半七捕物帳 鷹のゆくえ8

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岡本綺堂 半七捕物帳シリーズ 第15話
順位 名前 スコア 称号 打鍵/秒 正誤率 時間(秒) 打鍵数 ミス 問題 日付
1 すもさん 6082 A++ 6.2 97.4% 547.3 3419 90 56 2024/04/19
2 やまちやまちゃん 4814 B 4.9 98.2% 672.3 3295 58 56 2024/04/12

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問題文

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(はんしちにかまをかけられて、あらものやのにょうぼうはとうとうおしゃべりを)

四 半七にかまをかけられて、荒物屋の女房はとうとうおしゃべりを

(してしまった。そのはなしによると、おすぎはじゅうしちのはるからよしみのやしきへ)

してしまった。その話によると、お杉は十七の春から吉見の屋敷へ

(ほうこうにでているうちに、びょうしんのつまをもっているしゅじんといっしゅのかんけいがむすばれた。)

奉公に出ているうちに、病身の妻を持っている主人と一種の関係が結ばれた。

(そんなことはしらないおすぎのりょうしんは、もうとしごろになったむすめを)

そんなことは知らないお杉の両親は、もう年頃になった娘を

(いつまでほうこうさせておくでもない。いえへかえってそうとうのむこをとらせなければ)

いつまで奉公させて置くでもない。家へ帰って相当の婿を取らせなければ

(ならないというので、いやがるむすめをむりにつれてかえったが、そういう)

ならないというので、忌(いや)がる娘を無理に連れて帰ったが、そういう

(ひみつがあるので、おすぎはよういにむこをとろうといわないばかりか、みせのてつだいも)

秘密があるので、お杉は容易に婿を取ろうと云わないばかりか、店の手伝いも

(ろくろくにしないので、このごろはおやこげんかがたえないとのことであった。)

碌々にしないので、この頃は親子喧嘩が絶えないとのことであった。

(「それでもさっきのあのかわっぷちでだいこんをあらっていたぜ」と、はんしちはいった。)

「それでもさっきのあの川っ縁で大根を洗っていたぜ」と、半七は云った。

(「まあ、それくらいのことはするでしょうけれど・・・・・・」と、にょうぼうはほほえんだ。)

「まあ、それ位のことはするでしょうけれど……」と、女房はほほえんだ。

(「ここらにいればそのくらいのことはあたりまえですもの。それでも)

「ここらにいれば其のくらいのことは当りまえですもの。それでも

(なんでもいぜんのだんなさまというのがときどきたずねていらっしゃるんですよ」)

何でも以前の旦那様というのが時々たずねていらっしゃるんですよ」

(「あすこのいえへくるのかえ」)

「あすこの家へ来るのかえ」

(「いいえ、おやたちはかたいひとですから、そんなことはできません。)

「いいえ、親たちは堅い人ですから、そんなことは出来ません。

(このさきのたつさんのいえで、ほほほほほ」)

この先の辰さんの家で、ほほほほほ」

(いくらかほうかいりんきもまじってにょうぼうはこんなひみつまでべらべら)

いくらか法界悋気(ほうかいりんき)もまじって女房はこんな秘密までべらべら

(しゃべった。たつぞうというのはこりょうりやのていしゅであるが、みもちのよくないにんげんで)

しゃべった。辰蔵というのは小料理屋の亭主であるが、身持ちのよくない人間で

(こばくちもうつおとこである。りょうりやといっても、いえにはろうぼとこおんなたちが)

小博奕も打つ男である。料理屋といっても、家には老母と小女たちが

(いるきりなので、おすぎはどんなふうにたのみこんだかしらないが、)

いるきりなので、お杉はどんなふうに頼み込んだか知らないが、

(そのいえをあいびきのばしょにかりて、ときどきにきゅうしゅじんにあっている。)

その家を逢い曳きの場所に借りて、ときどきに旧主人に逢っている。

など

(それをきんじょではみんなしっているが、おすぎのおやたちはふしぎにしらないらしい。)

それを近所ではみんな知っているが、お杉の親たちは不思議に知らないらしい。

(しれたらきっとなにかのめんどうがおこるであろうとにょうぼうはしさいらしくはなした。)

知れたらきっとなにかの面倒が起るであろうと女房は仔細らしく話した。

(「なるほど、そいつはいきごとだね。ふどうまえまでいったら、)

「なるほど、そいつは粋事(いきごと)だね。不動前まで行ったら、

(もっといいちゃやもあるだろうに・・・・・・」と、はんしちはわらった。たかがひゃっぴょうどりで、)

もっといい茶屋もあるだろうに……」と、半七は笑った。多寡が百俵取りで、

(おまけにどうらくもののよしみとしては、かねまわりがわるいにそういない。)

おまけに道楽者の吉見としては、金廻りが悪いに相違ない。

(ここらのこりょうりやがぶんそうおうであるかもしれないとかれはおもった。)

