紫式部 源氏物語 葵 20 與謝野晶子訳

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2 berry 7981 8.0 98.7% 208.1 1682 21 26 2024/12/01
3 HAKU 7853 8.1 96.4% 210.1 1713 63 26 2024/11/21
4 おもち 7606 8.0 94.2% 209.7 1698 103 26 2024/12/16
5 kkk 7036 7.1 98.5% 239.6 1711 25 26 2024/12/19

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問題文

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(わかむらさきとしんこんごはきゅうちゅうへでたり、いんへしこうしていたりするあいだもたえずげんじは)

若紫と新婚後は宮中へ出たり、院へ伺候していたりする間も絶えず源氏は

(かれんなつまのおもかげをこころにうかべていた。こいしくてならないのである。)

可憐な妻の面影を心に浮かべていた。恋しくてならないのである。

(ふしぎなへんかがじぶんのこころにあらわれてきたとおもっていた。こいびとたちのところからは)

不思議な変化が自分の心に現われてきたと思っていた。恋人たちの所からは

(ながいとだえをうらめしがったてがみもくるのであるが、むかんしんではいられないものも)

長い途絶えを恨めしがった手紙も来るのであるが、無関心ではいられないものも

(それらのなかにはあっても、しんこんのこころよいよいにみをおいているげんじにおよぼすちからは)

それらの中にはあっても、新婚の快い酔いに身を置いている源氏に及ぼす力は

(きわめてびじゃくなものであったにちがいない。えんせいてきになっているというふうを)

きわめて微弱なものであったに違いない。厭世的になっているというふうを

(げんじはひょうめんにつくっていた。いつまでこんなきもちがつづくかしらぬが、)

源氏は表面に作っていた。いつまでこんな気持ちが続くかしらぬが、

(いまとはすっかりべつじんになりえたときにあいたいとおもうと、)

今とはすっかり別人になりえた時に逢いたいと思うと、

(こんなへんじばかりをげんじはこいびとにしていたのである。)

こんな返事ばかりを源氏は恋人にしていたのである。

(こうたいごうはいもうとのろくのきみがこのごろもまだげんじのきみをおもっていることから)

皇太后は妹の六の君がこのごろもまだ源氏の君を思っていることから

(ちちのうだいじんが、 「それもいいえんのようだ、せいふじんがなくなられたのだから、)

父の右大臣が、 「それもいい縁のようだ、正夫人が亡くなられたのだから、

(あのかたもあらためてむこにすることはいえのふめいよではけっしてない」)

あの方も改めて婿にすることは家の不名誉では決してない」

(といっているのにふんがいしておいでになった。)

と言っているのに憤慨しておいでになった。

(「みやづかえだって、だんだんちいがあがっていけばわるいことはすこしもないのです」)

「宮仕えだって、だんだん地位が上がっていけば悪いことは少しもないのです」

(こういってきゅうていいりをしきりにうながしておいでになった。)

こう言って宮廷入りをしきりに促しておいでになった。

(そのうわさのみみにはいるげんじは、なみなみのれんあいいじょうのものをそのひとに)

その噂の耳にはいる源氏は、並み並みの恋愛以上のものをその人に

(もっていたのであるから、ざんねんなきもしたが、げんざいではむらさきのにょおうのほかに)

持っていたのであるから、残念な気もしたが、現在では紫の女王のほかに

(わけるこころがみいだせないげんじであって、ろくのきみがうんめいにしたがっていくのも)

分ける心が見いだせない源氏であって、六の君が運命に従って行くのも

(しかたがない。みじかいじんせいなのだから、もっともあいするひとりをつまにさだめて)

しかたがない。短い人生なのだから、最も愛する一人を妻に定めて

(まんぞくすべきである。うらみをかうようなげんいんをすこしでもつくらないでおきたいと、)

満足すべきである。恨みを買うような原因を少しでも作らないでおきたいと、

など

(こうおもっていた。ろくじょうのみやすどころとせんふじんのかっとうがげんじをこりさせたとも)

こう思っていた。六条の御息所と先夫人の葛藤が源氏を懲りさせたとも

(いえることであった。みやすどころのたちばにはどうじょうされるが、どうせいしてせいしんてきのゆうわが)

いえることであった。御息所の立場には同情されるが、同棲して精神的の融和が

(そこにみいだせるかはぎもんである。これまでのようなかんけいに)

そこに見いだせるかは疑問である。これまでのような関係に

(まんぞくしていてくれれば、こうとうなしゅみのともとしてじぶんはあいすることが)

満足していてくれれば、高等な趣味の友として自分は愛することが

(できるであろうとげんじはおもっているのである。これきりわかれてしまうこころは)

できるであろうと源氏は思っているのである。これきり別れてしまう心は

(さすがになかった。)

さすがになかった。

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