銀河鉄道の夜 23
八、鳥をとる人 (1/6)
宮沢賢治 作
宮沢賢治 作
「ここへかけてもようございますか。」
がさがさした、けれども親切そうな、大人の声が、ふたりのうしろで聞こえました。
それは、茶いろの少しぼろぼろの外套を着て、白い巾でつつんだ荷物を、二つに分けて肩にかけた、赤ひげのせなかのかがんだ人でした。
がさがさした、けれども親切そうな、大人の声が、ふたりのうしろで聞こえました。
それは、茶いろの少しぼろぼろの外套を着て、白い巾でつつんだ荷物を、二つに分けて肩にかけた、赤ひげのせなかのかがんだ人でした。
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問題文
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(はち、とりをとるひと)
八、鳥をとる人
(「ここへかけてもようございますか。」)
「ここへかけてもようございますか。」
(がさがさした、けれどもしんせつそうな、おとなのこえが、)
がさがさした、けれども親切そうな、大人の声が、
(ふたりのうしろできこえました。)
ふたりのうしろで聞こえました。
(それは、ちゃいろのすこしぼろぼろのがいとうをきて、)
それは、茶いろの少しぼろぼろの外套を着て、
(しろいきれでつつんだにもつを、ふたつにわけてかたにかけた、)
白い巾(きれ)でつつんだ荷物を、二つに分けて肩にかけた、
(あかひげのせなかのかがんだひとでした。)
赤ひげのせなかのかがんだ人でした。
(「ええ、いいんです。」)
「ええ、いいんです。」
(じょばんには、すこしかたをすぼめてあいさつしました。)
ジョバンニは、少し肩をすぼめて挨拶しました。
(そのひとは、ひげのなかでかすかにわらいながら、)
その人は、ひげの中でかすかにわらいながら、
(にもつをゆっくりあみだなにのせました。)
荷物をゆっくり網棚にのせました。
(じょばんには、なにかたいへんさびしいようなかなしいようなきがして、)
ジョバンニは、なにかたいへんさびしいようなかなしいような気がして、
(だまってしょうめんのとけいをみていましたら、)
だまって正面の時計をみていましたら、
(ずうっとまえのほうで、がらすのふえのようなものがなりました。)
ずうっと前の方で、ガラスの笛のようなものが鳴りました。
(きしゃはもう、しずかにうごいていたのです。)
汽車はもう、しずかにうごいていたのです。
(かむぱねるらは、しゃしつのてんじょうを、あちこちみていました。)
カムパネルラは、車室の天井を、あちこち見ていました。
(そのひとつのあかりにくろいかぶとむしがとまって)
その一つのあかりに黒いかぶと虫がとまって
(そのかげがおおきくてんじょうにうつっていたのです。)
その影が大きく天井にうつっていたのです。
(あかひげのひとは、なにかなつかしそうにわらいながら、)
赤ひげの人は、なにかなつかしそうにわらいながら、
(じょばんにやかむぱねるらのようすをみていました。)
ジョバンニやカムパネルラのようすを見ていました。
など
(きしゃはもうだんだんはやくなって、)
汽車はもうだんだん早くなって、
(すすきとかわと、かわるがわるまどのそとからひかりました。)
すすきと川と、かわるがわる窓の外から光りました。
(あかひげのひとが、すこしおずおずしながら、ふたりにききました。)
赤ひげの人が、少しおずおずしながら、ふたりにききました。
(「あなたがたは、どちらへいらっしゃるんですか。」)
「あなた方は、どちらへいらっしゃるんですか。」
(「どこまでもいくんです。」)
「どこまでも行くんです。」
(じょばんには、すこしきまりわるそうにこたえました。)
ジョバンニは、少しきまり悪そうに答えました。
(「それはいいね。このきしゃは、じっさい、どこまででもいきますぜ。」)
「それはいいね。この汽車は、じっさい、どこまででも行きますぜ。」
(「あなたはどこへいくんです。」)
「あなたはどこへ行くんです。」
(かむぱねるらが、いきなり、けんかのようにたずねましたので、)
カムパネルラが、いきなり、けんかのようにたずねましたので、
(じょばんには、おもわずわらいました。)
ジョバンニは、思わずわらいました。
(すると、むこうのせきにいた、とがったぼうしをかぶり、)
すると、むこうの席にいた、とがった帽子をかぶり、
(おおきなかぎをこしにさげたひとも、ちらっとこっちをみてわらいましたので、)
大きな鍵を腰に下げた人も、ちらっとこっちを見てわらいましたので、
(かむぱねるらも、ついかおをあかくしてわらいだしてしまいました。)
カムパネルラも、つい顔を赤くして笑いだしてしまいました。
(ところがそのひとはべつにおこったでもなく、)
ところがその人は別に怒ったでもなく、
(ほおをぴくぴくしながらへんじしました。)
ほおをぴくぴくしながら返事しました。