銀河鉄道の夜 37
九、ジョバンニの切符 9/36
(沈没船の乗客5/6)
(沈没船の乗客5/6)
そのうち船はもうずんずん沈みますから、私はもうすっかり覚悟してこの人たちふたりを抱いて、浮かべるだけは浮かぼうと、かたまって船の沈むのを待っていました。
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問題文
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(こどもらばかりぼーとのなかへはなしてやって、)
子どもらばかりボートの中へ離してやって、
(おかあさんがきょうきのようにきすをおくり、)
お母さんが狂気のようにキスを送り、
(おとうさんがかなしいのをじっとこらえて、まっすぐにたっているなど、)
お父さんが悲しいのをじっとこらえて、まっすぐに立っているなど、
(とてももうちょうもちぎれるようでした。)
とてももう腸もちぎれるようでした。
(そのうちふねはもうずんずんしずみますから、)
そのうち船はもうずんずん沈みますから、
(わたしはもうすっかりかくごしてこのひとたちふたりをだいて、)
私はもうすっかり覚悟してこの人たちふたりを抱いて、
(うかべるだけはうかぼうと)
浮かべるだけは浮かぼうと
(かたまってふねのしずむのをまっていました。)
かたまって船の沈むのを待っていました。
(だれがなげたからいふぶいがひとつとんできましたけれども、)
誰が投げたかライフブイが一つ飛んできましたけれども、
(すべってずうっとむこうへいってしまいました。)
すべってずうっと向こうへ行ってしまいました。
(わたしはいっしょうけんめいでかんぱんのこうしになったところをはなして、)
私は一生けんめいで甲板の格子になったところを放して、
(さんにんそれにしっかり、とりつきました。)
三人それにしっかり、とりつきました。
(どこからともなくまるまるばんのこえがあがりました。)
どこからともなく〇〇番の声があがりました。
(たちまちみんなはいろいろなこくごで)
たちまちみんなはいろいろな国語で
(いっぺんにそれをうたいました。)
一ぺんにそれをうたいました。
(そのときにわかにおおきなおとがして、わたしたちはみずにおち、)
そのときにわかに大きな音がして、私たちは水に落ち、
(もううずにはいったとおもいながら、しっかりこのひとたちをだいて、)
もう渦に入ったと思いながら、しっかりこの人たちをだいて、
(それからぼうっとしたとおもったら、もうここへきていたのです。)
それからぼうっとしたと思ったら、もうここへきていたのです。
(このかたたちのおかあさんはいっさくねんなくなられました。)
この方たちのお母さんは一昨年なくなられました。
(ええぼーとはきっとたすかったにちがいありません。)
ええボートはきっと助かったにちがいありません。
など
(なんにせ、よほどじゅくれんなすいふたちがこいで)
何にせ、よほど熟練な水夫たちがこいで
(すばやくふねからはなれていましたから。」)
すばやく船からはなれていましたから。」