ここらの小料理屋が分相応であるかも知れないと彼は思った。

(これでまずおすぎとよしみとのかんけいはたしかめられた。ゆうべもよしみが)

これでまずお杉と吉見との関係は確かめられた。ゆうべも吉見が

(きたらしいかときいたが、あらものやのにょうぼうもさすがにそこまではしらないと)

来たらしいかと訊いたが、荒物屋の女房もさすがにそこまでは知らないと

(いった。そこへとりさしのすがたがみえたので、はんしちはそとへでてまねくと、)

云った。そこへ鳥さしの姿が見えたので、半七は外へ出て招くと、

(ろうじんはもちざおをかかえてこばしりにいそいできた。)

老人は黐竿をかかえて小走りに急いで来た。

(「もし、これだけとってきました」)

「もし、これだけ捕って来ました」

(ろうじんはいっしょうけんめいになってあさりあるいたらしい。うんのわるいすずめが)

老人は一生懸命になって猟(あさ)り歩いたらしい。運の悪い雀が

(じゅうさんわもかごのなかにおしこまれていた。)

十三羽も籠のなかに押込まれていた。

(「たいそうとれましたね」と、はんしちはわらいながらいった。「それだけあれば)

「たいそう捕れましたね」と、半七は笑いながら云った。「それだけあれば

(たくさんです。ところで、どうでしょう。そのすずめのはねにはもちがついているが、)

たくさんです。ところで、どうでしょう。その雀の羽には黐が付いているが、

(それでもとべますか」)

それでも飛べますか」

(「とべるのもあり、とべないのもあります」と、ろうじんはいった。)

「飛べるのもあり、飛べないのもあります」と、老人は云った。

(「しかし、どうせこのもちはあらってとるのです。もちのついているままで)

「しかし、どうせこの黐は洗って取るのです。黐の付いているままで

(おたかにやるわけにはいきませんからね」)

お鷹にやるわけには行きませんからね」

(「ここでにがさないようにうまくあらえますかえ」)

「ここで逃がさないように巧く洗えますかえ」

(「そりゃあらえないことはありませんよ」)

「そりゃ洗えないことはありませんよ」

(「そうですか。だが、まあ、そのままにしてでかけましょう」)

「そうですか。だが、まあ、その儘にして出かけましょう」

(「これからどこへまいります」 「すぐそこのりょうりやへいくんです」)

「これから何処へまいります」 「すぐそこの料理屋へ行くんです」

(はんしちはろうじんになにかをささやくと、かれはおとなしくうなずいた。)

半七は老人に何かをささやくと、彼はおとなしくうなずいた。

(ぞうりのだいをはらって、はんしちはさきにたってでてゆくと、やがてかのたつぞうの)

草履の代を払って、半七は先に立って出てゆくと、やがて彼(か)の辰蔵の

(みせのまえにきた。こりょうりやといっても、やはりあらものやけんたいのようなみせで、)

店のまえに来た。小料理屋といっても、やはり荒物屋兼帯のような店で、

(かたすみにはわらじやしぶうちわなどをならべて、いっぽうのせまいどまにはに、さんきゃくの)

片隅には草鞋や渋団扇などをならべて、一方の狭い土間には二、三脚の

(しょうぎがすえてあった。そのどまをゆきぬけたつきあたりに、)

床几(しょうぎ)が据えてあった。その土間をゆきぬけた突き当たりに、

(よじょうはんぐらいのこざしきがあるらしく、すすけたしょうじがはんぶんあけてあるのが)

四畳半ぐらいの小座敷があるらしく、すすけた障子が半分明けてあるのが

(おもてからみえた。みせぐちのやなぎのきにはいっぴきのにうまがつないであった。)

表からみえた。店口の柳の木には一匹の荷馬がつないであった。

(とおもうと、みせのなかではにわかにどなるこえがきこえた。)

と思うと、店のなかでは俄かに呶鳴る声がきこえた。

(「このやろう、おうちゃくなやろうだ。みっかのやくそくがもういつかになるでねえか」)

「この野郎、横着な野郎だ。三日の約束がもう五日になるでねえか」

(はんしちはおもてからのぞいてみると、いましきりにどなっているのは、さんじゅうごろくの)

半七は表から覗いてみると、今しきりに呶鳴っているのは、三十五六の

(あからがおのおおおとこで、そのふうぞくはここらのまごとひとめで)

赭(あか)ら顔の大男で、その風ぞくはここらの馬子(まご)と一と目で

(しられた。そのあいてになってなにかいいあらそっているのは、やはりおなじとしごろの)

知られた。その相手になって何か云い争っているのは、やはりおなじ年頃の

(いろのくろい、ちゅうぜいのおとこで、おそらくていしゅのたつぞうであろうとはんしちはそうぞうした。)

色の黒い、中背の男で、おそらく亭主の辰蔵であろうと半七は想像した。

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