魯迅 阿Q正伝その24
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問題文
(いっそむらやくにんにいいつけてこのむらにおかないことにしてやろうといったが、)
いっそ村役人に言いつけてこの村に置かないことにしてやろうと言ったが、
(ちょうだんなは、そりゃよくないことだとおもった。)
趙太爺は、そりゃよくないことだと思った。
(そうすればうらみをうけることになる。)
そうすれば怨みを受けることになる。
(ましてああいうことをするやつはたいがい)
ましてああいうことをする奴は大概
(「おいたるたかは、すのしたのものをくわない」)
「老いたる鷹は、巣の下の物を食わない」
(のだから、このむらではさほどしんぱいするにはおよぶまい。)
のだから、この村ではさほど心配するには及ぶまい。
(ただじぶんのうちだけよるのとじまりをしょうしょうげんじゅうにしておけばいい。)
ただ自分のうちだけ夜の戸締を少々厳重にしておけばいい。
(しゅうさいもこの「ていきん」にはひじょうにかんしんして)
秀才もこの「庭訓」には非常に感心して
(すぐにあきゅうついほうのていぎをてっかいし、またすうしちそうにもいいふくめて、)
すぐに阿Q追放の提議を撤回し、また鄒七嫂にも言い含めて、
(けっしてこのようなことをひとにもらしてくれるな、といった。)
決してこのようなことを人に洩らしてくれるな、と言った。
(けれどすうしちそうはつぎのひ、)
けれど鄒七嫂は次の日、
(あのあいばかまをくろいろにそめかえて、あきゅうのうたがうべきふしをいいふらしてあるいた。)
あの藍袴を黒色に染め替えて、阿Qの疑うべき節を言いふらして歩いた。
(たしかにかのじょはしゅうさいのあきゅうくちくのいっせつこそもちださなかったが、)
確かに彼女は秀才の阿Q駆逐の一節こそ持ち出さなかったが、
(これだけでもあきゅうにとってはひじょうにふりえきであった。)
これだけでも阿Qに取っては非常に不利益であった。
(まっさきにむらやくにんがたずねてきて、かれのまくをうばった。)
まっさきに村役人が尋ねて来て、彼の幕を奪った。
(あきゅうはちょうたいたいにみせるやくそくをしたといったが、)
阿Qは趙太太に見せる約束をしたと言ったが、
(むらやくにんはそれをかえしもせずになおまいつきなにほどかのつとどけをしろといった。)
村役人はそれを返しもせずになお毎月何ほどかの附届けをしろと言った。
(それからむらのひともかれにたいしてたちまちかおつきをあらためた。)
それから村の人も彼に対してたちまち顔つきを改めた。
(そりゃくなことはするわけもないが)
疎略なことはするわけもないが
(かえってはなはだとおざかるきぶんがあった。)
かえってはなはだ遠ざかる気分があった。
(このきぶんはまえにかれがさかやのなかで)
この気分は前に彼が酒屋の中で
(「ぴしゃり」)
「ぴしゃり」
(といったときのけいかいとはべっしゅのものであった。)
と言った時の警戒とは別種のものであった。
(「けいしてとおざかる」ようなぶんしがずいぶんおおくまじっていた。)
「敬して遠ざかる」ような分子がずいぶん多くまじっていた。
(ひまじんのなかにはあきゅうのおくそこをねほりはほりたんきゅうするものがあった。)
閑人の中には阿Qの奥底を根掘り葉掘り探究する者があった。
(あきゅうはつつまずかくさずよりほこらしくかれのけいけんだんをはなした。)
阿Qは包まず隠さず自誇らしく彼の経験談をはなした。
(あきゅうはちいさなうまのあしにすぎなかった。)
阿Qは小さな馬の脚に過ぎなかった。
(かれはかきのうえにあがることもできなければ、)
彼は垣の上にあがることも出来なければ、
(あなのなかにもぐることもできなかった。)
穴の中に潜ることも出来なかった。
(ただそとにたってしなものをうけとった。)
ただ外に立って品物を受取った。
(あるばんかれはひとつのつつみをうけとってあいぼうがもういちどはいると、)
ある晩彼は一つの包みを受取って相棒がもう一度入ると、
(まもなくなかでおおさわぎがはじまった。)
まもなく中で大騒ぎが始まった。
(かれはおぞけをふるってにげだし、)
彼はおぞけをふるって逃げ出し、
(よどおしあるいてついにしろかべをのりこえみしょうにかえってきた。)
夜どおし歩いて終に城壁を乗り越え未荘に帰って来た。
(かれはこんなことはにどとするものでないとちかった。)
彼はこんなことは二度とするものでないと誓った。
(このべんめいはあきゅうにとってはいっそうふりえきであった。)
この弁明は阿Qに取ってはいっそう不利益であった。
(むらのひとで、あきゅうにたいして「けいしてとおざかる」ものはしかえしがこわいからだ、)
村の人で、阿Qに対して「敬して遠ざかる」者は仕返しがこわいからだ、
(ところがかれはこれからにどとどろぼうをしないどろぼうにすぎないのだ。)
ところが彼はこれから二度と泥棒をしない泥棒に過ぎないのだ。
(してみると「これもまたおそるるにたらない」ものだった。)
してみると「これもまた畏るるに足らない」ものだった。