中島敦「セトナ王子」

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投稿者投稿者動植物環境専門学校大西望いいね0お気に入り登録
プレイ回数30難易度(4.4) 180秒 長文
PCⅡタイピング練習です。
今回は、「山月記」で有名な中島敦の「名人伝」を使って、タイピング練習を行います。

メリテンサと呼ばれる書記がウシマレス大王の一子セトナ皇子について書かれた手記です。セトナ王子はとても優秀で、15歳にしてあらゆる魔術と呪文に通じた賢者であるが、「ヌー」の出所について疑問に思い始めたのであった…

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問題文

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(せとなおうじ(かだい)) セトナ皇子(仮題) (なかじまあつし) 中島敦 (めむふぃすなるぷたのしんでんにつかまつうるしせいょきなまけんずあんか、) メムフィスなるプタの神殿に仕うる書記生兼図案家、 (つねにうしまれすだいおうにかわらざるちゅうせいをささげぐるしん、めりてんさ。) 常にウシマレス大王に変らざる忠誠を捧ぐる臣、メリテンサ。 (つつしんでこれをしるす。このものがたりのしんじつなることを、) 謹んでこれを記す。この物語の真実なることを、 (あかししたもうかみがみのぎょめいは、たかかみはとる、つるかみとと、) あかしし給う神々の御名は、鷹神ハトル、鶴神トト、 (おおかみかみあぬびす、ゆたかなるかばかみあぴとえりす。) 狼神アヌビス、豊かなる河馬神アピトエリス。 (ゆりのくがみえじぷとのおうにして、はちのこくがえじぷとのおう、) 百合の国上エジプトの王にして、蜂の国下エジプトの王、 (あもんらーのけしん、かがやけるてーべのあるじ、うしまれすだいおうの) アモン・ラーの化身、輝けるテーベの主、ウシマレス大王の (いっしせとなおうじは、つとにそうけいのほまれがたかい。) 一子セトナ皇子は、つとに聡慧の誉れが高い。
(はちさいのとき、かれはかみがみのけいふをろんじてきゅうていのはかせどもをおどろかせた。) 八歳の時、彼は神々の系譜を論じて宮廷の博士共を驚かせた。 (じゅうごさいいごは、もはやあらゆるまじゅつとじゅもんとにつうじたはくがくの) 十五歳以後は、最早あらゆる魔術と呪文とに通じた博学の (だいけんじゃとしてあめのしたにならぶものもない。) 大賢者として天の下に並ぶものもない。 (いちにち、こしょをしょうりょうちゅう、ふと、あるうたがいにとらわれた。) 一日、古書を渉猟中、ふと、ある疑いにとらわれた。 (いままで、ぜんぜんかんがえたこともなかったうたがいだけに、はじめは、じゃしんせっと) 今迄、全然考えたこともなかった疑だけに、初めは、邪神セット (のゆうわくではないかとおもって、それをしりぞけようとした。) の誘惑ではないかと思って、それをしりぞけようとした。 (しかし、そのうたがいはしつようにかれのこころからはなれなかった。) しかし、その疑いは執拗に彼の心から離れなかった。 (にいるのかわのみなもとから、そのみずのながれそそぐたいかいにいたるまでのあいだに、) ニイルの川の源から、その水の流れ注ぐ大海に至るまでの間に、 (せとなおうじのしらないことはなにひとつないはずである。) セトナ王子のしらないことは何一つ無いはずである。 (ちじょうのことにかぎらず、しごのせかいについても、あれほど、) 地上の事に限らず、死後の世界についても、彼程、
など
(つうぎょうしているものはない。めいふのこうぞうから、おしりすかみの) 通暁している者はない。冥府の構造から、オシリス神の (しんぱんのじゅんじょから、おしりすみやのななつのひろま、) 審判の順序から、オシリス宮の七つの広間、 (にじゅういちのとうのあいだやそのしゅえいしゃのなまえまでことごとくそらんじている。) 二十一の塔の間やその守衛者の名前迄ことごとくそらんじている。 (だからかれのうたがいは、そんなことについてではない。) だから彼の疑は、そんな事に就いてではない。 (こしょをひろげているなかに、ひょいとあるふあんがかれのこころをかすめた。) 古書を拡げている中に、ひょいと或る不安が彼の心を掠めた。 (はじめは、そのしょうたいがわからなかった。なんでもかれのいままでたくわえた) はじめは、その正体が分らなかった。何でも彼の今迄蓄えた (ぜんちしきのこんていをゆるがせるようなふあんである。) 全智識の根柢をゆるがせるような不安である。 (なにをかんがえていたときに、そんなきかいなかげがよぎったのか?) 何を考えていた時に、そんな奇怪な陰がよぎったのか? (かれはたしか、さいしょのかみらーのいまだうまれないいぜんのことをよみ、) 彼はたしか、最初の神ラーの未だ生れない以前のことを読み、 (かつかんがえていた。らーはどこからうまれたか?) 且つ考えていた。ラーは何処から生れたか? (らーはたいしょのこんとんぬーからうまれた。) ラーは太初の混沌ヌーから生れた。 (ぬーとは、ひかりもかげもない、いちめんのどろどろである。) ヌーとは、光も陰もない、一面のどろどろである。 (それではぬーはなにからうまれたか。なにからもうまれはせぬ。) それではヌーは何から生れたか。何からも生れはせぬ。 (はじめからあったのである。) 初めから在ったのである。 (ここまでは、こどものときからよくしっている。) 此処迄は、子供の時からよく知っている。 (しかし、いま、こしょをひろげているなかに、たえなかんがえがうかんだ。) しかし、今、古書をひろげている中に、妙な考えが浮かんだ。 (はじめにぬーがなにゆえあったか?) 初めにヌーが何故あったか? (なくてもいっこうさしつかえなかったのではないかと。) 無くても一向差支えなかったのではないかと。 (ふあんのもとになったのは、これだった。) 不安のもとになったのは、これだった。 (このかんがえがうかんだとき、きかいなふあんのかげが、) この考えが浮んだ時、奇怪な不安の翳が、 (こころをかすめたのである。) 心を掠めたのである。
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