ピノッキオの冒険　8

(きぎれをさがしてきて、わきめもふらずにしごとにとりかかりました。)

木切れを探してきて、わき目もふらずに仕事に取り掛かりました。

(それからしばらくのあいだ、きこえるものといったら、)

それからしばらくの間、聞こえるものと言ったら、

(きをけずったり、みがいたりするおとだけ。)

木を削ったり、磨いたりする音だけ。

(いちじかんほどたったとき、ようやくじぇぺっとじいさんがかおをあげました。)

一時間ほどたった時、ようやくジェペット爺さんが顔を上げました。

(「さあ、できたぞ。)

「さあ、できたぞ。

(ぴのっきお、ちょっとこのてーぶるのうえによこになってごらん」)

ピノッキオ、ちょっとこのテーブルの上に横になってごらん」

(じぇぺっとじいさんは、ぴのっきおをてーぶるにねかせると)

ジェペット爺さんは、ピノッキオをテーブルに寝かせると

(あしのやけこげたところを、きれいにきりとりました。)

足の焼け焦げたところを、きれいに切り取りました。

(そのあとへ、できあがったばかりのあたらしいあしを、のりでしっかりとくっつけます)

そのあとへ、出来上がったばかりの新しい足を、のりでしっかりとくっつけます

(「おじいさん、もうおきてもいい？」)

「お爺さん、もう起きてもいい？」

(「まてまて、ちょっとようすをしらべてみるから」)

「待て待て、ちょっと様子を調べてみるから」

(じぇぺっとじいさんは、のりのかわきぐあいをたしかめて、まんぞくそうにうなずきました。)

ジェペット爺さんは、のりの乾き具合を確かめて、満足そうにうなずきました。

(「ようし、うまくいった。)

「ようし、うまくいった。

(これでまた、おもうぞんぶんかけまわることができるぞ」)

これでまた、思う存分駆け回ることができるぞ」

(「わーい、あしができた、あしができた」)

「わーい、足ができた、足ができた」

(ぴのっきおは、おおよろこびでてーぶるからとびおりると)

ピノッキオは、大喜びでテーブルから飛び降りると

(とんだりはねたりしながら、へやのなかをかけまわりました。)

飛んだり跳ねたりしながら、部屋の中を駆け回りました。

(「うれしいなあ。あした、がっこうへいってもいいでしょう？」)

「うれしいなあ。明日、学校へ行ってもいいでしょう？」

(「いいとも、いいとも。でも、がっこうへいくとなったら)

「いいとも、いいとも。でも、学校へ行くとなったら

(すこしはきちんとしたかっこうをしなけりゃあなあ」)

少しはきちんとした格好をしなけりゃあなあ」

(じぇぺっとじいさんは、またいそがしくてをうごかして、)

ジェペット爺さんは、また忙しく手を動かして、

(はなのもようのついたかみをつかって、うわぎとずぼんを、)

花の模様のついた紙を使って、上着とズボンを、

(きのかわをぬいあわせてちいさなくつを、)

木の皮を縫い合わせて小さな靴を、

(そして、きんじょのいえからもらってきたぱんくずをかためて、)

そして、近所の家からもらってきたパンくずを固めて、

(しゃれたぼうしをつくってくれました。)

しゃれた帽子を作ってくれました。

(「うわあ、すてき」)

「うわあ、素敵」

(みずにじぶんのすがたをうつしてみたぴのっきおは、うっとりとためいきをつきました。)

水に自分の姿を映してみたピノッキオは、うっとりとため息をつきました。

(「あっ、そうだ。がっこうへいくならきょうかしょがいりますよ」)

「あっ、そうだ。学校へ行くなら教科書がいりますよ」

(「うーむ、これはこまったぞ。きょうかしょをかうおかねはないし)

「うーむ、これは困ったぞ。教科書を買うお金はないし

(そうかといって、きょうかしょをつくるわけにもいかんしなあ」)

そうかといって、教科書を作るわけにもいかんしなあ」

(じぇぺっとじいさんは、ちょっとかんがえていましたが、)

ジェペット爺さんは、ちょっと考えていましたが、

(なにをおもったのか、だまってどこかへでかけていきました。)

なにを思ったのか、だまってどこかへ出かけて行きました。

(やがて、ちらちらとまいはじめたゆきのなかを、)

やがて、ちらちらと舞い始めた雪の中を、

(きょうかしょをかかえてもどってくる、おじいさんのすがたがみえました。)

教科書を抱えて戻ってくる、お爺さんの姿が見えました。

(「みてごらん、ぴのっきお。きょうかしょがてにはいったぞ」)

「見てごらん、ピノッキオ。教科書が手に入ったぞ」

(「わあ、うれしい。ありがとう、おじいさん」)

「わあ、うれしい。ありがとう、お爺さん」

(そのとき、ぴのっきおはへんなことにきがつきました。)

その時、ピノッキオは変なことに気がつきました。

(じぇぺっとじいさんは、でかけるとき、たしかにうわぎをきていったはずなのに)

ジェペット爺さんは、出かけるとき、確かに上着を着て行ったはずなのに

(いまみると、そのうわぎがないのです。)

今見ると、その上着がないのです。

(「おじいさん、うわぎはどうしたの？」)

「お爺さん、上着はどうしたの？」

(「うん？うわぎかい？」)

「うん？上着かい？」

(じぇぺっとじいさんは、とぼけたかおになりました。)

ジェペット爺さんは、とぼけた顔になりました。

(「さあてと、うわぎだったら、ねこのやつがさらっていったんじゃないのかな。)

「さあてと、上着だったら、猫のやつがさらっていったんじゃないのかな。

(だが、どうせなんねんもきふるしたぼろうわぎだ。)

だが、どうせ何年も着古したぼろ上着だ。

(さらわれたって、べつにおしくはないさ」)

さらわれたって、別に惜しくはないさ」

(「あっ、そうか。おじいさん、うわぎをうってきたんだね」)

「あっ、そうか。お爺さん、上着を売ってきたんだね」

(ぴのっきおにも、やっとわけがわかりました。)

ピノッキオにも、やっと訳が分かりました。

(そとではゆきさえふりはじめて、こごえるようなさむさです。)

外では雪さえ降り始めて、凍えるような寒さです。

(それなのに、じぇぺっとじいさんは、ほんをかうおかねをつくるために)

それなのに、ジェペット爺さんは、本を買うお金を作るために

(ひとつしかないうわぎをうってしまったのです。)

ひとつしかない上着を売ってしまったのです。

(「おじいさん、おじいさん」)

「お爺さん、お爺さん」

(ぴのっきおは、わーっとなきだすと、じぇぺっとじいさんのむねにすがりつきました)

ピノッキオは、わーっと泣き出すと、ジェペット爺さんの胸にすがりつきました

(「おじいさん、ごめんなさい。)

「お爺さん、ごめんなさい。

(ぼく、きっといいこになってみせます。かならず、なってみせますからね」)

僕、きっといい子になってみせます。必ず、なってみせますからね」