにいのっていたが、)

一家ヒタイを集めて日夜神仏に祈っていたが、

(あくまはどのすきまからしのびこんでくるものやら、)

悪魔はどの隙間から忍びこんでくるものやら、

(ひましにしぬものがおおくなるいっぽうだった。)

日ましに死ぬ者が多くなる一方だった。

(ちょうじゃのいえでもひろいていないのあまどをおろして)

長者の家でも広い邸内の雨戸をおろして

(かぞくはにっちゅうもいきをころしていたが、)

家族は日中も息を殺していたが、

(ひめのへやだけは、ひめがあまどをしめさせなかった。)

ヒメの部屋だけは、ヒメが雨戸を閉めさせなかった。

(「みみおのつくったばけもののぞうは、)

「耳男の造ったバケモノの像は、

(みみおがむすうのへびをさきころしてさかさづりにして、)

耳男が無数の蛇を裂き殺して逆吊りにして、

(いきちをあびながらのろいをこめてきざんだばけものだから、)

生き血をあびながら咒いをこめて刻んだバケモノだから、

(やくびょうよけのまじないぐらいにはなるらしいわ。)

疫病よけのマジナイぐらいにはなるらしいわ。

(ほかにしゅとくもなさそうなばけものだから、もんのそとへかざってごらん」)

ほかに取得もなさそうなバケモノだから、門の外へ飾ってごらん」

(ひめはひとにめいじて、ずしごともんぜんへすえさせた。)

ヒメは人に命じて、ズシごと門前へすえさせた。

(ちょうじゃのやしきにはこうろうがあった。)

長者の邸には高楼があった。

(ひめはときどきこうろうにのぼってむらをながめたが、)

ヒメは時々高楼にのぼって村を眺めたが、

(むらはずれのもりのなかにししゃをすてにいくためにはこぶもののすがたをみると、)

村はずれの森の中に死者をすてに行くために運ぶ者の姿を見ると、

(ひめはいちにちはみちたりたようすであった。)

ヒメは一日は充ち足りた様子であった。

など

(おれはあおがさがのこしたこやで、)

オレは青ガサが残した小屋で、

(こんどこそひめのじぶつのみろくのぞうにせいこんかたむけていた。)

今度こそヒメの持仏のミロクの像に精魂かたむけていた。

(ほとけのかおにひめのえがおをうつすのがおれのかんがえであった。)

ホトケの顔にヒメの笑顔をうつすのがオレの考えであった。

(このていないでにんげんらしくうごいているのは、)

この邸内で人間らしくうごいているのは、

(ひめとおれのふたりだけであった。)

ヒメとオレの二人だけであった。

(みろくにひめのえがおをうつしてじぶつをきざんでいるときいて)

ミロクにヒメの笑顔をうつして持仏を刻んでいるときいて

(ひめはいちおうまんぞくのふうではあったが、)

ヒメは一応満足の風ではあったが、

(じつはおれのしごとをきにかけているようすはなかった。)

実はオレの仕事を気にかけている様子はなかった。

(ひめはおれのしごとのはかどりをみにきたことはついぞなかった。)

ヒメはオレの仕事のはかどりを見に来たことはついぞなかった。

(こやにすがたをあらわすのは、ししゃをもりへすてにいく)

小屋に姿を現すのは、死者を森へすてに行く

(ひとむれをみかけたときにきまっていた。)

人群れを見かけたときにきまっていた。

(とくにおれをえらんでそれをきかせにくるのではなく、)

特にオレを選んでそれをきかせに来るのではなく、

(ていないのひとりひとりにもれなくきかせてまわるのが)

邸内の一人一人にもれなく聞かせてまわるのが

(ひめのたのしみのようすであった。)

ヒメのたのしみの様子であった。

(「きょうもしんだひとがあるのよ」)

「今日も死んだ人があるのよ」

(それをきかせるときも、にこにことたのしそうであった。)

それをきかせるときも、ニコニコとたのしそうであった。

(ついでにぶつぞうのできぐあいをみていくようなことはなかった。)

ついでに仏像の出来ぐあいを見て行くようなことはなかった。

(それにはひとめもくれなかった。そしてながくはとどまらなかった。)

それには一目もくれなかった。そして長くはとどまらなかった。

(おれはひめになぶられているのではないかとうたがっていた。)

オレはヒメになぶられているのではないかと疑っていた。

(さりげないふうをみせているが、じつはやっぱりがんじつに)

さりげない風を見せているが、実はやっぱり元日に

(おれをころすつもりであったにそういないとおれはときどきかんがえた。)

オレを殺すつもりであったに相違ないとオレは時々考えた。

(なぜなら、ひめはおれのつくったばけものを)

なぜなら、ヒメはオレの造ったバケモノを

(やくびょうよけにもんぜんへすえさせたとき、)

疫病よけに門前へすえさせたとき、

(「みみおがむすうのへびをさきころしてさかさにつり、)

「耳男が無数の蛇を裂き殺して逆さに吊り、

(へびのいきちをあびながらのろいをかけてきざんだばけものだから、)

蛇の生き血をあびながら咒いをかけて刻んだバケモノだから、

(やくびょうよけのまじないぐらいにはなりそうね。)

疫病よけのマジナイぐらいにはなりそうね。

(ほかにしゅとくもなさそうですから、もんのまえへかざってごらん」)

ほかに取得もなさそうですから、門の前へ飾ってごらん」

(といったそうだ。おれはそれをひとづてにきいて、)

と云ったそうだ。オレはそれを人づてにきいて、

(おもわずすくんでしまったものだ。)

思わずすくんでしまったものだ。

(おれがのろいをかけてきざんだことまでしりぬいていて、)

オレが咒いをかけて刻んだことまで知りぬいていて、

(おれをいかしておくひめがおそろしいとおもった。)

オレを生かしておくヒメが怖ろしいと思った。

(さんにんのたくみのさくからおれのものをえらんでおいて、)

三人のタクミの作からオレの物を選んでおいて、

(やくびょうよけのまじないにでもつかうほかにしゅとくもなさそうだと)

疫病よけのマジナイにでも使うほかに取得もなさそうだと

(しゃあしゃあというひめのほんとうのはらのそこがおそろしかった。)

シャア/\と言うヒメの本当の腹の底が怖ろしかった。

(おれにひきでものをあたえたがんじつには、)

オレにヒキデモノを与えた元日には、

(ひめのことばにちょうじゃまであおざめてしまった。)

ヒメの言葉に長者まで蒼ざめてしまった。

(ひめのほんとうのはらのそこは、ちちのちょうじゃにもはかりかねるのであろう。)

ヒメの本当の腹の底は、父の長者にも量りかねるのであろう。

(ひめがそれをおこなうときまで、)

ヒメがそれを行う時まで、

(ひめのこころはすべてのひとにときがたいなぞであろう。)

ヒメの心は全ての人に解きがたい謎であろう。

(いまはおれをころすことがねんとうになくとも、)

いまはオレを殺すことが念頭になくとも、

(がんじつにはあったかもしれないし、またあしたはあるかもしれない。)

元日にはあったかも知れないし、また明日はあるかも知れない。

(ひめがおれのなにかにきょうみをもったということは、)

ヒメがオレの何かに興味をもったということは、

(おれがひめにいつころされてもふしぎではないということであろう。)

オレがヒメにいつ殺されてもフシギではないということであろう。

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