森鴎外 大塩平八郎その4

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問題文
(ひっしゃはじぶんとせがれえいたろういかのけつぞくとのしゃめんをねがいたい。)
筆者は自分と倅英太郎以下の血族との赦免を願いたい。
(もっともじぶんは、ぶぎょうしょにおいてよとうをめしとられるときには、)
もっとも自分は、奉行所において与党を召し捕られる時には、
(わたしもやはりめしとってもらいたい。あるいはそのあいだにじさつするかもしれない。)
わたしも矢張召し捕って貰いたい。或いはその間に自殺するかも知れない。
(とめおき、あずけなどということにされては、)
留め置き、預けなどということにされては、
(びょうたいではしのぎかねるから、それはやめてもらいたい。)
病体では凌ぎかねるから、それは罷めて貰いたい。
(せがれえいたろうはしゅりょうのたてているじゅくで、ひとじちのようになっていてかえってこない。)
倅英太郎は首領の立てている塾で、人質のようになっていて帰って来ない。
(とにかくじぶんといちぞくとをしゃめんしてもらいたい。)
兎に角自分と一族とを赦免して貰いたい。
(それからにしぐみ・よりきみならいにうちやまひこじろうというものがある。)
それから西組・与力見習に内山彦次郎と云うものがある。
(うちやまがいうにこれはしゅりょうににくまれているから、)
内山が言うにこれは首領に憎まれているから、
(ほごをくわえてもらいたいといっているのである。)
保護を加えて貰いたいと云っているのである。
(よんでしまって、ほりはまえからいだいていたゆうりょはべつとして、)
読んでしまって、堀は前から抱いていた憂慮は別として、
(このそじょうのひっしゃにたいするいっしゅのぶべつのねんをおこさずにはいられなかった。)
この訴状の筆者に対する一種の侮蔑の念を起さずにはいられなかった。
(けいしきしゅぎのやくにんしょうがいになれてはいても、)
形式主義の役人生涯に慣れてはいても、
(せいりつしているちつじょをいじするために、)
成立している秩序を維持するために、
(しょうさんすべきものにしてあるかえりちゅうを、)
賞讃すべきものにしてある返り忠を、
(しんのちゅうせいだとみることは、ほりのうまれついたにんげんのかんじょうがゆるさない。)
真の忠誠だと見ることは、堀の生れ附いた人間の感情が許さない。
(そのうえじぶんのないしんをうらぎることがむずかしいひとほど、)
その上自分の内心を裏切ることが難しい人程、
(かえってたにんのいちゅうのしんそこをばくろすることがすきなのである。)
却って他人の意中の心底を暴露することが好きなのである。
(くろうえもんはいっしょにめしとられたいという。)
九郎右衛門は一緒に召し捕られたいと云う。
(それはせきにんをとるいさぎよいこころではなくて、)
それは責任を取る潔い心ではなくて、
(よとうをおそれ、せけんていをはばかるおくびょうである。)
与党を怖れ、世間体を憚かる臆病である。
(またじさつするかもしれないという。それはありえない。)
又自殺するかも知れないと云う。それはありえない。
(じさつすることができるなら、まずじさつをいそぐ。)
自殺することが出来るなら、まず自殺を急ぐ。
(あとにそじょうをのこそうとはしない。また、ろうにはいれないでくれという。)
後に訴状を残そうとはしない。又、牢に入れないでくれと云う。
(おおさかのろうやからいきてかえれるものがすくないのはこうぜんのひみつだから、)
大坂の牢屋から生きて帰れるものが少ないのは公然の秘密だから、
(びょうたいでなくても、ろうにはいらずにすめばはいりたくないとおもうはずである。)
病体でなくても、牢に入らずに済めば入りたくないと思う筈である。
(おうちゃくものだなとはおもったが、やくめになれたほりは、)
横着者だなとは思ったが、役目に馴れた堀は、
(こうぎのおやくにたつかえりちゅうでもものをひなんしようとはしない。)
公儀のお役に立つ返り忠でも者を非難しようとはしない。
(かろうにいいつけて、しょうねんふたりをめどおりへださせた。)
家老に言い付けて、少年二人を目通りへ出させた。