紫式部 源氏物語 紅葉賀 3 與謝野晶子訳

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1 HAKU 8017 8.2 97.6% 265.8 2183 52 31 2024/11/04
2 subaru 7841 8.2 95.5% 263.1 2163 100 31 2024/11/02
3 berry 7734 7.9 97.7% 272.4 2156 49 31 2024/11/04
4 おもち 7481 7.7 97.1% 282.7 2179 64 31 2024/11/17
5 りく 5914 A+ 6.0 98.1% 366.7 2210 41 31 2024/11/17

問題文

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(それがあってからふじつぼのみやはきゅうちゅうからじっかへおかえりになった。あうきかいを)

それがあってから藤壺の宮は宮中から実家へお帰りになった。逢う機会を

(とらえようとして、げんじはみやていのほうもんにばかりかかずらっていて、さだいじんけの)

とらえようとして、源氏は宮邸の訪問にばかりかかずらっていて、左大臣家の

(ふじんもあまりおとなわなかった。そのうえむらさきのひめぎみをむかえてからは、にじょうのいんへ)

夫人もあまり訪わなかった。その上紫の姫君を迎えてからは、二条の院へ

(あらたなひとをいれたとつたえたものがあって、ふじんのこころはいっそううらめしかった。)

新たな人を入れたと伝えた者があって、夫人の心はいっそう恨めしかった。

(しんそうをしらないのであるからうらんでいるのがもっともであるが、しょうじきに)

真相を知らないのであるから恨んでいるのがもっともであるが、正直に

(ふつうのひとのようにくちへだしてうらめばじぶんもじじつをはなして、じぶんのこころもちを)

普通の人のように口へ出して恨めば自分も事実を話して、自分の心持ちを

(せつめいもしなぐさめもできるのであるが、ひとりでいろいろなそんたくをして)

説明もし慰めもできるのであるが、一人でいろいろな忖度をして

(うらんでいるというたいどがいやで、じぶんはついほかのひとにうわきなこころが)

恨んでいるという態度がいやで、自分はついほかの人に浮気な心が

(よっていくのである。とにかくかんぜんなおんなで、けってんといってはなにもない、)

寄っていくのである。とにかく完全な女で、欠点といっては何もない、

(だれよりもいちばんさいしょにけっこんしたつまであるから、どんなにこころのなかでは)

だれよりもいちばん最初に結婚した妻であるから、どんなに心の中では

(そんちょうしているかしれない、それがわからないあいだはまだしかたがない。しょうらいは)

尊重しているかしれない、それがわからない間はまだしかたがない。将来は

(きっとじぶんのおもうようなつまになしうるだろうとげんじはおもって、そのひとが)

きっと自分の思うような妻になしうるだろうと源氏は思って、その人が

(すこしのことでげんじからはなれるようなけいそつなこういにでないせいかくであることも)

少しのことで源氏から離れるような軽率な行為に出ない性格であることも

(げんじはしんじてうたがわなかったのである。えいきゅうにむすばれたふうふとして)

源氏は信じて疑わなかったのである。永久に結ばれた夫婦として

(そのひとをおもうあいにはまたとくべつなものがあった。)

その人を思う愛にはまた特別なものがあった。

(わかむらさきはなれていくにしたがって、せいしつのよさもようぼうのびもげんじのこころを)

若紫は馴れていくにしたがって、性質のよさも容貌の美も源氏の心を

(おおくひいた。ひめぎみはむじゃきによくげんじをあいしていた。いえのものにもなにびとであるか)

多く惹いた。姫君は無邪気によく源氏を愛していた。家の者にも何人であるか

(しらすまいとして、いまもはじめのにしのたいをすまいにさせて、そこにかれいなせつびをば)

知らすまいとして、今も初めの西の対を住居にさせて、そこに華麗な設備をば

(くわえ、じしんもしじゅうこちらにきていてわかいにょおうをきょういくしていくことにちからを)

加え、自身も始終こちらに来ていて若い女王を教育していくことに力を

(いれているのである。てほんをかいてならわせなどもして、いままでよそにいたむすめを)

入れているのである。手本を書いて習わせなどもして、今までよそにいた娘を

など

(よびよせたぜんりょうなちちのようになっていた。じむのあつかいどころをつくり、けいしもべつに)

呼び寄せた善良な父のようになっていた。事務の扱い所を作り、家司も別に

(めいじてきぞくせいかつをするのになんのふそくもかんじさせなかった。しかもこれみついがいのものは)

命じて貴族生活をするのに何の不足も感じさせなかった。しかも惟光以外の者は

(にしのたいのあるじのなにびとであるかをいぶかしくおもっていた。にょおうはいまもときどきはあまぎみを)

西の対の主の何人であるかをいぶかしく思っていた。女王は今も時々は尼君を

(こいしがってなくのである。げんじのいるあいだはまぎれていたが、よるなどまれにここで)

恋しがって泣くのである。源氏のいる間は紛れていたが、夜などまれにここで

(とまることはあっても、かよういえがおおくてひがくれるとでかけるのを、かなしがって)

泊まることはあっても、通う家が多くて日が暮れると出かけるのを、悲しがって

(ないたりするおりがあるのをげんじはかわいくおもっていた。に、さんにちごしょにいて、)

泣いたりするおりがあるのを源氏はかわいく思っていた。二、三日御所にいて、

(そのままさだいじんけへいっていたりするときはわかむらさきがまったくめいりこんで)

そのまま左大臣家へ行っていたりする時は若紫がまったくめいり込んで

(しまっているので、ははおやのないこをもっているきがして、こいびとをみにいっても)

しまっているので、母親のない子を持っている気がして、恋人を見に行っても

(おちつかぬきになっているのである。そうずはこうしたほうこくをうけて、ふしぎに)

落ち着かぬ気になっているのである。僧都はこうした報告を受けて、不思議に

(おもいながらもうれしかった。あまぎみのほうじのきたやまのてらであったときもげんじはあつく)

思いながらもうれしかった。尼君の法事の北山の寺であった時も源氏は厚く

(ふせをおくった。)

布施を贈った。

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