ひらめの学校 前半

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タグ小説 文豪
林芙美子作『ひらめの学校』です。
ひらめの子どもたちが学ぶ「ひらめの学校」。ある日、「見たこともない大きい怪物」を見に鯖村を訪れます。

・長いため前半後半に分けました。こちらは前半になります。
・基本的に漢数字はローマ字入力です。

・参照:青空文庫『ひらめの学校』

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問題文

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(ひらめのがっこうのおんなのこうちょうせんせいは、このごろおとしをとってめがねをかけました。)

ひらめの学校の女の校長先生は、このごろお年をとって眼鏡をかけました。

(とてもおおきいめがねなので、せいとはびっくりしていました。)

とても大きい眼鏡なので、生徒はびっくりしていました。

(「まあ、なんておおきいめがねでしょうねえ。)

「まア、何て大きい眼鏡でしょうねえ。

(あれではりくのうえまでみえるでしょうよ。)

あれでは陸の上まで見えるでしょうよ。

(このあいだ、こうちょうかいぎでりゅうぐうへいらっしゃったとき、りゅうぐうのまちで、)

此の間、校長会議で竜宮へいらっしゃった時、竜宮の街で、

(あのめがねをもらっていらっしゃったんですって。」)

あの眼鏡を貰っていらっしゃったンですって。」

(せいとたちは、うみのそこのすなじにはらばってそんなはなしをしていました。)

生徒たちは、海の底の砂地に腹這ってそんな話をしていました。

(とてもいいおてんきで、うみのそこにもがらすのようなまっさおいひかりがすけて、)

とてもいいお天気で、海の底にもガラスのようなまっさおい光りが透けて、

(すいほうがぷつぷつとまいあがっているといったきもちのいいおてんきです。)

水泡がぷつぷつと舞いあがっているといった気持ちのいいお天気です。

(「あっ、たいそうのせんせいよ。」)

「あっ、体操の先生よ。」

(このあいだ、はいきんぐにいらっして、ちょっと、しっぽをおけがなすったたいそうのおとこの)

この間、ハイキングにいらっして、ちょっと、尻尾をお怪我なすった体操の男の

(せんせいは、おおきいしっぽにほうたいをしていらっしゃいました。)

先生は、大きい尻尾にほうたいをしていらっしゃいました。

(「せんせい、おはようございます。」)

「先生、おはようございます。」

(「せんせい、おはよう。」)

「先生、おはよう。」

(たいそうのせんせいはちょこんとこうはくのうんどうぼうをかぶってせいとたちのところへ)

体操の先生はちょこんと紅白の運動帽をかぶって生徒たちのところへ

(いらっしゃいました。)

いらっしゃいました。

(「きょうは、みなさんをつれて、さばむらまでけんがくにいきます。)

「今日は、皆さんを連れて、鯖村まで見学に行きます。

(みなさんが、いままでにみたこともないおおきいかいぶつがてんかいから)

みなさんが、いままでに見たこともない大きい怪物が天界から

(ふってきたそうです。とびうおさんのようなかっこうをして、)

降ってきたそうです。飛魚さんのようなかっこうをして、

(なんだかものすごくおおきくてうごくこともできないものだそうです。」)

何だかものすごく大きくて動くことも出来ないものだそうです。」

など

(ちいさいひらめのせいとは、わあっとこえをあげてよろこびました。)

小さいひらめの生徒は、わあっと声をあげて喜びました。

(きのはやいせいとはもううきたって、ごぼごぼとまいあがってゆくものもありました。)

気の早い生徒はもう浮きたって、ごぼごぼと舞い上ってゆくものもありました。

(たいそうのせんせいは、きゅうに、ぴりぴりとふえをならしました。)

体操の先生は、急に、ピリピリと笛を鳴らしました。

(「あわてものはだれですか、みんなにれつにならんで、きちんとれつをくずさないように)

「あわてものは誰ですか、みんな二列に並んで、きちんと列をくずさないように

(およぐのですよ。)

泳ぐのですよ。

(このあいだみたいに、おこぜにいじめられるとこまるでしょう。)

この間みたいに、おこぜにいじめられると困るでしょう。

(いいですか、せんせいのあとからしずかにおよぐのですよ。)

いいですか、先生の後からしずかに泳ぐのですよ。

(さばむらでは、そんちょうさんがみんなにごちそうしてくださるそうです。)

鯖村では、村長さんがみんなに御馳走してくださるそうです。

(こうちょうせんせいもいらっしゃるのですよ。)

校長先生もいらっしゃるのですよ。

(さばむらまで、やくにきろです。ただしくれつをくんでおよぎましょう。」)

鯖村まで、約二キロです。正しく列を組んで泳ぎましょう。」

(ひらめのがっこうのせいとは、さあっとにれつにならびました。)

ひらめの学校の生徒は、さあっと二列に並びました。

(こうちょうせんせいが、おおきいめがねをかけてでていらっしゃいました。)

校長先生が、大きい眼鏡をかけて出ていらっしゃいました。

(せいとはいっせいに、ひらべったいしっぽをひらひらとうちふってこうちょうせんせいを)

生徒はいっせいに、平べったい尻尾をひらひらとうち振って校長先生を

(おむかえしました。こうちょうせんせいのめがねはとてもおもいので、めがねのつるに、きでできた)

お迎えしました。校長先生の眼鏡はとても重いので、眼鏡のつるに、木で出来た

(ぶいがついていました。)

ブイがついていました。

(ぶいがりょうがわについているので、おおきいめがねはゆらゆらと、こうちょうせんせいの)

ブイが両側についているので、大きい眼鏡はゆらゆらと、校長先生の

(ひくいおはなのまわりに、ちょうどつごうよくつりあっています。)

ひくいおはなのまわりに、丁度都合よくつりあっています。

(うみのなかでは、たべものもなにももってあるくことがないのです。)

海のなかでは、食べ物も何も持って歩くことがないのです。

(なんでもおかねというものがいらないので、どこでもじゆうにたべることが)

なんでもお金と云うものがいらないので、どこでも自由に食べることが

(できました。)

出来ました。

(ひらめのせいとのぎょうれつはこうちょうせんせいのあとから、たのしそうにおよいでいきました。)

ひらめの生徒の行列は校長先生の後から、愉しそうに泳いでいきました。

(こんぶのはやしをぬけたり、さんごのもりをくぐっていきました。)

昆布の林を抜けたり、サンゴの森をくぐって行きました。

(ときどき、ぶりのかぞくがおよいできます。)

時々、ぶりの家族が泳いできます。

(すると、たいそうのせんせいが、ぴっとふえをふきます。)

すると、体操の先生が、ピッと笛を吹きます。

(せいとはこうちょうせんせいをまんなかにして、いわのうえにぺたっとはりついて、)

生徒は校長先生をまんなかにして、岩の上にぺたっと張りついて、

(ぶりのかぞくをやりすごしてやります。)

ぶりの家族をやりすごしてやります。

(やっとさばむらへつくと、あおいゆにほーむのさばのこどもがたくさんいわのもんまで)

やっと鯖村へ着くと、青いユニホームの鯖の子供が沢山岩の門まで

(むかえにきました。)

迎えに来ました。

(いわのもんをくぐると、おどろいたことに、ぎんいろのおおきいかいぶつが、)

岩の門をくぐると、驚いた事に、銀色の大きい怪物が、

(はねにしんくなまるいまーくをつけてどっかりとすなじにころんでいました。)

羽根に真紅なまるいマークをつけてどっかりと砂地にころんでいました。

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