星の王子さま 20 (22/32)

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バラの庭
サン=テグジュペリ作 内藤濯訳 

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問題文

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(ところで、おうじさまが、すなはらと、いわとゆきをふみわけて、)

ところで、王子さまが、砂原と、岩と雪をふみわけて、

(ながいことあるいていますと、やっと、いっぽんのみちをみつけました。)

長いこと歩いていますと、やっと、一本の道を見つけました。

(みちというものは、みな、ひとにいるところへ、つうじているものなのです。)

道というものは、みな、人にいるところへ、通じているものなのです。

(「こんにちは」 と、おうじさまがいいました。)

「こんにちは」 と、王子さまがいいました。

(そこは、ばらのはなのさきそろっているにわでした。)

そこは、バラの花の咲きそろっている庭でした。

(「こんにちは」 と、ばらのはなたちがいいました。)

「こんにちは」 と、バラの花たちがいいました。

(おうじさまは、ばらのはなをながめました。)

王子さまは、バラの花をながめました。

(はながみな、とおくにのこしてきたはなににているのです。)

花がみな、遠くに残してきた花に似ているのです。

(「あんたたち、だれ?」 と、おうじさまは、びっくりしてききました。)

「あんたたち、だれ?」 と、王子さまは、びっくりして聞きました。

(「あたくしたち、ばらのはなですわ」 と、ばらのはなたちがいいました。)

「あたくしたち、バラの花ですわ」 と、バラの花たちがいいました。

(「ああ、そうか・・・」)

「ああ、そうか・・・」

(そういったおうじさまは、たいへんさびしいきもちになりました。)

そういった王子さまは、たいへんさびしい気持ちになりました。

(かんがえると、とおくにのこしてきたはなは、じぶんのようなはなは、)

考えると、遠くに残してきた花は、自分のような花は、

(せかいのどこにもない、といったものでした。)

世界のどこにもない、といったものでした。

(それだのに、どうでしょう。)

それだのに、どうでしょう。

(みると、たったひとつのにわに、そっくりそのままのはなが、)

見ると、たった一つの庭に、そっくりそのままの花が、

(ごせんほどもあるのです。)

五千ほどもあるのです。

(おうじさまはかんがえました。)

王子さまは考えました。

(「もし、あのはなが、このありさまをみたら、さぞこまるだろう・・・)

「もし、あの花が、このありさまを見たら、さぞ困るだろう・・・

(やたらせきをして、ひとにわらわれまいと、しんだふりをするだろう。)

やたら咳をして、人に笑われまいと、死んだふりをするだろう。

など

(だって、そうしなかったら、ぼくをひどいめにあわそうとおもって、)

だって、そうしなかったら、ぼくをひどい目にあわそうと思って、

(ほんとうにしんでしまうだろう・・・」)

ほんとうに死んでしまうだろう・・・」

(それから、おうじさまは、また、こうもかんがえました。)

それから、王子さまは、また、こうも考えました。

(「ぼくは、このよに、たったひとつという、)

「ぼくは、この世に、たった一つという、

(めずらしいはなをもっているつもりだった。)

めずらしい花を持っているつもりだった。

(ところが、じつは、あたりまえのばらのはなを、ひとつもっているきりだった。)

ところが、じつは、あたりまえのバラの花を、一つ持っているきりだった。

(あれと、ひざのたかさしかないみっつのかざんーーー)

あれと、ひざの高さしかない三つの火山ーーー

(かざんもひとつは、どうかすると、いつまでもひをふかないかもしれないーーー)

火山も一つは、どうかすると、いつまでも火を吹かないかもしれないーーー

(ぼくはこれじゃ、えらいおうさまなんかになれようがない・・・」)

ぼくはこれじゃ、えらい王さまなんかになれようがない・・・」

(おうじさまは、くさのうえにつっぷしてなきました。)

王子さまは、草の上に突っ伏して泣きました。

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