銀河鉄道の夜 43

(わたりどり 1/3)
ジョバンニはその小さく小さくなって、いまはもう一つの緑いろの貝ぼたんのように見える森の上に、さっさっと青じろくときどき光って、そのクジャクがはねをひろげたりとじたりする光の反射を見ました。
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問題文
(そしてあおいかんらんのもりがみえないあまのがわのむこうに)
そして青いかんらんの森が見えない天の川の向こうに
(さめざめとひかりながらだんだんうしろのほうへいってしまい、)
さめざめと光りながらだんだんうしろの方へ行ってしまい、
(そこからながれてくるあやしいがっきのおとも)
そこから流れてくるあやしい楽器の音も
(もうきしゃのひびきやかぜのおとにすりへされて、ずうっとかすかになりました。)
もう汽車のひびきや風の音にすりへされて、ずうっとかすかになりました。
(「あ、くじゃくがいるよ。」)
「あ、クジャクがいるよ。」
(「ええたくさんいたわ。」)
「ええたくさんいたわ。」
(おんなのこがこたえました。)
女の子がこたえました。
(じょばんにはそのちいさくちいさくなって)
ジョバンニはその小さく小さくなって
(いまはもうひとつのみどりいろのかいぼたんのようにみえるもりのうえに、)
いまはもう一つの緑いろの貝ぼたんのように見える森の上に、
(さっさっとあおじろくときどきひかって)
さっさっと青じろくときどき光って
(そのくじゃくがはねをひろげたりとじたりするひかりのはんしゃをみました。)
そのクジャクがはねをひろげたりとじたりする光の反射を見ました。
(「そうだ、くじゃくのこえだってさっききこえた。」)
「そうだ、クジャクの声だってさっき聞こえた。」
(かむぱねるらがかおるこにいいました。)
カムパネルラがかおる子にいいました。
(「ええ、さんじゅっぴきぐらいはたしかにいたわ。)
「ええ、三十ぴきぐらいはたしかにいたわ。
(はーぷのようにきこえたのはみんなくじゃくよ。」)
ハープのように聞こえたのはみんなクジャクよ。」
(おんなのこがこたえました。)
女の子が答えました。
(じょばんにはにわかになんともいえずかなしいきがしておもわず、)
ジョバンニはにわかになんともいえず悲しい気がして思わず、
(「かむぱねるら、ここからはねおりてあそんでいこうよ。」)
「カムパネルラ、ここからはねおりて遊んで行こうよ。」
(とこわいかおをしていおうとしたくらいでした。)
とこわい顔をして言おうとしたくらいでした。
(かわはふたつにわかれました。)
川は二つにわかれました。
(そのまっくらなしまのまんなかに)
そのまっくらな島のまん中に
(たかいたかいやぐらがひとつくまれて、)
高い高いやぐらが一つ組まれて、
(そのうえにひとりのゆるいふくをきて)
その上にひとりのゆるい服を着て
(あかいぼうしをかぶったおとこがたっていました。)
赤い帽子をかぶった男が立っていました。
(そしてりょうてにあかとあおのはたをふっていましたが)
そして両手に赤と青の旗をふっていましたが
(にわかにあかはたをおろしてうしろにかくすようにし、)
にわかに赤旗をおろしてうしろにかくすようにし、
(あおいはたをたかくたかくあげて)
青い旗を高く高くあげて
(まるでおーけすとらのしきしゃのようにはげしくふりました。)
まるでオーケストラの指揮者のようにはげしく振りました。
(するとくうちゅうにざあっとあめのようなおとがして、)
すると空中にざあっと雨のような音がして、
(なにかまっくらなものが、いくかたまりもいくかたまりも)
何かまっくらなものが、いくかたまりもいくかたまりも
(てっぽうだまのようにかわのむこうのほうへとんでいくのでした。)
鉄砲玉のように川の向こうの方へ飛んで行くのでした。
(じょばんにはおもわずまどからからだをはんぶんだして)
ジョバンニは思わず窓からからだを半分出して
(そっちをみあげました。)
そっちを見あげました。
(うつくしいうつくしいききょういろのがらんとしたそらのしたを)
美しい美しいききょういろのがらんとした空の下を
(じつになんまんというちいさなとりどもが)
実に何万という小さな鳥どもが
(いくくみもいくくみもめいめいせわしくないてとおっていくのでした。)
いく組もいく組もめいめいせわしく鳴いて通って行くのでした。