銀河鉄道の夜 61
九、ジョバンニの切符 33/36
(黒い丘)
(黒い丘)
ジョバンニは目をひらきました。
もとの丘の草の中に、疲れて眠っていたのでした。
胸はなんだかおかしくほてり、ほおには冷たい涙がながれていました。
もとの丘の草の中に、疲れて眠っていたのでした。
胸はなんだかおかしくほてり、ほおには冷たい涙がながれていました。
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問題文
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(じょばんにはめをひらきました。)
ジョバンニは目をひらきました。
(もとのおかのくさのなかに、つかれてねむっていたのでした。)
もとの丘の草の中に、疲れて眠っていたのでした。
(むねはなんだかおかしくほてり、)
胸はなんだかおかしくほてり、
(ほおにはつめたいなみだがながれていました。)
ほおには冷たい涙がながれていました。
(じょばんにはばねのようにはねおきました。)
ジョバンニはばねのようにはね起きました。
(まちはすっかりさっきのとおりに)
町はすっかりさっきの通りに
(したでたくさんのあかりをつづってはいましたが、)
下でたくさんの灯りを綴ってはいましたが、
(そのひかりはなんだかさっきよりはねっしたというふうでした。)
その光はなんだかさっきよりは熱したというふうでした。
(そしてたったいまゆめであるいたあまのがわも)
そしてたったいま夢で歩いた天の川も
(やっぱりさっきのとおりしろくぼんやりかかり、)
やっぱりさっきの通り白くぼんやりかかり、
(まっくろなみなみのちへいせんのうえではことにけむったようになって、)
まっ黒な南の地平線の上ではことに煙ったようになって、
(そのみぎにはさそりざのあかいほしがうつくしくきらめき、)
その右にはさそり座の赤い星がうつくしくきらめき、
(そらぜんたいのいちじゃそんなにかわってもいないようでした。)
空ぜんたいの位置じゃそんなに変わってもいないようでした。
(じょばんにはいっさんにおかをはしってくだりました。)
ジョバンニはいっさんに丘を走って下りました。
(まだゆうごはんをたべないでまっているおかあさんのことが)
まだ夕ごはんを食べないで待っているお母さんのことが
(むねいっぱいにおもいだされたのです。)
胸いっぱいに思いだされたのです。
(どんどんくろいまつのはやしのなかをとおって、)
どんどん黒い松の林の中を通って、
(それからほのしろいぼくじょうのさくをまわって)
それからほの白い牧場の柵をまわって
(さっきのいりぐちからくらいぎゅうしゃのまえへまたきました。)
さっきの入口から暗い牛舎の前へまたきました。
(そこにはだれかがいまかえったらしく、)
そこには誰かがいま帰ったらしく、
など
(さっきなかったひとつのくるまがなにかのたるをふたつのっけておいてありました。)
さっきなかった一つの車が何かの樽を二つのっけて置いてありました。
(「こんばんは」)
「今晩は」
(じょばんにはさけびました。)
ジョバンニは叫びました。
(「はい。」)
「はい。」
(しろいふといずぼんをはいたひとがすぐでてきてたちました。)
白い太いずぼんをはいた人がすぐ出てきて立ちました。
(「なんのごようですか。」)
「なんのご用ですか。」
(「きょうぎゅうにゅうがぼくのところへこなかったのですが。」)
「今日牛乳がぼくのところへこなかったのですが。」
(「あ、すみませんでした。」)
「あ、すみませんでした。」
(そのひとはすぐおくへいっていっぽんのぎゅうにゅうびんをもってきて)
その人はすぐ奥へ行って一本の牛乳びんをもってきて
(じょばんににわたしながらまたいいました。)
ジョバンニに渡しながらまたいいました。
(「ほんとうに、すみませんでした。)
「ほんとうに、すみませんでした。
(きょうはひるすぎうっかりしてこうしのさくをあけておいたもんですから、)
今日は昼すぎうっかりして仔牛の柵をあけておいたもんですから、
(たいしょうさっそくおやうしのところへいってはんぶんばかりのんでしまいましてね・・・。」)
大将さっそく親牛のところへ行って半分ばかりのんでしまいましてね・・・。」
(そのひとはわらいました。)
その人は笑いました。
(「そうですか。では、いただいていきます。」)
「そうですか。では、いただいて行きます。」
(「ええ、どうもすみませんでした。」)
「ええ、どうもすみませんでした。」
(「いいえ。」)
「いいえ。」
(じょばんにはまだあついちちのびんを)
ジョバンニはまだ熱い乳のびんを
(りょうほうのてのひらでつつむようにもってぼくじょうのさくをでました。)
両方のてのひらで包むようにもって牧場の柵を出ました。