森鴎外 大塩平八郎その3

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(きたぐみがにひゃくごじっちょう、みなみぐみがにひゃくろくじゅういっちょう、)

北組が二百五十町、南組が二百六十一町、

(てんまぐみがひゃくきゅうちょうある。)

天満組が百九町ある。

(よていどおりにいくと、きょうはてんまぐみをじゅんけんして、)

予定通りに行くと、きょうは天満組を巡見して、

(さいごにとうしょうぐうふきんのよりきまちにでて、)

最後に東照宮附近の与力町に出て、

(ゆうがたななつどきにはてんまばしすじ・ながらまちをひがしにはいるきたがわの、)

夕方七つ時には天満橋筋・長柄町を東にはいる北側の、

(むかえかたであるひがしぐみよりき・あさおかすけのじょうのやしきできゅうそくするのであった。)

迎え方である東組与力・朝岡助之丞の屋敷で休息するのであった。

(むかえがたとはしんにんのぶぎょうをむかえにえどにいって、)

迎え方とは新任の奉行を迎えに江戸に行って、

(まちよりき・どうしんのそうだいとしてしゅくしをのべ、)

町与力・同心の総代として祝詞を述べ、

(ひきつづいてしんにんのぶぎょうのざいきんちゅう、)

引き続いて新任の奉行の在勤中、

(ぶぎょうのみのまわりのようじをつとめるよりきひとり、どうしんふたりで、)

奉行の身の回りの用事をつとめる与力一人、同心二人で、

(あさおかはそのよりきである。)

朝岡はその与力である。

(しかるにきのうのごようびのあさ、つきばん・あとべのひがしまちぶぎょうしょへたちあいにいくと、)

しかるにきのうの御用日の朝、月番・跡部の東町奉行所へ立会いに往くと、

(そのぜんじつじゅうしちにちのよる、)

その前日十七日の夜、

(ひがしぐみどうしん・ひらやますけじろうというもののみっそのことをしらされた。)

東組同心・平山助次郎と云うものの密訴の事を知らされた。

(いちだいじということがほりのみみをうったのはこのときがはじめてであった。)

一大事と云うことが堀の耳を打ったのはこの時が始めてであった。

(それからはどんなことがおこってくるかと、ぜんやもほとんどねずにしんぱいしている。)

それからはどんな事が起って来るかと、前夜も殆ど寝ずに心配している。

(いま、なかいずみがいちだいじのそじょうをもってふたりのしょうねんがきたというのをきくと、)

今、中泉が一大事の訴状を持って二人の少年が来たと云うのを聞くと、

(ほりはすぐにあのことだなとおもった。)

堀はすぐにあの事だなと思った。

(ほりにとっては、なかいずみがえいたろうのてからうけとってだしたかきつけのないようは、)

堀にとっては、中泉が英太郎の手から受け取って出した書付の内容は、

(みちのことのはっけんではなくて、きちのことのじっしょうとしてよきしているのである。)

未知の事の発見ではなくて、既知の事の実証として予期しているのである。

など

(ほりはそじょうをひけんした。むねをとどらせながらさいしょからよんでいくと、)

堀は訴状を披見した。胸をとどらせながら最初から読んで行くと、

(はたしてきのうあとべにきいた、あのことである。)

果たしてきのう跡部に聞いた、あの事である。

(いんぼうのしゅりょう、そのよとうなどのことは、まえにきいたところとかくべつのそういはない。)

陰謀の首領、その与党などの事は、前に聞いた所と格別の相違は無い。

(ちょうぶんのそじょうのすえ、さんぶんのにほどはひっしゃくろうえもんのみがこいである。)

長文の訴状の末、三分の二ほどは筆者九郎右衛門の身囲である。

(ほりがいますこしくくわしくしりたいとおもうようなことはかいてなくて、)

堀が今少しく詳しく知りたいと思うような事は書いてなくて、

(よんでもよんでも、いんぼうにたいするくろうえもんのたちば、ぎく、しゅうそである。)

読んでも読んでも、陰謀に対する九郎右衛門の立場、疑懼、愁訴である。

(きのうからきにかかっているいわゆるいちだいじがこれからどうはってんしていくだろうか、)

きのうから気に掛かっている所謂一大事がこれからどう発展して行くだろうか、

(それがほりじしんにどうえいきょうするだろうかと、うわのそらでかんがえながらよむので、)

それが堀自身にどう影響するだろうかと、うわの空で考えながら読むので、

(ややもすればにぎょうもさんぎょうもよんでから、)

ややもすれば二行も三行も読んでから、

(かいてあるいみがすこしもわかっておらぬのにきがつく。)

書いてある意味が少しも分かっておらぬのに気が附く。

(はっとおもってはまたよみかえす。ようやくよんでしまって、)

はっと思っては又読み返す。ようやく読んでしまって、

(ほりのこころのうちには、きのうからしっていることのほかに、これだけのことがのこった。)

堀の心の内には、きのうから知っている事の外に、これだけの事が残った。

(いんぼうのよとうのなかで、ひっしゃとひがしぐみよりき・わたなべりょうざえもん、)

陰謀の与党の中で、筆者と東組与力・渡辺良左衛門、

(ひがしぐみどうしん・かわいごうざえもんとのさんにんはしゅりょうをいさめていんぼうをやめさせようとした。)

東組同心・河合郷左衛門との三人は首領を諫めて陰謀を止めさせようとした。

(しかししゅりょうがきかぬ。そこでかわいはちくでんした。)

しかし首領が聴かぬ。そこで河合は逐電した。

(ひっしゃはしょうがつみっかごに、かぜをひいてじびょうがおこってねているので、)

筆者は正月三日後に、風邪を引いて持病が起って寝ているので、

(わたなべをもってしゅりょうにことわらせた。)

渡辺をもって首領にことわらせた。

(このありさまではことのけっこうびになってもしょせんはたらくことはできぬから、)

このありさまでは事の決行日になっても所詮働く事は出来ぬから、

(せっぷくしてわびようといったのである。)

切腹して詫びようと云ったのである。

(わたなべはしゅりょうのへんじをつたえた。そんならゆっくりほようしろ。)

渡辺は首領の返事を伝えた。そんならゆっくり保養しろ。

(ばあいによってはにげろということである。これをつたえるとどうじに、)

場合によっては逃げろと云うことである。これを伝えると同時に、

(わたなべはじぶんがぜひもなくしゅりょうとしんたいをともにするとけっしんしたことをはなした。)

渡辺は自分が是非もなく首領と進退を共にすると決心したことを話した。

(ついでしゅりょうはせがれとわたなべとをみまいによこした。)

次いで首領は倅と渡辺とを見舞によこした。

(ひっしゃはやまいのなかようやくのことでそじょうをかいた。)

筆者は病のなかようやくの事で訴状を書いた。

(それをきんむさきであるひがしまちぶぎょうしょにだそうには、とりつぎをたのむべきひとがない。)

それを勤務先である東町奉行所に出そうには、取次を頼むべき人が無い。

(そこでかくしょをみはからってたくそをする。)

そこで隔所を見計らって托訴をする。

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