魯迅 阿Q正伝その19
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問題文
(あきゅうはしけんにらくだいしたぶんどうのようないわれなきくつじょくをかんじて、)
阿Qは試験に落第した文童のような謂れなき屈辱を感じて、
(ぶらぶらえんもんのそばまでくると、たちまちひじょうなよろこびとなった。)
ぶらぶら園門のそばまで来ると、たちまち非常な喜びとなった。
(これはあきらかにだいこんばたけだ。)
これは明らかに大根畑だ。
(かれがしゃがんでぬきとったのは、1つごくまるいものであったが、)
彼がしゃがんで抜き取ったのは、1つごく丸いものであったが、
(すぐにみをかがめてかえってきた。)
すぐに身をかがめて帰って来た。
(これはたしかにあまっちょのものだ。)
これは確かに尼ッちょのものだ。
(あまっちょなんてものはあきゅうとしてはわかくさのくずのようにおもっているが、)
尼ッちょなんてものは阿Qとしては若草の屑のように思っているが、
(よのなかのことは「いっぽしりぞいてかんがえ」なければならん。)
世の中の事は「一歩退いて考え」なければならん。
(だからかれはそそくさによっつのだいこんをひきぬいてはをむしりすて)
だから彼はそそくさに四つの大根を引抜いて葉をむしり捨て
(きもののしたまえのなかにしまいこんだが、)
着物の下まえの中に仕舞い込んだが、
(そのときもう、ばばのあまはみつけていた。)
その時もう、婆の尼は見つけていた。
(「おみどふ、おまえはなんだってここへはいってきたの、)
「阿弥陀仏、お前はなんだってここへ入って来たの、
(だいこんをぬすんだね、まああきれた。つみつくりのおとこだね。おみどふ」)
大根を盗んだね、まあ呆れた。罪作りの男だね。阿弥陀仏」
(「おれはいつおまえのだいこんをぬすんだえ」あきゅうはあるきながらいった。)
「俺はいつお前の大根を盗んだえ」阿Qは歩きながら言った。
(「それ、それ、それでぬすまないというのかえ」とあまはあきゅうのふところをさした。)
「それ、それ、それで盗まないというのかえ」と尼は阿Qのフトコロをさした。
(「これはおまえのものかえ。だいこんにへんじをさせることができるかえ。おまえ」)
「これはお前の物かえ。大根に返辞をさせることが出来るかえ。お前」
(あきゅうはいいもおわらぬうちにあしをもちあげてかけだした。)
阿Qは言いも終わらぬうちに足を持ち上げて馳け出した。
(おっかけてきたのは、1つのすこぶるひだいのくろいぬで、)
追っ馳けて来たのは、1つのすこぶる肥大の黒犬で、
(これはいつもおもてもんのばんをしているのだが、)
これはいつも表門の番をしているのだが、
(なぜかしらんきょうはうらもんにきていた。)
なぜかしらんきょうは裏門に来ていた。
(くろいぬはわんわんおいついてきて、あわやあきゅうのももにかみつきそうになったが、)
黒犬はわんわん追いついて来て、あわや阿Qの腿に噛みつきそうになったが、
(さきわいきもののなかから1つのだいこんがころげおちたので、いぬはおどろいてとびさった。)
幸い着物の中から1つの大根がころげ落ちたので、犬は驚いて飛びさった。
(あきゅうははやくもくわのきにかじりつきどべいをまたいだ。)
阿Qは早くも桑の樹にかじりつき土塀を跨いだ。
(じんもだいこんもみな、かきのそとへころげだした。)
人も大根も皆、垣の外へころげ出した。
(いぬはとりのこしされてくわのきにむかってほえた。)
犬は取残されて桑の樹に向って吠えた。
(あまはねんぶつをどきょうした。)
尼は念仏を読経した。
(あまがいぬをけしかけやせぬかとおもったから、)
尼が犬をけしかけやせぬかと思ったから、
(あきゅうはだいこんをひろうついでにこいしをかきあつめたが、)
阿Qは大根を拾うついでに小石を掻き集めたが、
(いぬはおいかけてもこなかった。)
犬は追いかけても来なかった。
(そこでかれはいしをなげすて、あるきながらだいこんをかじって、)
そこで彼は石を投げ捨て、歩きながら大根をかじって、
(このむらもいよいよだめだ、じょうないにいくほうがいいとおもった。)
この村もいよいよ駄目だ、城内に行く方がいいと思った。
(だいこんをさんぼんくってしまうとかれはすでにじょうないゆきをけっこうした。)
大根を三本食ってしまうと彼はすでに城内行きを決行した。