銀河鉄道の夜 25

宮沢賢治 作
「サギはおいしんですか。」
「こっちはすぐ食べられます。どうです、少しおあがりなさい。」
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問題文
(まっしろな、あのさっきのきたのじゅうじかのようにひかるさぎのからだが、)
まっ白な、あのさっきの北の十字架のように光るサギのからだが、
(じゅうばかり、すこしひらべったくなって、くろいあしをちぢめて、)
十ばかり、少しひらべったくなって、黒い脚をちぢめて、
(うきぼりのようにならんでいたのです。)
浮彫のようにならんでいたのです。
(「めをつぶってるね。」)
「目をつぶってるね。」
(かむぱねるらは、ゆびでそっと、)
カムパネルラは、指でそっと、
(さぎのみかづきがたのしろいつむっためにさわりました。)
サギの三日月形の白いつむった目にさわりました。
(あたまのうえのやりのようなしろいけもちゃんとついていました。)
頭の上の槍のような白い毛もちゃんとついていました。
(「ね、そうでしょう。」)
「ね、そうでしょう。」
(とりとりはふろしきをかさねて、またくるくるとつつんでひもでくくりました。)
鳥とりは風呂敷をかさねて、またくるくると包んでひもでくくりました。
(だれがいったいここらでさぎなんぞたべるだろうと)
誰がいったいここらでサギなんぞ食べるだろうと
(じょばんにはおもいながらききました。)
ジョバンニは思いながらききました。
(「さぎはおいしんですか。」)
「サギはおいしんですか。」
(「ええ、まいにちちゅうもんがあります。しかしがんのほうが、もっとうれます。)
「ええ、毎日注文があります。しかしガンの方が、もっと売れます。
(がんのほうがすっとがらがいいし、だいいちてかずがありませんからな。そら。」)
ガンの方がすっと柄がいいし、第一手数がありませんからな。そら。」
(とりとりは、またべつのほうのつつみをときました。)
鳥とりは、また別の方の包を解きました。
(するときとあおじろとまだらになって、)
すると黄と青じろとまだらになって、
(なにかのあかりのようにひかるがんが、)
なにかのあかりのようにひかるガンが、
(ちょうどさっきのさぎのように、くちばしをそろえて、)
ちょうどさっきのサギのように、くちばしをそろえて、
(すこしひらべったくなって、ならんでいました。)
少しひらべったくなって、ならんでいました。
(「こっちはすぐたべられます。どうです、すこしおあがりなさい。」)
「こっちはすぐ食べられます。どうです、少しおあがりなさい。」
(とりとりは、いろんながんのあしを、かるくひっぱりました。)
鳥とりは、いろんなガンの足を、軽くひっぱりました。
(するとそれは、ちょこれーとででもできているように、)
するとそれは、チョコレートででもできているように、
(すっときれいにはなれました。)
すっときれいにはなれました。
(「どうです。すこしたべてごらんなさい。」)
「どうです。すこしたべてごらんなさい。」
(とりとりは、それをふたつにちぎってわたしました。)
鳥とりは、それを二つにちぎってわたしました。
(じょばんには、ちょっとたべてみて、)
ジョバンニは、ちょっと食べてみて、
((なんだ、やっぱりこいつはおかしだ。)
(なんだ、やっぱりこいつはお菓子だ。
(ちょこれーとよりも、もっとおいしいけれども、)
チョコレートよりも、もっとおいしいけれども、
(こんながんがとんでいるもんか。)
こんなガンが飛んでいるもんか。
(このおとこは、どこかそこらののはらのかしやだ。)
この男は、どこかそこらの野原の菓子屋だ。
(けれどもぼくは、このひとをばかにしながら、)
けれどもぼくは、このひとをばかにしながら、
(このひとのおかしをたべているのは、たいへんきのどくだ))
この人のお菓子をたべているのは、たいへん気の毒だ)
(とおもいながら、やっぱりぽくぽくそれをたべていました。)
とおもいながら、やっぱりぽくぽくそれをたべていました。
(「もすこしおあがりなさい。」)
「も少しおあがりなさい。」
(とりとりがまたつつみをだしました。)
鳥とりがまた包を出しました。